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75.考察

「あそこには……私が見せて貰った限りでは、この屋敷の主人が特に大切に保管していたドラゴン関係の文献や、それから手掛かりになりそうなメモとかが保管されていたぞ」

「そ、それじゃあ……」

「ますますまずい事になったな。私達もランダリルに行かないと、あの二人が主人を狙って何かしようとしているのを止められないぞ!」


 主人のお気に入りと言う事で、地下室の中を見せて貰った事のあるソランジュから話を聞いたレウス達は、この屋敷の主人の身に危機が迫っていると確信した。

 なのでランダリルに向かおうと思ったのだが、それよりも先に使用人達に聞いておきたい事があった。


「でもさ、通話魔術って奴で主人と連絡は取れなかったのか?」

「そんなのとっくにやってるわよ。屋敷がこんな惨状になったすぐ後にね。だけど出張先に連絡を入れてみても全然連絡が取れないのよ……だから不安なの」


 弓使いの女の回答に、質問をしたレウスを始めアレットとエルザも更に焦りの色を浮かべる。

 長期出張の時を狙ったとしか思えない抜群のタイミングで屋敷に侵入し、使用人達を全員倒して屋敷の中をメチャクチャに荒らし回った。

 それだけでは無く地下室を爆破し、何をどうしたかったのかを分からなくさせる作戦まで企てていたとなれば、かなり用意周到に準備を進めていたのだろう。

 敵は少人数だが、決して侮ってはいけない存在だと改めて認識した所で、レウス達はこのベルフォルテの港町からずっと北に向かった場所にあるソルイールの帝都ランダリルに向かう事を決定した。


 しかし、ここで後もう一つ疑問が生まれる。


「なあ、そう言えば赤毛の連中はもう一人居なかったか?」

「もう一人?」

「ああ。赤って言うかピンクの髪の毛を持っている若い男だ。ロングソード使いの男なんだが、この屋敷に侵入して来なかったか?」

「いいえ……私達が見たのは赤毛の男女二人だけでしたよ」

「そうそう。それ以外には居なかったよ」


 顔を見合わせた使用人達の中の、ロングソード使いの女と弓使いの女の証言を聞いてレウス達はひとまず納得しておく。

 もしかしたらここにセバクターも一緒に来ていたのかも知れないが、どうやらその推理は外れたらしい。


 とりあえずもうここには用事は無いので、ランダリルへと向かう前に腹ごしらえをしてから馬を借りて北を目指す事にするレウス一行。

 五百年前に一緒に行動していた魔術師だったら、こんな時に一瞬で目的地を思い浮かべて魔法陣を描くだけで、その場所まで一瞬で転移が可能な魔術が使えたのだが……あいにくレウスにはそんなハイレベルな魔術は使えないのだ。


 その腹ごしらえの場所に選んだのは、不可抗力とは言え店を荒らしてしまったせめてもの詫びにまた訪れる事に決めたカフェ「サンマリア」。

 アレットはそこのオススメである魚料理のコース、エルザは最近肉を控えていると言うのでサラダの大盛りとパンのセット、レウスはアークトゥルス時代からの好物であるビーフステーキとチキンのセットメニューでそれぞれ腹ごしらえをしながら、屋敷で得た情報を纏め始める。


「やっぱりあのヴェラルとヨハンナってのは、ドラゴンの身体の欠片を狙ってここに来たみたいだな」

「ああ。だけどセバクターがここに居ないってのが俺は引っ掛かる。あの三人は一緒に行動しているんじゃなかったのか?」

「もしかしたら先にランダリルに向かったのかも知れないわね。通話魔術で連絡が取れないってなると、最悪の事態も覚悟しておいた方が良いかも……」

「おい、そんな不吉な事を言うなよアレット」


 エルザにたしなめられたアレットは若干気まずそうな顔をして、それからハッと何かを思い出した顔になった。


「う……あ、そうだその最悪の事態で思い出したんだけど、あの三人はドラゴンの身体の欠片を集めて何をするつもりなのかしらね?」


 各地で爆破事件を起こしている危険人物達の、最終的な目的は一体何なのか?

 それはレウスが一番予想出来る話だった。


「前にも話したと思うが、あの三人は俺が倒した破壊の化身のドラゴンの復活を企んでいるんだろう」

「何の為にだ?」

「そこまでは俺に聞かれたって困る。ただ、それだけの事をしなければならないって理由が必ずあると思うんだ。破壊の化身って言う通称に魅せられたのか、それとも世界征服を企む輩が居るのか……それはあの三人から聞かないと分からない」

「それもそうよね。ドラゴンの身体の欠片を材料にして、新しくドラゴンの肉体を作り出し……そこに破壊の化身のドラゴンの魂を入れるとか?」

「そうなると最悪だよ。錬成魔術ってのは禁断の魔術でもあるから、俺がアークトゥルスとして生きていた時代でも禁忌とされていたんだ」


 昔の記憶を思い出しながらフォークに刺さった肉を口に運ぶレウスの目に、次の瞬間ビックリするものが映った。


「……むぐ?」

「どうした?」

「んっ、ん!!」

「口に物を入れたまま喋らないの。一体どうしたの……よ?」


 呆れながらもアレットとエルザが、レウスの指差す方向を見る。

 その瞬間、彼女達もレウスと同じく驚きの表情に変わった。

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