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74.あいつ等の企み

「うん、それは事実かって聞かれたら事実ね。ソランジュから聞いたんでしょ?」

「ああ」

「なら間違い無いわ。赤毛の二人は私達がまともに相手になる敵じゃ無かったから。ソランジュがここに荷物を纏めに戻って来たその日の夜に忍び込まれたんだから」

「えっ、お主達は私がここを出て行こうとするのを知っていたのか?」

「そりゃそうよ。荷物を纏め始めてた時から薄々感づいてたし、部屋の隅に小綺麗に荷物が纏まっていたら怪しむわよ」


 こっそりやっていた筈だったのに、まさか気が付かれていたなんて。

 そしてあの二人と出逢ってしまったのはかなり運が悪かったらしい、とソランジュは今までの事を思い返しながら冷や汗を流す。

 その一方で、横からエルザが割り込んで話の続きを促す。


「それで、赤毛の二人はこの屋敷の中で何かを探していたのか?」

「ええ。私達が動けなくなっちゃったのを良い事に屋敷中が荒らされたんだけど、特にご主人様の部屋と地下室が荒らされて、それはもう酷い有り様で。ご主人様から地下室には誰も入れさせるなって言われてて、私達だって入れて貰った事が無かったからどうやって入ったのか分からないんだけどね」


 しかし、ロングソード使いの女の横から弓使いの女が割り込んで疑問を投げ掛ける。


「あれ、でもその前に爆発が起こってなかったっけ?」

「あー……そう言えば凄い衝撃だったけど、あれって爆発だったっけ?」

「そうね。それで地下室のドアが吹っ飛ばされて中まで荒らされて酷い状況だったじゃない」

「爆発……それって何が原因とかってのは分かるかしら?」


 爆発と聞き、レウスとエルザとアレットの脳裏にマウデル騎士学院が爆破されたあの時の話が蘇った。

 魔力の結晶石を使って爆破したのだろうと現場検証が行なわれていたのも良く覚えているので、もしここの爆破も同じだったら……とアレットが原因を問いただせば、予想通りの答えが返って来た。


「えーっとね、確か魔力の結晶石だったかな。略して魔晶石って呼んでいるあれに、魔力を目一杯詰め込んで一気に爆発させる事が出来た筈よ」

「あー、やっぱりか……」

「やっぱりって?」

「いいや、それはこっちの話。それにしてもその二人はこの屋敷を荒らし回ってから何処に行ったんだろう?」


 やはり爆破されたと言うこの屋敷の地下の部屋。そしてその後にあの赤毛の二人が向かった場所は何処なのだろうか?

 それが分かれば追い掛けられるので、使用人達に頼み込んで主人の部屋と地下室を見せて貰えないか頼み込む。


「良かったら見せて貰えないかな、その地下室と主人の部屋を」

「え……申し訳ありませんが、外部の方を入れるのは……」

「頼む、その赤毛の二人に繋がる可能性があるんだ。それに君達の主人も狙われているかも知れない。詳しくは話せないと言うよりも、その赤毛の二人は多分主人から何かを聞き出すつもりで帝都のランダリルに向かった可能性がある」


 物凄く真剣な目つきでそう頼み込むエルザに対して、使用人達は顔を見合わせてから渋々とではあるものの、主人の部屋と地下室を見せて貰える事になった。

 赤毛の二人がこの屋敷を狙い、荒らし回ったのなら恐らく主人の居場所も掴んで帝都のランダリルへ向かったのだろう、とエルザは予想するが、確証が持てない今は調べさせて貰いたいのだ。

 時間も余り無いので、ここはレウスとアレットが地下室に行きエルザとソランジュが主人の部屋へと案内して貰う。


「うわぁ、これは確かに酷いわね」

「これでも片付いた方なんですよ。その赤毛の二人が侵入して来た後はもっともっと酷かったんです」


 先に主人の執務室へと向かったエルザとソランジュが見たものは、荒らされるなんて言葉がまだソフトな位の惨状を見せている部屋だった。

 机の引き出しやタンスなど、ありとあらゆる場所が荒らされているだけでは無く、怒りに任せたのか床や机や壁の至る所には鋭利な刃物で切り刻んだ跡が生々しく残っている。

 当初は今以上に書類やインクのビンが散乱し、本棚の本も全て床に放り出されていたのだと弓使いの女が語った。


「それで、ここから無くなった物は何があるんですか?」

「ええと、ご主人様の金品の類は全て奪われています。それから本がほぼ全てですね」

「本?」

「ええ。ご主人様は古代の文献を色々と収集されておりまして、それ等がほぼ全て無くなっています」

「ってなると、金品を根こそぎ奪い去ったのはこの先の旅路の金に変える為って事で間違い無いと思う。でも古代の文献ってどんなのがあったか覚えてますか?」

「そうですねえ……確かドラゴン関係の文献を中心に色々と集められていましたよ」

「ドラゴン関係か……」


 それだと赤毛の二人の狙いは分かるが、一方の地下室に向かったレウス達の目の前には更なる惨状が広がっていた。


「うっわ、これは酷いなんてもんじゃないな」

「本当ね……今でも強めの魔力を感じるから、相当強く爆破したんじゃないかしら?」


 ロングソード使いの女と魔術師の女と一緒に地下室に向かったレウスとアレットが見たのは、既に部屋の原型すら無くなりかけている地下の空間であった。

 そもそもここに何があったのかすら分からない。

 その理由は、出入り口のドアを爆破しただけでなく部屋の中を荒らし回って、更に最後にもう一度爆破をしたのだろうと簡単にイメージ出来る部屋の惨状だったのだ。

 壁も床も天井も黒焦げで、最後に爆破する事で何を狙ったのかを分からなくさせる手段だったのかも知れない。

 しかし、地下室に何があったのかを知る人物なら一人心当たりがあるので、レウスとアレットは一旦地下室を後にしてその人物の元に向かった。

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