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747.噂の真偽

 世の中には常識の枠をブチ破る天才が居ると聞くのだが、もしかしたらそのクリスピンもそうなのかも知れない。

 ラニサヴは努力で成り上がったタイプなのだが、彼は小さい頃からの英才教育で道を進んだエリートなので、また話が変わって来るだろう。

 いずれにしても実際にルリスウェン公国に行ってみないと分からないので、レウス達はワイバーンで北へと向かった。

 しかしコルネールからもたらされた事前情報と、レウス自身が覚えていた五百年前の記憶通り、エレデラム公国から北に向かって進んで行くと段々と霧が濃くなって来た。


「見えたぞ、あれがルリスウェン公国だ」


 別に雨が降っている訳でも無いのに、この視界の利かなさは異常である。

 ワイバーンに乗り慣れているヒルトン姉妹でも、霧の中を飛び続けるのはまさに自殺行為だと言う。


「うわっ、前が全然見えないんだけど?」

「まさに白い悪魔って感じよね。だけどこの霧の中を自由に飛び回れてこそ、ワイバーン乗りとしては一流って言われているのよ」

「それって何処の情報なのよ……?」

「自分の情報」


 何よそれ……とドリスの回答にアレットが呆れている間にも、霧はどんどん濃くなって行く。

 とりあえずお互いに離れない様にワイバーンをコントロールし、ようやく都のペルドロッグへと辿り着いた。

 朝に出発して昼前に辿り着いたので、まずは腹ごしらえをするべく何処かの酒場にでも入ろうかと思った一行だったが、それよりも先に確かめなければならない事があった。


「なぁ、この国でハンドガンって売られているのか?」

「いや……ハンドガンは聞いた事が無いわね。私とコルネールもサィードの所に行って、そこで初めてその存在を知った位だし……」

「そうか。でも腹ごしらえをする前にちょっと武器屋を見てみないか? もしかしたら何か分かるかも知れないからな」


 コルネールの言う通り、ただの噂でしか無いのだったら良い。

 しかしその噂がもし本当だった場合、間接的にではあるがレウス達は全員エスヴァリーク帝国でルリスウェン公国に殺され掛けたと言う話になってしまう。

 その真偽を確かめるべく、まずはこのペルドロッグの武器屋を見てみる。


「うわあ……見た事も無い素材で武器が作られているのね」

「しかも値段もリーズナブルだ。これってお主が使っているシャムシールとか私が使っているロングソードとかよりも、高性能で使い勝手が良さそうだな」


 アレットとエルザは驚きを隠せない。

 白い霧の中を抜けた先には、自分達の生まれ育ったリーフォセリア王国よりも高性能な武器や防具が売られていたのだから。

 それを横で見ていたアニータが、心底不思議そうな表情で二人に尋ねる。


「貴女達……リーフォセリアから出た事って無かったの?」

「旅行で出た事はあるけど、こっちの方には霧が濃いから危険だって事で近づけなかったのよね」

「私もそうだ。旅行で行った所と言えば東隣のソルイールだけなんだが、そこもあの皇帝が仕切っているから帝都の方まで近づく訳には行かなくてな。だから今まで地元を出た事が無かったんだ」

「騎士団では遠征訓練はしなかったのかしら?」

「それはしていたさ。ただし国内限定でだ。そもそも騎士団に入ってから国外遠征をするのであって、騎士学院のカリキュラムでは国内しか遠征が認められていない。学生にそこまで無茶をさせる訳には行かないからな」

「まぁ、それは分かるけど……でも国内限定だったのに騎士団に入っていきなり国外に行かされる事になったら、それはそれで大変そうね」


 しかもリーフォセリア騎士団は世界中で戦う事はあるにはあるのだが、どちらかと言えば自国の防衛をする軍隊として知られている。

 これはリーフォセリアに限った話では無くて他の国でも似た様な話なのだが、たまに他国との合同訓練を使用と言う話を持ち掛けられる事がある。

 隣国同士が仲が良い場合はその回数が自然と多くなるのだが、このルリスウェン公国とリーフォセリアの関係もそれはに当てはまるのだ。


「でもこちらの方から遠征に向かう話は滅多に無くて、何時もこのルリスウェン公国の方からわざわざ霧の中を抜けて遠征に来てくれていたんだ」

「それに、このルリスウェン公国の方がリーフォセリアよりも国土が小さいって事もあって、なるべく広い場所で遠征訓練を行ないたいって希望もあったらしいのよ」

「なるほどね。それだったらまぁ……納得は出来るか」


 マウデル騎士学院の二人とアニータがそんな会話をしている一方で、レウスを始めとする残りのメンバーは武器屋の中を一通り見終わっていた。

 しかし、結果からすると武器屋にはそんな新開発兵器は売られていなかったのだ。


「素材とかはなかなかの者みたいだが、ハンドガンは売っていないみたいだな。やっぱり噂だけなんじゃないのか?」

「うーん、このラインナップからするとそうだよなぁ……」


 共同開発なんてものは本当にただの噂だったらしい。

 結果的にそんな危ない物がこの国で生産されていなくて良かったと思うレウスだが、生産はされていなくても取り引きはされている様だった。

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