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786.海に居た理由

「あ、あれは……!?」


 乗っていたワイバーンから投げ出されてしまった海の中。

 このまま荒波に呑まれて死んでしまうのだけは本当にゴメンだと、意識を保ちながら何とかして陸地へと辿り着くべく、およそ十五分前から頑張っていたドゥドゥカス。

 しかし人間の自分が自然の力に敵う筈も無く、海面に浮かぶのが精一杯でこのまま力尽きてしまうと思っていた矢先、激しい雨音の中から聞こえて来た異音にふと気が付いた。


(この音……まさか、ドラゴン!?)


 ワイバーンとはまた違う翼の羽ばたき方。

 それから空にポツリと現われて、次第に大きくなって来る黒い……いや、赤茶色の様なドラゴンがまっすぐ自分の方へと向かって来るではないか。

 それを見たドゥドゥカスは、この荒れた海の状況を考えた上で一層の絶望感に襲われた。


(こんな嵐の中をドラゴンが……しかも僕の方に向かって飛んで来ているなんて、もう駄目だ……)


 そもそも、こんな天気なのにあんなに元気にドラゴンが飛んでいるのもかなり珍しいと思いながらも、一直線にこっちに向かって来るのはきっと自分を餌にする為だろう。

 覚悟を決めたドゥドゥカスは、ドラゴンに食われて死ぬ位なら溺死して穏やかになった方が良いと選んで、身体の力を抜き掛けたその時に聞き覚えのある声が聞こえて来た。

 最初は幻聴でも聴こえて来たのかと思ったのだが、どうやらそれは幻聴では無くてドラゴンの背中に乗っている人物から発せられる、自分を呼ぶ声だと分かったのだ。

 そして翼を動かして降下して来たドラゴンの背中に乗っているのが、だいぶ前にリーフォセリアを離れて世界中を旅しているとギルベルトから連絡を貰っていた、レウス・アーヴィンだったと気が付いた。


(な、何故あのアークトゥルスの生まれ変わりがこんな所に……それにこのドラゴンは一体何なんだ!?)


 何がどうなっているのかさっぱり分からないドゥドゥカスに近づき、手を伸ばして乗る様に仕向けるレウス。


「陛下っ、さぁ早く!!」

「お、おう……助かったよ!!」


 荒れ狂う海から引っ張り上げられたドゥドゥカスは、この落雷の多い雲の下から一気に脱出するべく魔術防壁を張り直したレウスとともに、エンヴィルークの背中に乗って九死に一生を得たのである。

 一方で、この魔術防壁でも落雷の衝撃から身を守れるかどうかが分からなかったレウスは、とにかくこの雲の下から脱出するのが一番だと考えてエンヴィルークに指示を出す。


「良しっ、脱出だエンヴィルーク!!」

『分かったぜ!!』


 こうしてドゥドゥカスを助け出す事に成功したレウスとエンヴィルークは、通話用の魔晶石でギルベルトに連絡を入れておく。


『そ……そうか、見つかったかぁ!』

「ああ。海を漂っていたのを見つけて保護した。これからそっちに帰ります」

『分かったぜ。それじゃあ漁村の宿屋に集合で良いな?』

「それで良いよ。それじゃよろしくな」


 そう言って通話を終了するレウスだが、この国王陛下が何故こんな場所に居たのかはしっかりと聞かなければならない。

 今はかなり疲弊している様なので回復魔術を掛けているのだが、それもあくまで応急処置。

 宿屋に戻ったらしっかりと治療をした上で、ドゥドゥカスから話を聞き出そうと決めたレウスだったが、いざその話を聞いてみると彼から良く分からない返答があったのだ。


「全く、俺達に黙って出て行った挙句に海を漂流していたなんて……心臓が止まるかと思いましたよ!?」

「本当だよ陛下。このおっさんの助けが無かったら、貴方は今頃海の底に沈んでいたかサメに食べられていたかだったんだぞ!!」


 二人の知り合いから揃って怒られるドゥドゥカスだが、彼はここに来た理由をポツリポツリと話し始めた。


「黙って出て行ったのは謝る。それなんだが……僕に弁明をさせてくれないか」

「弁明って?」

「出て行ったのは自分の意思じゃないとでも言いたいのか?」

「いや、それは確かに僕の意思だ。だけどその前に、何だか何処かで聞き覚えのある女の声で僕に直接通話をして来た人物が居たんだよ!」

「女の声……?」


 何だそりゃとレウスとギルベルトは顔を見合わせるが、そこに口を挟んで来たのがペーテルの姿になっているエンヴィルークだった。


『もしかして、その通話で呼び出されてあの海に?』

「そうなんだ。もし一人で来なかったら、リーフォセリア王国を壊滅させるって言われてさ。最初はイタズラだと思ったから切ろうと思ったんだけど、良く考えてみるとおかしな点があってさ」

『どんな?』

「例えばその……ギルベルトの名前をミドルネームを含めたフルネームで知っていたり、シルヴェン王国やルルトゼルの村を壊滅させた砲撃を王都カルヴィスに撃ち込むって言って来たりしたんだ。だけど僕が一番引っ掛かったのは、どうして臣下にしか教えていない筈の僕の通話用の魔石に、通話をして来る事が出来たのかって話だよ」

「あ……!!」


 確かにそれは妙である。

 もしかするとこの男が……? と、三人の視線が一斉にギルベルトに向けられた。

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