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743.いけ好かねえんだよ!!

 まだドリスがルルトゼルの村の村長のボルドと連絡を取り合っている頃、ラニサヴに連れられてこの人気の無い訓練場までやって来たレウスとサイカ。

 しかも、その騎士団長の表情は何だか怒り心頭の様子だった。


「……一体どう言うつもりだ? こんな場所に連れて来たって事は、まさか俺と戦いたいって話じゃないだろうな?」

「そのまさかだ」

「おいおい、そりゃまた突然だな。そもそも俺達はこんな事をやっている場合じゃないだろう。特に騎士団長のあんたは部下を指揮して、オーレミー城の復興作業に当たるべきなんじゃないのか?」

「そうよ。二人が何処かに行くのが見えたからこうやって私も着いて来たけど、一体どう言うつもりなのよ?」


 しかし、ラニサヴは全くもって意味の分からない理由を口に出し始めた。


「俺はお前が好きじゃないんだ。気に食わないんだ。いけ好かねえんだよ!!」

「ちょ……ちょっと待ってくれ。いきなりどうした?」

「どうしたもこうしたもあるか!! いきなりこの国にやって来てでかい顔して俺の部下を指揮して、本当に目障りな奴だぜ!!」

「いや、あのー……意味が分からないんだがな」

「うるさい! こうなったらどっちが強いか決闘で白黒つけてやるんだよ!!」


 話がまるで呑み込めない。この男が何を言っているのかがさっぱり分からない。

 しかしこうなってしまった以上、付き合うまで帰してくれない様である。


「……とりあえずやってあげれば?」

「そうするか。何の理由で俺にそうやって楯突くのかが分からないが、やりたいなら一度だけ付き合ってやる」


 こうしてレウスとラニサヴがそれぞれ向かい合う形になり、審判は二人に着いて来たサイカが担当する。


「手合わせと言えば手合わせだが、そっちも本気で来いよ?」

「ほう? なら遠慮は要らないと言う事だな」


 挑発的なレウスの発言に、ラニサヴは口元に薄く笑みを浮かべつつ腰の二振りのサーベルを抜いた。

 対するレウスはしなやかなポーズで槍を構え、両者の間に緊迫した空気が流れる。


「では、始めっ!!」


 サイカの合図と共に、まずはラニサヴがサーベルを振り被ってレウスに向かう。

 レウスはそんなラニサヴに対して、槍を振り回してラニサヴの斬撃を避ける。

 だが怒りに任せたラニサヴの、予想出来ないサーベルの軌道が何とレウスの槍を弾き飛ばしてしまった。


「うおっ!?」

「貰ったあああああっ!!」


 チャンスとばかりに手数の多さを利用して、一気に勝負を決めようとするラニサヴ。

 しかしレウスはそのまま臆せずに間合いを詰めて行き、今度は右手にエネルギーボールを生み出してそれを投げ付けて、一瞬ラニサヴの動きを止める事に成功した。


「うっ!?」

「はっ!」


 その隙に一気にラニサヴの懐へと飛び込むレウス。

 こうなれば幾らリーチの差があったとしても、サーベルなら取り回しが利き難くなるので必ずしも手数の多い武器が有利とは言えなくなる。


「くっ! ほっ!」


 ラニサヴが懸命にサーベルを振り回して来るが、それを間一髪で回避しまくる。

 そして勢い余ったラニサヴがサーベルを空振りして、自分に背を向けた所で後ろからギュッと羽交い絞めにするレウス。


「ぐ、ぐぐ……!!」

「おらあああ!」


 絶対に離すまいと力を込めるレウスだが、ラニサヴは渾身の力を込めてその拘束を振りほどいて再びサーベルを振るう。

 だが、それはまたレウスの両手にギリギリでブロックされる。

 そして左腕でラニサヴのサーベルを持つ右手首を掴み、右の二の腕でラニサヴの首を押さえ付けて前へと押し込んで行く。


「ぬうおおおおお!!」


 ザザザザと二人の両足が土の地面の上を滑って行くが、ラニサヴも踏ん張ってその勢いを止めようとする。

 だが勢いが付き過ぎたレウスにそのまま押し倒され、マウントポジションを取られてしまった。

 しかもその勢いで、左手に持っていたもう一本のサーベルが吹っ飛んでしまったのだ。


「らぁ、おら、うらあ!!」


 サーベルを持っているラニサヴの右手を左手で押さえ付けつつ、マウントポジションから右手で何度もラニサヴを殴りつける。

 手がかなり痛くなるが、それでも今まで人を殴って来た事は何回もあるので、これ位の事は全然我慢出来るレウスは痛みを我慢して殴り続ける。

 しかしラニサヴもやられっ放しでは無く、レウスの右手を空いている左手で受け止めて力任せに逆にマウントポジションを取ろうとする。


「ぬぐううう!!」


 ラニサヴは起き上がって来るので、レウスは力を振り絞って何とか自分とラニサヴ二人が、上手いポジションで立ち上がる方向に試合の展開を持って行く。

 今度はそのままラニサヴの首を両腕で抱え込み、力任せの接近戦に持ち込んで行く。

 肘を支点にラニサヴの首を押さえ込み、思いっ切りラニサヴの腹に右膝を叩き込む。


「ぐっ……?」


 鍛えて引き締まっている体格もあり、ラニサヴは余り痛みを感じていない様である。

 だがそんな事はお構い無しに何度も何度も交互に両膝を叩き付ければ、最初こそ余り痛みを感じていなくても段々とラニサヴの顔が苦痛に歪んで行く。


「あが、おがぁ!?」


 レウスはそこから更に十発膝を叩き込み、首を押さえたまま飛び上がって両膝を揃えた状態で思いっ切りラニサヴの腹をど突く。

 そこから今度は一旦ラニサヴの身体を突き飛ばし、腹への衝撃から立ち直り切れていないラニサヴの胸目掛けて全力のドロップキック。


「がはぁ!」


 倒れ込んだラニサヴは胸を抑えて悶絶するも、そこに立ち上がったレウスは追い討ちの連続ミドルキックを五発ラニサヴの脇腹に入れる。


「ぐぅ……」


 胸と脇腹を片手ずつそれぞれで押さえてうめくラニサヴは仰向けになり、それをチャンスと見たレウスは最後に思いっ切り足のバネを使ってジャンプ。

 そこから今度は両膝を抱えて、空中からその膝をラニサヴの腹に落とす。


「ぐふっ……」

「そこまでっ!!」


 その衝撃で試合続行不可能と判断されてサイカから試合終了の声が掛かる。

 まだ倒れているラニサヴを見下ろし、レウスはホッと息を吐いてそんな騎士団長を見下ろした。

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