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761.久し振りのあの男

 本体のドラゴンが倒れて行く。

 このドラゴンは分身の様にサーッと消えてしまうのでは無く、レウス達の目の前にドスーンと横倒しになって息絶えてしまった。

 討伐したドラゴンはこれで九匹目。裏の世界を通って来たカシュラーゼ以外に放たれたドラゴンの生物兵器は全て倒した事になるのかも知れないが、かと言ってまだまだ油断が出来ない状態である。

 そう、あの伝説のドラゴンであるエヴィル・ワンの復活を目論むカシュラーゼのディルク達を止めるのが最終手段なのだから。

 しかしどうやらその前に、この場所で止めておかなければならない存在が逃げ出してしまっていたらしい。

 それに最初に気が付いたのは、ドラゴンから遠く離れた場所に居たティーナだった。


「……あら、そう言えばウルリーカは何処ですか?」

「えっ?」

「おいおい待て待て、あいつもしかして……逃げたのか!?」


 何たる失態。完全なる油断。してはいけない慢心。

 この三つが組み合わさった結果、ドラゴンと戦っているレウス達の意識が自分に向いていないのを確認したウルリーカがまんまとこの部屋から逃げ出してしまったのだ。

 しかし何時逃げてしまったのかが分からない以上、まだ近くに居るかも知れないのでレウス達は急いでウルリーカの後を追って神殿の出入り口へと向かう。

 その一方でもしかしたら逃げたと見せ掛けて、何処かの部屋に隠れているかも知れない可能性もあるので、各部屋をチェックしながら地下から一階部分へと上がる。


「油断した!!」

「全くよ。とにかくここでまた逃がしちゃったら、私達はあの女を何度も逃がしてるって事になっちゃうわよ!!」

「分かってるよ、だからこうして追い掛けているんだろう!!」


 自分の後に続くアレットのセリフにイライラしながらも、レウスは自分の不甲斐なさを悔いていた。

 あの女だけは絶対に逃がすまいと思っていたのに、ドラゴンに気を取られて逃がしたなんて話が広まったら信用も信頼もガタ落ちである。

 心の中にそんな焦りが生まれるレウスだったが、そんな彼が出入り口に向かって突き進んでいた所でふと気になる音が聞こえて来た。


「……ん!?」

「ちょ、ちょっとレウス!! いきなり止まらないで……」

「ちょっと静かにっ!!」


 突然立ち止まったレウスの背中にぶつかってしまったアレットからクレームの声が上がるが、そんなクレームを鋭い声で一喝して止めるレウス。

 そしてひんやりとした空気しか感じられない位に静かにしてみると、今の自分達が居る一階部分の出入り口の方から金属音が聞こえて来た。

 それについて最初に反応したのがコルネールだった。


「これ……武器がぶつかり合う音じゃねえの?」

「お主もそう思うか。私も同じだ」

「私もそうだと思ったんですけど……となればこの先で誰かが戦っているって事ですかね?」

「かも知れないな。とにかく行ってみよう!!」


 コルネールに同調するソランジュとティーナの声を聞いて、レウスがメンバー達を促して足を先に進める。

 だが再び足を進めた瞬間、今度はさっきよりも甲高い金属の音と悲鳴が聞こえて来た。


「ぐふあっ!!」

「お、おい……今の声って!?」

「声からすると間違い無くウルリーカだ!! と言う事はやはり、誰かがこの先でウルリーカと戦っているんだ!!」


 驚くレウスに対してそう分析したエルザ。

 しかし自分達以外のメンバーとなれば誰が居る? エドガーやレウスの両親は裏切ってカシュラーゼ側についたし、サィードもヴァーンイレスに居る筈だし、皆目見当が付かないレウス一行。

 とにかく色々予想して時間を無駄にするよりも、現実として目の当たりにした方が早いと言う事で、一気にその悲鳴と金属音が聞こえた方向へと走るレウス達。

 そして現場へと到着した一行が見たものは、まさかこんな場所に居たのかと思う人物だったのだ!!


「えっ……あ、あれ!?」

「ぺ、ペーテルさん!?」

「お前達、どうしてここに居るんだ!?」


 ドリスとサイカとペーテルが同時に驚く。

 彼の驚きようからすると、どうやらペーテルはアンフェレイアから何も連絡を貰っていないらしく、レウス達がここに居る事自体が不思議らしい。

 実はここに駆けて来る間にもう一人思いついていたのが、このルリスウェン公国の騎士団長であるクリスピンだった。

 彼は今のペーテルが組み伏せているウルリーカを捕らえるべく出発した筈なので、この場所で戦うなら彼が一番説得力がある。

 しかしそのクリスピンでは無く、エスヴァリーク帝国に居た筈のペーテル……しかもアンフェレイア曰く、もう一匹の神のドラゴンであるエンヴィルークの仮の姿だと言うのだから驚きは倍増であった。

 そのペーテルの手には両手で扱うミドルバトルアックスが握られており、これを使ってウルリーカのシャムシールと戦ったのだろうと言う事は容易に想像がつく。


「その女……あんたが倒したのか?」

「ああ。俺様が倒しちゃ駄目だったのかよ?」

「いや別にそんな事は無いけど……と、とにかく下に行こうぜ」


 彼がどうしてここに居るのかが分からないので、とりあえずウルリーカの尋問も兼ねて先程ドラゴンと戦った部屋まで戻る事にした。

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