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746.ルリスウェン公国と言う国

 結局、ルリスウェン公国に向かうまでにラニサヴとは気まずい雰囲気のままで終わってしまったレウス達は、ブスッとしている彼を含めたエレデラム公国の面々に見送られてルリスウェン公国を目指し始めた。


「ルリスウェン公国ってのは確かリーフォセリアの南だったよな。確か地図で見る限りでは五百年前は深い霧に包まれていて、全体的に曇りや雨の日が多かった国だと思うけど、今はどうなっているんだ?」


 今まで他の国に向かう前に話を聞いて来たレウスが、違う聞き方をして来たので驚く他のメンバー達。

 その中で、実際にリーフォセリアにもルリスウェン公国にも行った事があるコルネールとアーシアが説明してくれた。


「気候はあんたが勇者として暮らしていた時代と変わっちゃいねえよ。でもこのエレデラム公国とはちょっと違って、工学に秀でた国なんだよなあ」

「工学……?」

「そう、工学さ。工学に秀でている為に新たな兵器の開発に余念が無えんだよ」


 それを聞き、彼の相棒であるアーシアが補足説明をする。


「まあ、それ故に敵対関係の国からは目をつけられているのは確かよね。主要な国とはそれなりに友好関係を保っているみたいだけど、小さな国々とはいざこざが絶えないみたい」

「しかも、一説によれば工学知識と技術を駆使して……ええと何だっけ、前に言っていたあの……ハンドガンだっけか。あれの開発にも裏から手を回していたとかって噂もあんだよな」

「えっ、あれってカシュラーゼのディルクが開発したって話を何処かで聞いた覚えがあるんだが……」


 コルネールの話に驚きを隠せないレウス達。

 カシュラーゼが開発して、あのユフリー等が使っていたのはまだ記憶にあるし、そもそもあれだって、エスヴァリークのセバクターの屋敷で自分達のほぼ全員が襲撃された状況だった。

 あんな危険な物を、まさかカシュラーゼと一緒に開発していたなんて……と頭がクラクラしそうになるレウスだが、まだ噂の域を出ていないので断定は出来ない。


「まー、それもまだ噂でしか無えから頭の片隅にでも置いとけよ。で……そのルリスウェン公国は月の弓と呼ばれる熱血な大公が治めていてさ。それこそあんた達の軍事に秀でた隣国のリーフォセリア王国とは友好的な関係だろ?」

「ああ、それはエドガー叔父さんやギルベルト騎士団長からも聞いているよ。度々軍事演習も一緒に行なっているしな」


 実際、エルザは二カ国合同の軍事演習を見学させて貰った事もある。

 リーフォセリアとそうした繋がりがあるおかげで、何かと軍事力には困らないのがルリスウェン公国なのだが、中でも彼女が目を付けた人物が居るらしい。


「これは個人的な話なんだが、二年前に軍事演習を行なった時にルリスウェン公国の方から遠征に来た騎士団の中で、実戦演習を行なった時に飛び切り動きの良い騎士団員が居たんだ」

「へえ、そうなんだ。それって名前とか分かるのか?」

「勿論だ。確か、彼の名前はクリスピンと言ったな」


 昔を懐かしむエルザだが、その名前を聞いたサイカとティーナが反応を見せる。


「えっ、それってもしかして公国騎士団長のクリスピンって人じゃないの?」

「恐らくそうですわね。騎士団長が確かクリスピンと言う名前だって話を聞いた事がありますわ」

「知っているのか?」


 エルザが食い付いて来たので、クリスピンと言う人物について知っている彼女達二人は話を更に進める。


「うん。色々な所で有名になっているわよ。霧の中からまるで幽霊の様に突然現われて、そして一瞬で獲物を仕留めて去って行く、まるで風の様な人物だってね」

「私も気になってちょっと調べたんですけど、彼の武勇は国内外に知れ渡っているみたいですね。生真面目で堅物な性格ですが、その性格から努力を惜しまずして若くして公国騎士団の団長にまで上り詰めた、エリートの方ですわ」

「確かねえ……元々は大貴族の出身だって話だったわね。同じく騎士団に所属していた父親から武芸や戦術等を徹底的に叩き込まれて来た、サラブレッドって存在ね」


 騎士団員として活躍する為に生まれて来た様な男。それがクリスピンらしい。

 エルザが彼の姿を初めて見た二年前は、まだ一般の騎士団員にしか過ぎなかった。しかしその一年後には副騎士団長に昇進し、更に一年経って騎士団長へと昇進すると言う、ルリスウェン公国騎士団史上最年少での騎士団長が誕生したのだ。

 普段はオーソドックスなロングソードを使うが、槍や各種バトルアックス、弓等の一通りの武器の扱いは習得済みであり、事実その実力を演習の際にも遺憾無く発揮していたのはエルザも記憶に新しいらしい。


「それから武芸の腕のみならず、馬術や体術も騎士団長の座に就くだけの技量を有しているって話よ。そりゃあお父さんからねえ……騎士団に入る為に徹底的にそうした教育を受けていたら、まあそれだけの実力があっても良いとは思うけど……」

「けど、何だ?」

「いや、それがさぁ……このエレデラム公国の騎士団長もそうだったけど、余りにも若過ぎないかなって思ってね」

「それは私も思いますわ。年齢的にはもっと上じゃないと何だか納得出来ないんですよね」


 実力があるのは確かなのだろうが、年齢がやっぱり若過ぎる。

 事実、クリスピンはまだ二十一歳らしいので年齢的にはこのエレデラム公国の騎士団長ラニサヴと良い勝負である。

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