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787.何者かの陰謀

「違う違う違う、俺じゃねえよ!!」


 今までの裏切りの経験もあってか、特にレウスからは厳しい視線を向けられているギルベルトは必死になってその容疑を否認する。


「そもそもよぉ、俺が自分の主君であるドゥドゥカス陛下をこんな罠みてえな事にはめるなんてのはしねえって!! 大体、俺がドゥドゥカス陛下を殺すのであればそれこそ幾らでもチャンスがあるだろ。なのに何でこんなに回りくどい方法を取らなきゃならねえんだよ!?」

『アリバイ工作……とか?』

「ははっ、それもある……いや、無い無い無い!! アリバイ工作の為にこんな事をしているんだったら、俺が王都から来るのもおかしいだろ。それにこっち方面に来る用事なんて俺には無いですし」

「ま、確かにそうだな。疑って悪かったな」


 それよりも、まずはドゥドゥカスのここまで来た経緯を最後まで聞いてからの方がもっと良く犯人を絞り込めるんじゃないかと思い、レウスはドゥドゥカスに先を促した。


「その後はどうなったんだ?」

「それでここまで来た後に漁村に泊まったんだが、そこで『雨が降ったからすぐには行けない。明日までこの漁村で待て。誰にも知らせるな』と言われて待っていた。そしてその翌日……つまり今日の朝にまた連絡が来て、夜に海の近くで落ち合おうって連絡があった」

「でも、酷い雨だったからここでずっと待っていた?」

「そうなんだ。で、その日……今日だな。今日も僕は雨が止むのを待っていたんだが、止むどころかその激しさは増すばかりでね。その時に相手からまた連絡が入ったよ。『この雨ではかなり難しいが、とにかく会うだけ会おうじゃないか』ってね」

「だからこうして夜の雨の中をワイバーンで?」

「そうだよ。相手からの連絡があった以上。それで仕方無く夜の闇の中へ飛び出して海の近くまで来たら、やたら黒いドラゴンに横から体当たりされたんだ」

「ど……ドラゴンですか?」


 それで海の中へと落ちたらしいのだが、何故ドラゴンだと分かったのだろうか?

 それをレウスが聞いてみると、ドゥドゥカスはその時の事を思い返して口に出す。


「ドラゴンの鳴き声が聞こえた。それからバサバサと羽ばたく翼の音もな。そしてその音と鳴き声の方を振り向いてみたら、黒いドラゴンが猛スピードで僕のワイバーンに突っ込んで来て、ワイバーンから投げ出されて海に落っこちたんだ」

「それって交渉云々じゃなくて、最初から事故に見せ掛けて陛下を殺すつもりだったんじゃないですかね、やっぱり」

『俺様もそう思う』


 この雨と雷による闇の中で、ワイバーンで急いで何処かに向かっている時に起こった不運な墜落事故。

 それが相手の目論見だったのだろうが、結果的にレウスとエンヴィルークによってこの暗殺(?)計画は失敗に終わってしまったのだろう。

 でも、それだったらレウスとエンヴィルークもそのドラゴンの姿を何処かで目撃しているかも知れない。

 だけど何も見ていないので、この証言には妙な点がある。

 現場へ急行した二人はそれを指摘したのだが、またもやドゥドゥカスから気になる証言が出て来た。


「そ、そのドラゴンなんだけど……どうやら瞬間移動が可能らしいんだ」

「はい? 瞬間移動……ですか?」


 ルリスウェン公国で戦ったドラゴンは、自分の分身を生み出して相手を困惑させる戦法だった。

 しかし今度は瞬間移動? 言っている意味が良く分からないので、ギルベルトは自分の主君にもっと詳しく説明を求める。


「そうなんだ。投げ出されてあっと思った時にはもうドラゴンの姿は空には無かった。僕にぶつかったと同時にスッと煙の様に消えてしまったんだよ!!」

『それって単純に、あんたが体当たりされたドラゴンが黒い身体をしていたから、このドス黒い空の闇に紛れ込んで見えなくなっちまっただけじゃねえの?』


 しかし、ドゥドゥカスは首を横に振って否定する。


「いいや、僕はハッキリと見たんだよ。だって最初に体当たりされた時には、僕は何とかワイバーンをコントロールして落ちない様に踏みとどまったんだから」

「えっ? それじゃあ何回かぶつけられたって事か?」

「そう。でも回数で言えばそれを含めて二回だよ。その二回目の時に瞬間移動を見た。ドラゴンを振り切る為にそのドラゴンに背中を向けて一目散にワイバーンを加速させたつもりが、後ろに居た筈のドラゴンがパッと目の前に現われたんだからな!」

『それは普通のドラゴンでは無いな。俺様でもそんな瞬間移動は無理だ』

「だとすると、やっぱりカシュラーゼの生み出した生物兵器って話になるよな……」


 しかし、何故ドゥドゥカスをわざわざここまでおびき寄せる必要があったのか?


「多分、事故に見せ掛けて殺すつもりだったとか?」

『ええー? それって無茶じゃねえか?』

「だったらどうして、この国王を北に向かわせてまで海に突き落とそうとしたんだよ? そっちの方が不自然だろ」

『まぁ……確かにそうだけどよぉ』


 うーんと腕を組んで悩むレウスとエンヴィルーク。

 しかし、そこでギルベルトが思いもよらない事を言い出した。


「でも、誰がやったのかってのは予想がつくぜ」

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