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758.神殿の中の秘密

 神殿は金色の装飾が施されている両開きの鉄製の扉が出入り口だった。

 そこから一歩中に入ってみると、ひんやりとした天井の高い空間がレウス達を出迎えてくれたのだ。

 何本もの柱が立ち並び、優雅さと豪華さを感じさせてくれるのだが、わざわざこんな場所にこれだけの建物を造るなんて、それ程このカナカナと言う地を残しておきたかったのだろうかと不思議で仕方が無いレウス。


「確かジークの言っていた話だと、この場所からライオネルの手記が見つかったって話だったな?」

「ええ。と言う事はライオネルがこのカナカナの場所に来たって話よね?」

「そう……なるよな。俺達にとってかなりトラウマになっている場所だから、ライオネルがわざわざここまで来たがっていたとは到底思えないんだがな……」


 一体どう言う心境の変化があってここまで来たのだろうか、と当時のライオネルに聞いてみたいが、彼の手記を見てみればそれが書いてあるかも知れない。

 しかし、それよりも先に調べなければならないのはあの謎のドラゴンについてである。

 まるで蜃気楼の様に消えてしまうドラゴン。

 砂の様になって消えてしまうのには何か秘密がある筈だと思いながら、扉を開けて中を進んで行くレウス達。

 規則正しく部屋が造られているのはいかにも神殿らしいが、似た様な風景と構造の部屋が多いので気を付けないと迷ってしまいそうである。

 例えそれが、神殿の入り口に掛けられている看板に構造を記した図が描いてあったとしても。


「なぁ、ここって変に広くないか?」

「本当ね。何なんでしょうねここは……」

「それは多分……この所々に建てられている墓石のせいだと思うぞ」

「あー、それはあるかも知れないわね」


 ブツブツと文句を垂れるエルザとティーナに対して、墓石のせいだと述べるコルネールに同意するアーシア。

 神殿の奥に進むに連れて、犠牲者らしき名前の彫られている墓石が部屋の中に建てられている事が分かったのだ。

 そしてその墓石には、かつてこの神殿が建てられる前の姿だったカナカナの地で息絶えた犠牲者の名前が彫られていたのだ。

 それを見て、レウスは非常に腹立たしくなったのである。


「まさかこの神殿、あの麻薬常習犯達を祭る為にここに建てられたんじゃねえだろうな?」

「それが事実だと居たら、冒涜も良い所よね」

「全くだ。大体あいつ等は麻薬常習犯で逆切れして来た上に俺達を殺そうとしてきたんだから、ふざけるのも大概にしろってんだよ!!」


 この神殿を建てようと言い出した奴の墓石を見つけたら、それこそ盛大に蹴り倒してやりたいレウス。

 しかし、その前に蹴り倒さなければいけない相手がこの神殿の中に居るらしい。


「でもさぁ……この奥に続いている扉の目の前に残っている、この真新しい足跡は一体誰なのかしら?」

「え?」

「だってほら、まだそんなに時間が経っていない足跡みたいだし」


 アニータが指差す「それ」は、間違い無く人間か獣人の靴跡である。

 これを見たレウスは、自分達よりも先にこの中に誰かが入って行ったのだと推測する。


「この先に誰かが居るみたいだ。一応探査魔術を使っておくか……」


 どんな人物が居るのかまでは分からないが、自分の身の安全の為にも探査をしておくべき余裕があるならしておくのが良い。

 そして出た結果なのだが……。


「あれ?」

「どうした?」

「いや、誰も居ないな……?」

「えっ?」


 レウスの回答にソランジュもドリスもアーシアも首を傾げる。

 するとその横から、魔術師として心当たりがあるのであろうアレットが口を挟んで来た。


「ねえ、もしかしてフロアの構造が地下とか上とかにもあるんじゃないかしら?」

「ああ……その可能性はあるな」


 この探査魔術、階層が違う場所までは探査が出来ないと言う欠点がある。

 なのでイーディクトの旧ウェイスの町を始め、今までこの魔術を使って来た場所を探査した結果も「自分達と同じ階層に居る」生物の気配しか探れないのだ。

 そして中に踏み込んだまでは良かったが、地下や上の階から襲い掛かって来た敵に対処する事になって続けて探査魔術を使う余裕が無くてそのまま奥に向かって踏破して行くと言う流れだった。

 今回もどうせその流れになりそうな気がすると思いながら、更に神殿の奥に歩を進めればその予想した理由が当たってしまった。


「やっぱり地下に続く階段があったな」

「しかもこの階段の前にも足跡がある。うん……誰かがこの階段を下りて行った証拠だわ」

「だったら地下に降りたらすぐに探査魔術を起動して」


 アニータの要望通りにレウスは地下への階段を降り、そこで探査魔術を起動してみる。

 すると今度こそ反応があったのでホッとすると同時に、緊張感も一層高まる。


「良し、やっぱりこの先には誰かが居るぞ」

「その前に聞いておきたいんだけど、この地下は上と同じ構造なの?」

「いいや、上よりは狭いな。部屋数も少ないんだけど……一つだけ妙に大きな部屋がある」

「えっ?」

「そしてそこに生物の反応がある。それも一つじゃなくて二つだ。つまりこの先に居るのは一人じゃなくて二人が居るって事になるから更に用心しておけよ!」


 そう言いながら槍を構えて先頭で歩き出すレウスだが、その探査結果から導き出した答えが悪い意味で間違っていたのだと分かるのは、問題のその大きな部屋に入ってからだった。

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