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775.見つかっちゃった

『エレインが死んでしまって、こうしてまた旅に出て三ヶ月が経過した。しかしまさか、この日記を書いているイーディクトでトリストラムに纏わる話を聞くとは思ってもみなかった。あいつが自分の魔術を駆使して、科学技術に目をつけたのもあってあんな兵器を生み出そうとしているなんて……』

「あんな兵器ってまさか、この金属の塊の事かしら?」


 サイカがそう言いながら金属の塊に目を向けるが、どうやらその予想は当たりだったらしい。


『私はそれを確かめる為に、イーディクトに居るトリストラムに話を聞きに行った。彼女が言うにはウェイスの町で科学技術研究所を設立し、魔術と組み合わせて兵器開発に勤しみ始めたらしい。イーディクトの方は魔物が多いから、人間や獣人も魔物にもっと対抗出来るだけの戦力を持てる様にしたいとの話だったが、それにしては戦力が強大過ぎる気がした』

「何でだ……戦力は強大な程それで安心出来るんじゃないか?」


 首を傾げるラニサヴだが、日記にはまだ続きがある。


「トリストラムをそれ以上に問い詰めてみても何も喋ってくれなかったので、悪いとは思いながらも私は彼女が夜中に寝ている間に研究所内部を探し回った。何か秘密があるのでは無いかと思ったが、まさかこの新兵器の開発にガラハッドが絡んでいるなんて思いもしなかった』

「が……ガラハッドだって!?」

「何でその男の名前が出て来るのよ!?」


 エルザとドリスを始めとするメンバー達は、まさかの名前の登場に驚きを隠せない。

 それはレウスも同じだったが、その理由もきちんと日記に記されていた。


『彼女は自分だけのメモに、彼への恨み言を残していた。どうやらガラハッドがトリストラムを脅して、軍備拡大の為に新兵器の開発をさせていた様だ。そしてそれについて嫌々ながらもトリストラムは従っていた。何故ならガラハッドは、彼女の子供を人質に取っていたかららしい』

「とんでもないドクズね」


 その時このメモを書いたトリストラムが発するならこのセリフしか無いだろう、と言う一言をアニータが忌々しそうに吐き捨てる。

 だからこそ、ライオネルはここでトリストラムを説得して強硬手段に出た。


『私は彼女が悩んでいる事を知って、少なくとも今開発している兵器だけでもガラハッドに悪用されない様に処分出来ないかを一緒に考える事にした。その結果、縦に大きな金属の塊を何とか彼の手に渡らない様にするべく、程良い処分場所を探す事に決めた。魔力を込めた特殊な石を動力源として、城を蹴り壊す事が出来るとまで言われている巨大なあれを処分出来る場所を……』

「じゃあ、ガラハッドの野望を潰す為にこの場所にわざわざ捨てに来たって事……?」


 アレットが湖の方を見つめて、土台を見据えて目を細める。


『この金属の塊にはゼフィードと言う名前が付けられている。そのゼフィードを沈める場所を見つけたのは、それを決意した二日後の事だった。ガラハッドにバレない様にイーディクトの南東に飛び、海を渡った先にある湖に沈めた。海に沈めて万が一にも別の国に流れ着いたり、山の中に埋めて誰かに見つかったりしたら大問題だからだ』

「でも結局、俺達に見つかっちまったって事か」


 色々あったとは言え、ゼフィードと呼ばれるこれが結果的にこうして見つかってしまったのだから、作戦としては失敗なのかも知れない。

 しかし、日記はまだ続いている。


『私は今までの旅の中で出会った人々に協力して貰い、ワイバーンを借りてゼフィードを湖の中に捨てた。それも土台ごとである。ガラハッドに見つからない様にするべくトリストラムにも付き合って貰い、動力源となる石を全て取り出して特殊な結界を掛けて全て見えない様にして森に撒いた。更に土台と本体を外してそれも湖の中に結界を張った。だが、この結界は五百年程しか持たないかも知れない。トリストラムはそう言っていた』

「だから私達にこうして見つかってしまったんだな……」


 エルザがそう呟く一方で、レウスが日記の最後のページを読む。


『もしこの結界が解けてまた見つかる様な事があれば、その時は解体をして壊してくれ。もし土台と本体がくっついたら、それだけで地上の魔力を吸って動力源となる石の代わりになってしまうから……』

「それで日記は終わりか?」

「ああ。中身は結局エレインの日記じゃなくて、ライオネルによるこのゼフィードって奴の日記らしいけど……とりあえず起動させてみるか?」

「おい、どうしてそうなるんだ? 解体をして壊して欲しいって貴様の仲間が言っているだろう?」


 エルザが咎める様にそう言うものの、レウスは首を縦に振ろうとはしない。

 それは単純な好奇心では無くて、ちゃんとした理由からだった。


「考えてもみろ。これがどう言う物だったのかが一切ここには書かれていない。つまりこれは立派な研究材料になると言う事だ。しかもカシュラーゼの戦力は強大。もしカシュラーゼが俺達の手に負えない戦力を持っていたとして、このゼフィードってのが戦力になってくれるかも知れないってんなら、それだけでカシュラーゼをぶっ潰すチャンスが出来るかも知れないだろ?」

「……仲間の意思は尊重しないの?」

「普通に考えたらそれは尊重したいさ。一緒にエヴィル・ワンを討伐した仲間だからな。だが……俺を背後から刺し殺す様なガラハッドの仲間の言う事を、俺は素直に聞く気にはなれないんだよ。普通じゃないからな」

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