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752.追撃人員と謁見前日

 しかし、それを聞いているクリスピンは冷静な態度である。


「こちらでもそれについては把握している。君達が追い掛けているシンベリ盗賊団はかなり厄介な存在らしいからな。既にこの国にある全ての国境に検問を張って封鎖してあるから心配するな」


 それでもレウスの不安は尽きない。


「それが……そうも行かないかと思うぞ」

「何故だ?」

「あの連中はかなり厄介な存在だとはそっちでも認識しているらしいが、奴等はワイバーンだって使うし、そもそも変装だってするかも知れない。それから尻尾を掴ませない為の工作だってしているかも知れない。だから甘くみちゃいけない!」

「ああ。それはこっちも承知の上だ。それよりも確か君は、今の時代ではレウスと名乗っているらしいが本当は五百年前の勇者アークトゥルスの生まれ変わりらしいな。大公から話は聞いているから、早速明日謁見の機会を設けた」

「えっ、もう?」


 来たばっかりでトラブルに巻き込まれた自分達を、そんなに素直に謁見させてくれるのかと驚くレウス。

 しかし思い返してみれば、今までの旅の中でこうして国のトップに入国後すぐに謁見出来たのは一度や二度では無い。

 このルリスウェン公国に来る前のエレデラム公国でだって、入国して都のバルナルドに辿り着いてすぐに大公のラグリスに謁見が出来たのだから……と、今更驚く事でも無いよなと思い返すレウス。


「ああ。私はそのシンベリ盗賊団の、逃げて行ったとされるリーダーのウルリーカを追い掛ける様にと大公から指示が出されているので同席は出来ないが、くれぐれも失礼の無い様にな」

「それはそうなんだが……そんなにすぐに出来るんだったら今日じゃ駄目だったのか?」


 昨日も今日も違いは別に無いだろうと考えるレウスだが、どうやらこのスケジュールはレウス達の事を気遣ってくれての決定だったらしい。


「今日は盗賊団絡みで君達も疲れているだろうからな。だから明日にさせて貰った。私は明日の朝に謁見の間々まで君達を案内した後に、そのまますぐウルリーカを追撃する」

「俺達も一緒に行かなくて良いのか?」

「ああ。君達はこの城の中に居てくれ。土地勘が無い場所だろうし、この国に掛かっている霧が濃いのは君達も知っているだろうから、むやみに動くと危険だろうからな」


 確かにここはクリスピンの言う通りだろうな、と考えるレウス。

 五百年前から存在している場所とは言え、現代では町の様子も場所も変わっている筈なので、ここは地の利があるクリスピン達に任せる事に決めた。

 そして一行は、翌日に控えている謁見の前にその謁見相手の情報を取り纏めておく。


「ジーク・アルフレッド。ルリスウェン公国の現在の大公だ」

「五十二歳って事はかなりの良い歳ね。でも、この濃い霧の中で国を治める上で国土に関してはとにかく徹底的に政策を進めているのよ」


 この国に来た事が無いマウデル騎士学院の三人に対して、まずはソランジュとサイカからこのジークと言う人物がどんな政策を進めているのかを知る事が出来た。

 霧のせいでワイバーンでやって来るのもかなり怖かったこのルリスウェン公国では、工学に秀でている故にその霧に対しての対策がかなり進められている。

 例えばまず、霧をしっかりと見通せる小型の携帯ランプを開発したのである。

 それはスイッチ一つで点けたり消したり出来る、魔力を動力源とする優れものの携帯ランプ。なのでいちいち火をつけて進む必要が無く、しかも長持ちする様に改良が重ねられているのだと言う。

 それからそのランプの発展形として、夜の街道でも比較的明るく道を照らしてくれる街灯も開発された。

 リーフォセリアでも町の中には街灯があるのだが、このルリスウェン公国では魔物に倒されない様に、そして簡単に壊されない様に強化された特殊素材の街灯を立てているので、夜でも安心して旅が出来ると人気になった。


「ええっと……それでも霧の濃い日にはなるべく街の外に出ない様にと大公自らが都の住民に注意を促したり、定期的に風の魔術を使って霧を吹き飛ばしたりする魔術師達のチームを編成したりしている様ですが、やはり自然の力にはなかなか敵わない様ですね」

「まあ、でも仕方無いわよ。人間も獣人も魔物も、自然の力の前には無力だって思い知らされる時が沢山あるんだから」


 大公の尽力を伝えるティーナの横で、ドリスが何かを悟った様な声色で呟いた。

 そしてアニータとコルネールとアーシアからはこんな情報も。


「大公自身は二刀流の使い手だ。何でも、昔は霧の中を縦横無尽に駆け回って魔物を討伐していたらしいぞ」

「あー、それは俺も聞いた事があるぜ。そのおかげでイーディクトのシャロット陛下とはお互いに親近感を持ってるらしいって」

「そうね。しかも工学知識に関しても臣下達に任せるだけではなくて、自分でも勉強して取り入れているらしいわね。後は魔術も使えるから、どうにかして国民の生活を今以上に良くしようと考えていらっしゃる、まさに国民思いの大公よ」


 そんな大公が何故、ライオネルの手記を持っているのか?

 それはこの翌日、レウス達が大公のジーク本人に謁見して分かった事である。

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