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73.言葉足らず

 とにかく、それが事実ならソランジュの仕えていた屋敷に行ってみれば、この先で自分達がどうすれば良いのかも見えて来る筈だとレウスは考えた。

 事情聴取をしている間にカフェの後始末もあらかた終わったので、残りをレウスとソランジュも手伝ってさっさと終わらせてから、ソランジュに先導される形でレウスとアレットとエルザは屋敷へと向かった。



 ◇



「で、貴女の仕えていた屋敷って言うのはここ?」

「そうだ」

「それにしては……何だか小ぢんまりとしていないか?」

「まあ……主人は余り大きな屋敷を好まないらしいし、建築スペースの問題もあるからって地下室を造ってある位だからな」


 エルザの言う通り、四人の目の前には二階建ての小さな屋敷が鎮座している。

 港から大きく離れた町の中心地の一角に位置している、薄いオレンジ色の外壁が特徴的な茶色の屋根のこの屋敷で、ソランジュは仕えていたのだと言う。

 そしてここに自分が戻って来たのは、レウスの考えもあって色々と調べなければならない事が出来たからであると、彼女は彼を見る。

 一方で見られた方のレウスはソランジュに対して頷くと、屋敷の出入り口となっているワインレッド色の両開きの扉に向かって歩み寄った。


「誰か居ませんか? ちょっと用事があって来たんですけど……」

「はい、どなた……って、ええっ……ちょ!?」


 ドアに取り付けられているドアノッカーを、屋敷の外壁よりも濃いオレンジ色の手袋をはめた手でゴンゴンとドアに打ち付けると、中からあの時カフェの情報を提供してくれたロングソード使いの女が姿を現したのだ。

 当然彼女は驚くが、そんな事はお構い無しにレウスはドアをこじ開ける位の勢いで奥に向かって押し開け、屋敷の中に入って行く。


「ちょ、ちょっといきなり何なんですか!? それにソランジュまで何で戻って来たのよ!?」

「色々と調べさせて欲しい事があってね。俺もこの女もだ。あ、それとこっちの女二人は俺の助手みたいなもんだから気にしないでくれ」

「誰が助手だって……?」

「助手って何よ、助手って!」

「今はそう言う事にしておいてくれ。話がややこしくなる」


 ソランジュの仲間だと誤解していた、路地裏であの時レオンと呼ばれていた男と共にソランジュが戻って来たのを見て、やっぱりこの男とソランジュは繋がっていたのか? とロングソード使いの女は頭がパニック状態だ。


「いや、あの……もう十分ややこしいんですけど。それで、この屋敷に一体何の御用ですか? 今は使用人の私達しかおりませんわよ?」

「その方が逆に都合が良いんだよ。ちょっとね、あんた達の主人が何か大事なことを隠しているみたいだから盗賊に入られたんじゃないかって思って、それを調査しに来たんだよ」

「え? それって何か勘違いをされてませんか? 私達のご主人様は単なる美術商人ですが」

「それ関係でちょっと色々あったみたいでね。とにかく上がらせて貰うよ」

「あ……あの……ちょっと!?」


 その階下の騒ぎを聞きつけた他の使用人四名……あの時レウスと路地裏で戦った他の四人の女達も集まって来た。

 そしてソランジュの顔を見た途端、何がどうなっているのか分からないと態度と顔にハッキリ表れる。

 一方のレウスはそれに構わず、まずはこの事実確認から始める。


「まず聞きたいんだが、このソランジュとお前達は既に縁が切れたって言ってたよな?」

「え、ええ……」

「でも、ソランジュは逃げ出すのに一回失敗して連れ戻されて、それからもう一度脱走を試みてもう一度脱走したって言ってたけど、それで完全に縁が切れたって言って良いのか?」


 そう問われた使用人達は顔を見合わせ、一斉にソランジュの方を向いて怪訝そうな顔をする。

 そして最初に口を開いたのは弓使いの女だった。


「ああ、縁が切れたって言うのはご主人様がこう言っていたからよ。「もっと私好みの女を見つけたから、あいつはもう用済み」だって」

「そうそう。それでその話を伝えに行ったんだけど、何を勘違いしたのかソランジュが訳の分からない事を喚き散らして抵抗したから、てっきり錯乱状態にでもなったのかと思ってね。だからそのソランジュと縁が切れたって言ったの」

「あ、そうだったのか……」

「まあ、貴方も災難よね。こんな事に巻き込まれてるんだから……」


 ロングソードの女とバトルアックス使いの女のセリフも一緒に聞き、言葉足らずが思わぬ誤解を招くというのを身をもって知ったレウス。

 しかし、ソランジュへの怒りは収まらないので頭を思いっ切り引っ叩いておく。


「痛っ!」

「ったく、あそこでお前がギャーギャー喚かなかったら今頃こんな事にはなってないんだよ!」

「す……すまん」

「はあ……もう良いや。それで次なんだが、今ここのご主人様とやらは帝都のランダリルって所に長期の出張に行っていて、そしてその間に赤毛の男女に侵入されたって聞いたけどこれはどうなんだ?」


 自分達のこの先の行動を決めるかも知れないヒントを貰ってここに来た以上、事実確認はしっかりしておかないと危険な展開になる恐れがある。

 特に今から確認するのは赤毛のあの二人関係の話だし、もしかしたらセバクターの行方もついでに分かるかも知れないので、レウスは使用人達の次のセリフを待った。

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