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764.俺様がエンヴィルークだ!!

 光の中で、ペーテルの身体のシルエットが確実に大きくなる。

 そしてそのまばゆい光が収まると、レウス達よりも数倍大きな赤っぽいオレンジ色のドラゴンが姿を見せたのだ。

 その威風堂々としている姿に、ジークやクリスピンのみならずレウス達まで言葉を失っている。


「お……お……」

「ほ、本当にドラゴンになった……?」

「確かにこれはドラゴンだ……しかも俺達が話を聞いていた、あのエレデラムに突然現われて大公の窮地を救ったって、あのドラゴンだよな……!?」


 訓練場の中に堂々と佇むそのドラゴンは、レウス達の目の前で恐ろしさ満点の威圧感を放っている。

 しかし、そのドラゴンの存在よりももっと重要な話があるのだ。


『俺様がエンヴィルークだ。証拠を見せて欲しいって言うのであれば、この場で炎でも噴いてやろうか?』

「いや、ここが燃えるから止めてくれ」

『あ、そう。まあそれよりも先に決めなければならないのは、この後の話だろうな。エヴィル・ワンの身体の欠片を見つけたのは良いが、何時までもここに保管しておく訳にもいかねえだろ。そもそもあんなくっせーもんをわざわざ保管しておいたら、それこそまた誰かに狙われるかも知れねえしな』

「確かにそれはあるな」


 それを考えると、やはりエレデラム公国の時と同じくアンフェレイアとルルトゼルの村に預かって貰うのが一番良いだろう。

 話がそれで纏まったので、また連絡を入れてそっちは取りに来て貰うとして、残るはこのジークが持っているライオネルの手記を見せて貰う事だ。

 それが済めばこのルリスウェン公国にも用が無くなるのだが、その時この訓練場に一人の騎士団員が飛び込んで来た。


「大公っ、大変です!!」

「何事だ?」

「わ……ワイバーンの大群がこの城に向かって来ています!!」

「何だと?」


 まさか魔物の集団の襲来か、それとも別の敵がやって来たのか。

 その騎士団員の話からしてみると、どうやらその実態は後者だったらしい。


「ワイバーンの背中には武装した人間や獣人が乗っているのを、見張り塔の騎士が確認しています。恐らくはこの国に何かを求めてやって来たものかと……!!」

「くそっ、一体何が起こっているのだ!?」


 状況がまだ良く分からないのだが、少なくとも友好的な関係の群勢では無いだろうと判断した大公のジークを始め、そのワイバーンの集団を迎え撃つ事に決めた一行。

 しかし、神の存在であるエンヴィルークは涼しい表情をしていた。


「おい、あんたもさっさとワイバーンの大群が来ているんだからそれを迎撃しに……」

『まずは正体を確認しようぜ。この訓練場は屋外だから、どっちから来てんのかも大体聞こえて来たしなぁ!!』


 そう言ってバサッと翼を広げて、大空へと飛び立ったエンヴィルークは空中で翼を動かしてホバリングする。

 そのままジーッと一つの方向だけを見つめて、訓練場の地面に降り立ったドラゴンの表情は妙に険しかった。

 この表情だけで、彼が何を見てどう思ったのかが大体分かると言うものだ。


『まずいな、あの連中の姿が見えたんだが……どうやら俺様が倒したウルリーカとか言う女の仲間達らしいな』

「何故分かるんだ?」

『かなり鬼気迫っている表情と、俺様がエレデラム公国で相手をした何人かの顔が見えたからだ。このまま全力でこの城に向かって突っ込んで来られたら、今度はあの連中がウルリーカを取り戻しに来たらしいから全員やられてしまう可能性がある!!』

「えっ……な、何人位の群勢なの?」

『見える限りでは軽く百匹を超えている。前回は大体五十匹位だったから、俺様があいつ等をここに辿り着く前に食い止めよう!!』


 だが、そのエンヴィルークの決意に思わぬ所からストップが掛かる。


「ちょっと待った!!」

『え?』

「城下町の中であいつ等を迎え撃てば、城下町の住民達や観光客に被害が出る。恐らく奴等の狙いはこの俺とウルリーカだ。だからあいつ等を何処か別の場所に引き付けるしか無い!!」

「って言っても、じゃあどうすれば良いんですか!?」


 大公のジークからまさかの引き付け案が出た。

 しかしそれは良いとしても、ウルリーカと大公が目的なら二つにグループを分けて話を進めなければならないだろう。

 それを考えると、必然的にメンバーがこう分かれる事になった。


「良し、そうなると大公を護るグループとウルリーカの奪還阻止のグループに分かれるぞ。大公は私と一緒に隠し通路を通って逃げましょう!!」

「そして俺達はウルリーカの奴を奪還されない様に、この城にあるそいつの牢屋を警備するんだな?」

「物分かりが早くて助かる。それじゃあ早速メンバーを分けて……」

「いや、ちょっと待てクリスピンにレウス!」

「えっ?」


 せっかくクリスピンとレウスで決めたメンバー構成なのに、そこにまたもやジークからのストップが掛かる。

 そして彼はとんでもない事を言い出したのだ。


「俺がこのエンヴィルークの背中に乗って、あのワイバーン連中を引きつけるんだよ!!」

「大公、何をおっしゃるのです!?」

「この城は余り大きくない。その中で大勢を相手にしている間に、あの連中がウルリーカの元に辿り着いてしまうかも知れない。だから少しでもあいつ等の戦力を分散させるんだ!!」

「し、しかし……」

『おい、言い争っている暇なんか無えぞ!!』


 そう、こうしてギャーギャー言っている間にも敵の大群はどんどん近づいて来ている。

 こうなったらもうこれで行くしか無いと決めたジークがエンヴィルークの背中に飛び乗り、大空へと舞い上がり始めた。


「ちょ……ちょっと待ておい!!」

「レウスっ!?」


 慌ててレウスも彼の後に続いてエンヴィルークの背中に飛び乗り、大公を護衛しながらの逃走劇が幕を開けた。

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