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750.風の騎士

 この二人がカシュラーゼ側についてしまった以上、段々と疑心暗鬼になってもおかしくないメンバー達だが、少なくとも今までの旅路の中で自分に着いて来てくれた女達は裏切っていないとレウスは思う。

 しかし、それも何時どうなるかが分からない。

 少なくとも、自分達がさっさとここからどうにかして抜け出してから対策を考えるか、この連中をここで一掃するかのどちらかしか道が残されていない。


(くそっ、まさかルリスウェン公国の大公に会う前にこんな事になるとは……)


 レウスとしてはここで一掃してしまった方が良い。これから大公に会うのに敵がウジャウジャ居る状況では落ち着いて謁見も出来ないからだ。

 だがここで何とレウス達は、ウルリーカにシャムシールを突きつけられた上で自分の魔術を封じられてしまう薬を投与されてしまった。

 魔術防壁を展開していたのも、物理的に攻撃されたのでは無くて直に身体に触られて注射器で薬を投与されてしまったから完全に駄目になってしまったのである。


(くそっ、魔術防壁はある程度の衝撃を物理攻撃とみなして防いでくれるから、普通に触られるのまでは止められない……!!)


 多人数で羽交い絞めにされて武器も魔術も使えない様にされてしまい、グルグル巻きでロープで縛られた上でまずは取り引きをじっくりと見せられる事になってしまった。


「さってと、それじゃ取り引きの続きと行くわよ」

「なぁ、ところで主要取り引き先の国って何処になるんだ?」

「ん~、まだ特に決めていないけど国を問わず何処でも売れると思うわ。とりあえずあなた達は取り引きが成立した武器がそっちにあるから、それの梱包作業を手伝ってよ。それからこの連中の見張りと、殺した後の処分先も考えておいてね」

「はい」


 このままではまずい。どうにかしてまずはこのロープを切らなければ。

 そう考えるレウスなのだが、そのレウスを始めパーティーメンバー達はしっかりと見張られているので少しでも動いてロープを解こうとすれば、即座に見張りの男女から蹴りが入ったり武器を突きつけられたりする。

 まさに身動きが取れない状態で取り引きが進められるこの状況なのだが、その状況を一変させる出来事が次の瞬間に起こった。

 レウス達の視界から見えない所で、いきなりパリーンと窓ガラスが割れる音がしたのだ。


「っ!?」


 その音に驚くウルリーカの目の前に、一つの大きめの黒い石が飛んで来た。

 そしてその石から次の瞬間、ピンク色の煙が噴き出して倉庫の中に充満する。


「ぶほっ、な……何よこれぇ!?」

「ふふふ……掛かったな。おいあんた等、一気に制圧だ!!」

「えっ!?」


 レウス達もその煙に包まれると同時に、喉や頭が痛くなり始める。

 どうやら催涙煙を発するのがさっきの石だった様だが、それよりも更に驚くべき事が倉庫の中で巻き起こり始めた。


「大丈夫? 今これを解くからね」

「ちょ、ちょっとアーシア!?」

「何だ? 一体何がどうなっている……げはっ、ごほっ!」


 バタバタと慌ただしく動き回る複数人の足音。ガチャガチャと金属音も聞こえる事から武装している集団が慌ただしく動き回っているのが分かるが、それと同時に怒声も聞こえ始める。


「なっ、ルリスウェン公国騎士団!?」

「そっちに逃げたぞ、捕まえろ!!」

「おい、一人も逃がすなよ!!」


 更に自分達をコルネールとともに裏切ったアーシアが、何故か自分達を縛っているロープを解き始めたので、レウス達はますます状況が理解出来ない。

 何がどうしてこうなっているんだとさっぱり分からないレウス達だったが、その時この倉庫の中ではルリスウェン公国騎士団が大捕り物を繰り広げていたのだ。

 そしてその公国騎士団を率いていたのは、エルザが以前目にしたと言う「あの男」だった。


「ふっ、はっ!!」

「ぐわあああっ!!」

「うがっ!」


 最小限の動きから流れる様にロングソードを振るい、敵をスムーズに倒して行く。

 時には蹴り技や投げ技と言った体術も駆使し、自分の自慢の部下達とともに倉庫内を制圧してしまったのだった。


「捕らえた奴は全員すぐに城へと運べ。それからこの煙で負傷している人間達が居る。その者達は応急処置の後に同じく城へと運ぶんだ!」

「はっ!」


 煙の中から口を布で覆って煙をなるべく吸い込まない様にしながら現われたのは、若干背が高くて若い黒髪の男。

 黒の武具に金色の縁取りを施しており、茶色の短めのマントを羽織っているその姿こそ「風の騎士」の異名を持つこのルリスウェン公国の騎士団長、クリスピン・オムスだった。

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