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763.墓石の下から

「おわっ!? 何だこりゃあ!?」

「うわっ臭っ!!」

「ぶほえ……で、でも何でこんなのがこんな場所に……!?」


 墓石をメンバー総出で動かしてみた所、その下から現われたのは明らかに保存状態の悪いドラゴンの翼だった。

 しかもかなりの異臭がする。

 恐らく墓石をここにこうして建てる時にこの中に入れたのだろうが、余りにも扱いが雑すぎて生々しい事この上無かった。

 そしてレウスにはこれが一体何なのかが分かっていた。これが恐らく、エヴィル・ワンの身体の欠片の一つなのだろうと……。


「と、とにかく出してみよう!」

「ああ、そうだな!!」


 エルザの提案で、その折り畳まれた状態で収納されていた翼がちぎれない様に、破れない様に慎重に引っ張り出して行くレウス。

 すると何と、翼の部分はその収納されていた身体の欠片の一部でしか無かったのである。

 何故それが分かったのかと言えば、この翼の下から出て来た大きなドラゴンの頭部がそれだったのである。

 それを見た瞬間、レウスの頭の中に五百年前の光景が唐突にフラッシュバックして来た。


『やっ……た……ぞ……』

『ああ、やったんだな。俺達!』

『そうね。これでこのエヴィル・ワンも終わりね……』

『本当にてこずらせてくれたけど、これでようやく旅が終わるのね』

『だな。こいつが倒れた事で……僕達のパーティーも終わりさ』


 ここまでは良かった。勝利の余韻に浸っていた。

 しかし次の瞬間、背中から襲ったこの衝撃が自分の運命を変えたのだ。


『ぐおっ……!?』

『ああ。これで俺達の縁も終わりさ……アークトゥルス』


 ガラハッドによって殺されてしまった自分は、こうして五百年後の世界に転生して今を生きている。

 それがまさかこんな形で、あの時のドラゴンの頭部に出会ってしまうなんてとレウスは複雑そうな表情を浮かべている。


「レウス? ねえ……どうしたのよ?」

「え? あ、ああ……すまんすまん、ちょっと考え事をしていた。それよりもこの身体の欠片をここから一旦運び出そう。一纏めにして大公のジークの元にまで持って行くんだ!!」

「じゃー、俺様が聞き出した話をお前達に聞かせてから手伝おうか?」

「ん?」


 突然聞こえて来たペーテルの声は、明らかに自分達に向けられていた。

 まさかもう、拷問と言う名の尋問が終わったのかとそちらの方にレウス達が目を向けてみると、そのまさかだったのである。


「お……終わったの……?」

「ああ、終わったぜ。幾ら盗賊団のリーダーでも、流石に首を折れる限界まで捻られるのには我慢出来なかったらしい」

「そ、そう……」


 聞くだけでも首が痛くなりそうな拷問だが、何にしても色々と情報が聞き出せたらしい。

 それじゃあ早速その聞き出した話を聞かせて貰おうと思ったその時、バンッと地下の出入り口の扉が大きな音を立てて開かれた。

 そしてそこに立っていたのは、この場所に突然やって来てウルリーカと戦ったペーテルよりも数倍は納得出来る、ここに居る理由のある人物とその部下達だった。


「話は全て聞かせて貰ったぞ。こちらでそのドラゴンの欠片は預かろう!!」

「え、あ、あれ……騎士団長のクリスピンさん!?」


 良く通る低い声でそう言ったのは、ウルリーカを追撃して行ったルリスウェン公国騎士団長のクリスピン・オムスだったのだ。

 ジークに影武者の事情を説明した後、部下達三十人を引き連れてワイバーンでこのカナカナの神殿にやって来たのだが、そこで地下室で拷問をしているレウス達の会話を全て聞いていたのであった。

 そしてクリスピンの指示でテキパキと後処理がなされ、レウス達は彼等と一緒に都のペルドロッグにあるヴァニール城へと戻る事になった。



 ◇



「うへえ……確かにこれは凄い臭いだな」

「防臭処理を施しておくのが宜しいかと。それで……話を聞く限りでは貴方がこのエンヴィルーク・アンフェレイアの神の片割れであるエンヴィルーク様だと聞いているのだが、それは本当か?」


 明らかに胡散臭いと思っているクリスピン。

 しかしそれはクリスピンのみならず、一緒に行動を共にしていたレウス達もそうだった。何せ、このペーテルがドラゴンになると言う一連の流れを見た事が無いのだから。

 アンフェレイアに『彼がエンヴィルークよ』と言われても説得力がゼロなのは当たり前なのだが、それはどうやらペーテルも分かっているらしい。


「……話を全て聞かれていたんじゃあ、隠し通す事も出来ねえかな」

「それはそうだろう。大体、人間がドラゴンに変身出来ると言う話なんて聞いた事が無いからな」


 アンフェレイアの様に変身出来ると言う事実を知らない者からしてみれば、クリスピンのセリフはもっともである。

 なので、このヴァニール城にある訓練場へとその身体の欠片を運んで来た過程を利用して、ペーテルはレウス達の目の前で自分の正体を晒す事にしたのだ。


「仕方無いな。だが、この事は他言無用だぞ」

「分かっているさ。それよりも本当にドラゴンの姿になれるのかを見せてくれ」

「はいはい……」


 何処かうんざりした様な口調で、ペーテルはポケットから取り出したピンク色の錠剤を口に含んで飲み込んだ。

 するとその瞬間、彼の身体がまばゆく光り始めたのである!!

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