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774.日記の内容

 その日は結局、野営地の準備をして湖のほとりで寝る事になった。

 準備をする前に、エンヴィルークにもルリスウェンから大公が来ると言う事をレウスが連絡しておいたので、結局エンヴィルークだけがルルトゼルの村からエレインの秘密の日記を持って来てくれる事になった。


「あー、まさかこんな時にこんな事になるなんてね……」

「仕方無いわよ姉様。それよりもエレインの秘密の日記ってどんな事が書いてあるのかしらね?」

「さぁねえ。それこそ、他人には言えない秘密の日記だからかなりいかがわしい事が書いてあるかも知れないわよ?」


 そんな会話をするヒルトン姉妹も、やはり年頃の女だった。

 あの五人の勇者の一人であるエレインの経歴は、今まで見つけて来た数々のメッセージからその殆んどが判明している。

 しかし、そのエレインが秘密裏につけていたと言うその日記は一体どんな物なのか?

 それがやはり気になって仕方無いヒルトン姉妹は、エンヴィルークがその日記を持って来るまで胸を高鳴らせながら野営地の準備を進めていた。

 話によれば、ルリスウェンのジーク達もワイバーンで次の日の朝に来てくれるとの話だったので、向こうとしてもこの金属の塊の話は気になっているらしい。


「あっ、おい……あのドラゴン!?」

「ああ、そうだよ……あれがこのエンヴィルーク・アンフェレイアの中で神と呼ばれているドラゴンの一匹……エンヴィルークだ」


 空を見上げて指差すラニサヴ。

 そんな彼の指の先を見て、夕暮れになりかけて空と同化しかかっているドラゴンの姿を見つけたレウスは、そのドラゴンが敵では無い事を伝える。

 そしてレウスがそのドラゴンに向かって大きく両手を振ると、ドラゴンの方もまたそれに気が付いたらしく、バサバサと翼を動かしながら野営準備の邪魔にならない様に着陸した。


「大丈夫、このドラゴンは俺達の味方だ」

「……ああ。そなたにはあの時オーレミー城を救って貰って本当に助かった。感謝する」


 エンヴィルークに向かってラグリスがそう言えば、妙にぶっきらぼうであるがエンヴィルークは『ああ』と呟いた。


『俺様はこの世界の監視者だからな。こっちにも色々と事情があるが、とりあえず俺様のやるべき事をやっただけだ。それよりもこの勇者の生まれ変わりの仲間達から連絡を受けたんだが、問題の金属の塊ってのはこれか?』

「ああ、そうだよこれだよ」


 レウスが指を差す方向を見たエンヴィルークは、何回も使いっ走りに使われて下がっているそのテンションが少しずつ上がるのが分かった。


『へえー、誰がこんなもんを造ったかは知らねえけど……なかなか芸術的って言うかさ』

「芸術的かどうかは置いておいて……それよりもこの金属の塊には色々とまだ謎があるかも知れないから、ルリスウェンの工学を研究している人達に調べて貰おうと思ってな」

『そう言ってたな。だけどそれに関してちょっと気になる記述をエレインの秘密の日記の中から見つけたんだ』

「えっ?」


 まさかの話がエンヴィルークの口から出て来たので、レウス達は驚く。

 エレインの秘密の日記と、この金属の塊がどうしてそこで繋がるのか?

 それを考えてみると答えは一つ。エレインもまたこの金属の塊について何かを知っていたと言う事になる。


「とりあえず、その話は日記を読んでから俺達も考えてみよう。だからその日記を見せてくれないか?」

『ああ、えーと……ああこれこれ』


 自分の首に掛かっている、ちょっと小さめの麻袋を器用に首を動かして紐ごと地面へと落とすエンヴィルーク。

 それを拾い上げて袋の口を開けてみると、中から灰色の表紙の本が出て来た。

 そして表紙にはかなり掠れているものの、何とか「エレイン」と言う名前が読み取れる。

 五百年前に死んだ自分の仲間が、自分が死んだ後に何をこの日記の中に残したのか気になるレウスは、意を決してその日記の最初のページを読み始めた。


「私もこのエレインとともに過ごして来て、彼女が亡くなってしまってかなりの喪失感を覚えている……って、おいちょっと待て。これってライオネルの日記なんじゃないのか?」

『俺様に聞かれたって困るよ。だって日記にはエレインって書いてあんだから。それよりも続き読めよさっさと』

「えっ、ああ……うん」


 何故かイライラしている様な口調でそう言うエンヴィルークにちょっと引き気味になりながらも、レウスは更に続きを読み始めた。

 そこにはルリスウェンでエレインが突然の病に侵されてしまい、治療の甲斐も無く亡くなってしまった事が綴られていた。


「あいつ……病気で死んじまったのかよ」

「もしかしたら、この日記の表紙にエレインの名前が書いてあったのはライオネルがこの日記をエレインだと思って大事にしていた、って事なんじゃないですか?」

「うーん、あいつがそんなロマンチストだったとはあんまり思えなかったけどなぁ」


 どっちかって言うと、一緒にパーティーを組んでいたあいつはパーティーの中で一番クールで現実的な人物だったぞと思い返しつつ、更に先を読んでみるレウス。

 しかし、その先でエンヴィルークの言っていた通り思わぬ記述があったのだ。

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