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748.見覚えのある人

「さってと、飯を食ったらどうにかしてこの国の大公に会いに行かないとな」

「そうだな。そもそもお主の昔の知り合いであるライオネルの手記が、どうしてこの国の大公の手の中にあるのかが分からないが……それも実際に本人と会ってみれば分かるだろうな」


 酒場でそれぞれテーブルを分けて座りながら食べる一行。

 この時間帯はそれなりに混雑しており、食べるのも人数を分けて別々のテーブルに座らなければ無理だった。

 なので自分と一緒に座っているソランジュからそう言われて、レウスもそうだなと納得する。

 この国のトレードカラーである黄色を基調とした酒場の中でそう決めたレウスだったが、ちょっと早めの昼食を終えて店の外に出た時に、ふと気になる人影を見つけた。


「……!?」

「どうした?」

「いや、今……見覚えのある人が居た様な気がするんだよ」

「えっ、誰?」


 エルザとアレットから気に掛けられるレウスがそう返すと、当然その二人もその人とやらが気になる。


「貴様が見たのはどんな人物だった?」

「いや、そこまで詳しく見ていないし一瞬すれ違っただけだからハッキリとは分からないけど、それでも凄いインパクトのある姿だったからもう一度見ればあいつだって分かる」

「そうなの? どっちに行ったの?」

「すれ違ったから……俺が見ていた方向と反対側だな。つまりあっちの方だ」


 レウスが指を差した方向には往来を歩いている多数の人間や獣人の姿、それから大きな荷物を引いている馬車の姿もある。

 なので既にこの人混みの中に消えてしまったであろう人物を探し出すのは、到底無理な話だろうと諦める事にした。


「とは言ってもこの人混みじゃあな……」

「そうだな。とりあえず貴様が見たと言うその人物の話は一旦忘れて、大公に会う為にこのペルドロッグの城に向かおう」

「そうね。その人とはまた何処かで会えるかも知れないし」


 人の出会いは一瞬。その後の関係は長く続く事もあれば、ただのすれ違いで終わるだけのものもある。

 今回はどうやらただのすれ違いだった様だが、そう考えていたのはレウスの方だけだったらしい。

 何故なら、大公に会う為にヴァニール城へ向かってこのペルドロッグのメインストリートを歩いていた時に、レウスが再びさっきすれ違った「凄いインパクトのある姿」の人物を見掛けたからだ。


「っ!?」

「今度は何だ?」

「居た……あいつだ!!」

「えっ!?」


 そう言いながらいきなり早足で歩き出したレウスに続き、他のメンバー達も後を追い掛け始める。

 エレデラム公国で、あの黒いフードを被ったメイベルを見つけてアーシアが追いかけ始めた時と全く一緒のシチュエーションでレウスが先頭に立つ。

 あの黒い長髪に、特徴のある形をしていて露出度が若干高めの防具、そして女の体型でレウスは確信した。


(間違い無い……あいつだ。あいつがここに来ているんだ!!)


 そのまま追い掛けていたレウスが少しスピードダウンして、裏通りへと入る所で自分を追い掛けて来ていたパーティーメンバー達の方を振り向く。


「良し、ここからは足音をなるべく立てずにゆっくりと進むぞ。今まではこの人混みだったから大勢で尾行していてもバレなかったが、ここから先は見ての通り裏路地だからな。気を引き締めて行くぞ!」

「でも……誰を見つけたのよ?」

「シンベリ盗賊団のリーダー、ウルリーカだ!」


 アーシアの質問にレウスがそう答えれば、メンバーの中にざわめきが広がる。


「ええっ? だってあの女は確か、エレデラム公国のオーレミー城を襲撃したんじゃあ……」

「俺だってそう思ってるさ。だけどあの女の防具は特徴的だ。その防具を着けた奴がここに入って行ったんだから、とにかくさっさと追い掛けるぞ!」


 追い払われたばかりの彼女が、何故こんな所に居るのか?

 そんな疑問を呈するサイカにそう答え、レウスはメンバーに注意して進む様に周知してから路地裏に向かって歩き出す。

 知らない国の知らない街の、知らない路地裏。探査魔術を自分に掛けるのと、防壁魔術を全員に掛けるのは忘れずに。


「周りに人の気配は無いが、この路地はとにかく入り組んでいるな。おまけに霧も掛かっているから進んでいて怖い……」

「先に行った人はまだ見えているの?」

「ああ。ボーッとだがまだ見えている。それに探査魔術で位置は把握出来ている」


 万が一見失っても大丈夫な様に、探査魔術を掛けていたのが役に立っている。

 自分の判断に自画自賛しながらレウスが進んで行くと、やがてその人物は路地の奥にある大きな倉庫の前に辿り着いた。


「こんな所に倉庫が……」

「しかも見張りまで立っている。怪しいな」


 正確には路地裏の奥では無く、人気の無い場所に建てられた倉庫がある場所まで路地裏を通って抜けて来ただけの話である。

 しかし、その倉庫の裏口にも厳重に武装している人間が二人立っているのを見ると、確実に怪しいとしか思えない。

 そしてアレットが望遠鏡を取り出して偵察して気がついてしまった。

 倉庫の裏口の窓の奥に見えるのが、怪しげな取り引きをしている連中だと言うのを。そしてそれが、まさに新開発兵器の取り引きだったと言う事を。

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