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760.ええー、それってありぃ!?

「な……なななななななっ!?」


 この大部屋は地下にある筈なのに、この砂漠の中にあるからなのか不自然に地面に降り積もっていた砂。

 その砂がある理由が分かったのは、天井から降り注ぐ砂の量が多くなったと思ったその一瞬の次に轟音とともに天井の一部が砕け散ったからである。


「きゃあっ!?」

「おい、危ねえっ!!」


 危うくその天井の崩落の下に居たアーシアが潰されそうになったので、慌ててコルネールが彼女を庇って難を逃がれた。

 しかし、何故いきなり天井が崩れて来たのか?

 それはレウス達の目の前にドスンと重苦しい音を立てて着地して来た、もう一匹の青みがかったドラゴンだったのだ!!


「お、同じドラゴンが……二匹!?」

「嘘だろ、そんな!?」


 驚き呆然とするレウス達の目の前で咆哮を上げるドラゴンだが、更に驚く事にもう一匹のドラゴンの身体がスーッとあの地上で見た時と同じく、砂の様になって消えて行ってしまったのだ。

 これは一体何なんだ?

 少なくとも、自分が勇者として活躍していた五百年前には絶対にこんな生物を見た事が無い。これは間違い無く、カシュラーゼの生んだドラゴンの生物兵器だろうとレウスの中で結論が出た。

 そう確信した彼だったが、だからと言ってこれをどうやって倒せば良いのか皆目見当がつかない。

 その気の迷いが隙を生み、そしてドラゴンの格好の餌食としてロックオンされてしまった。


「くっ!?」

「レウスっ!!」


 ナイト・プロヴィデンスを身に纏っていてもやっぱり怖いものは怖い。

 咄嗟にその鋭い爪の攻撃から逃がれるべく、レウスは横っ飛びをしてダメージを軽減する。


「ぐふっ……!!」


 爪の衝撃は免れたものの、レウスはドラゴンの前足で思いっ切り叩き飛ばされてしまったのだ。

 しかし、そこはその飛ばされた方向に居たソランジュ、アニータ、コルネールの三人がキャッチしてくれて難を逃がれた。


「あっ、ああ……助かったぞ」

「それは良いんだけど、あのドラゴン……!!」

「え……あっ!?」


 ソランジュの指差す先を見てみたレウスは、余りの変わり様に言葉を失う。

 何故なら、先程まで何も攻撃が通用していなかった筈のドラゴンが明らかにたたらを踏んで、苦悶の表情を浮かべていたからだ。

 先程の砂となって消えて行ったもう一匹のドラゴンと何かしらの関係があるのだろうかと思いつつも、とにかくこれで攻撃が効くのだと判断したレウス達は一斉攻撃を仕掛け始めた。

 地上のドラゴン相手には貫通してしまったアニータの弓も、今回はしっかり突き刺さってくれる。

 効果の無かったアレットの魔術も、しっかりドラゴンにダメージを与えてくれる。


(何がどうなっているのかさっぱり分からないけど、ダメージを与えられる内に与えておかなきゃあ!!)


 アニータが心の中でそう決意しながら、続けて矢をドラゴンに向けて発射する。

 しかし次の瞬間、ドラゴンが再び咆哮を上げた。

 てっきり自分達を威嚇する為のものかと思ったのだが、その予想は完璧に間違いだった。

 何故なら、そのドラゴンの姿がスッと少しだけ薄くなったかと思うと、ブワッとドラゴンの影が空中に巻き上がってドラゴンの影を形成し始めたのだ!!


「ぶ、分裂したっ!?」

「そうか……そうだったのか!!」

「何か分かったの?」


 驚くサイカの横で、エルザがドラゴンの秘密に気が付いた。


「ああ。上で見たドラゴンに攻撃が一切通じなかったのはこの分裂したドラゴンだったからだ!!」

「何匹も居たのに?」

「そうだ。だから分裂なんだ。しかしタネが分かったと言ってどっちを攻撃すれば良いんだ?」

「決まっているだろ。どっちも攻撃すれば分かるんだからよ!!」


 横から聞こえて来た声の主であるレウスの手には、既に巨大なエネルギーボールが用意されていた。

 それを大きく振り被って、緩いカーブを描く様に投げる。

 そのエネルギーボールは二つに分裂して暴れ回るドラゴンの両方を貫通……しなかった。


「よっしゃ、左だ!!」

「攻撃開始……!!」


 コルネールが喜びの声を上げるのを聞き、アーシアが全員に指示を出して分身では無い方のドラゴンに集中攻撃を始めた。

 それと同時に分身の方のドラゴンが苦しみ始め、また以前と同じくサーッと砂の様に消えて行ってしまったのだ。

 蜃気楼の謎さえ分かってしまえば怖いものなんて何も無い。

 レウス達はドラゴンに向かって集中攻撃を始める。特に矢を無駄にされてしまったアニータと魔術が効かなかったアレットの攻撃はすさまじく、一気にドラゴンを追い込んで行く。


「押せ押せええええっ!!」

「倒れろおおおおおおっ!!」


 だが、この時その二人を始めとしたレウス達は気が付いていなかった。

 自分達がドラゴンの秘密を知り、その対処法を手に入れて完全にそのドラゴンに気が向いていた事で、もっと大事な存在がある事実に。

 そしてその存在がレウス達に気が付かれない様に動き始めていたのを、この時ドラゴンの攻撃に集中していたレウス達は気に留める事も無く見逃してしまっていたので、この後に一悶着が起こる事になる。

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