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741.保管場所について

 そんなやり取りがありつつも、このエレデラム公国の北の隣国でありリーフォセリアの南の隣国でもあるルリスウェン公国へと向かい始める一行。

 しかしその前に、床の裏から出て来たあのエヴィル・ワンの身体の欠片をどうするかが問題だった。


「そもそもライオネルってのは、こんなでっかいのを良くワイバーンで運べたものだな?」

「そうよね。これを運ぶのはワイバーンにとってもきついわよ」


 ソランジュとドリスが身体の欠片を見て、率直な感想を漏らした。

 防臭処理はきちんとされているらしく、あの謁見の間に居ても全然臭いがしなかったし今こうして目の前で身体の欠片を眺めていても平気である。

 しかし、これを本当にワイバーンを使って運んでいたのかと思うと「頑張ったよなー」以外の感想は出て来そうに無かった。

 その身体の欠片をしげしげと眺めていた二人の横にやって来たのが、ドリスの姉であるティーナだった。


「しかし、この場所にこんな物があるのが分かってしまった以上は、少なくとも何処か別の場所に移動した方が良い気がしますわ」

「うーん……いや、別に移動しなくても良いんじゃないか?」


 だって今までもここにずっと隠して来ていたんだし……と考えるソランジュだが、ティーナは別の危険性を訴える。


「確かにそれはあります。しかし今、この城の中はあのシンベリ盗賊団らしき武装集団に襲撃されたばかりでてんやわんやの状態なのですわ。となると、このオーレミー城の中も決して安全とは言い切れないと思いますが」

「それも一理あると言えばあるけど、でも何処に移動するの?」


 このエレデラム公国はそれなりに広い領土を持っているので、保管場所を造ろうと思えば幾らでも造れる筈。

 それに「幸運の国」なのできちんと保管さえしていれば、その幸運がきっと味方してくれるんじゃないかと考えているソランジュとドリスにそう聞かれたティーナは、その話を大公のラグリスに相談してみる事に決めた。


「ふうむ、まぁ……でもやらなくても良いと思うのだがな」

「やっぱりそうですよね。ほら姉様、ここは普通にこのままで良いわよ!」

「……そう、ね」


 その相談はすぐに済んでしまった。

 やっぱりこうして床の裏に収納をしていた事で、今までずーっと平穏を保って来ていたのでこれからもそうしようと決めるラグリスの決定には、流石に一国の大公が決める話なので三人もこれ以上口を出す訳には行かなかった。

 それよりもラグリスが気になるのは、やっぱりあのドラゴンである。


「しかし……本当にあのドラゴンは何だったのだろうな?」

「ああ、例の突然現われたとおっしゃっていた……」

「そうだ。幾らこの国が幸運の国だと言っても、まさかこのオーレミー場を襲撃して来た武装集団に対してドラゴンが加勢してくれるとは夢にも思っていなかったからな」


 突然空の彼方から姿を見せたかと思えば、オーレミー城を守ってくれた不思議なドラゴン。

 ラグリスにとっては本当に不思議な出来事であったらしい。

 その現場に居合わせていなかったレウス達にとっては何が何やらさっぱりなのだが、少なくとも今の段階ではそのドラゴンは敵では無いみたいだし、カシュラーゼの開発した生物兵器のドラゴンとも何の関係も無いらしい。


「でも、結果的にはこうしてエヴィル・ワンの身体の欠片も無事だったんですし、後はこの場所に保管する事にしておけば大丈夫だと思いますよ」

「そうだな。まあ、絶対に安全な場所があれば私としてもそこに移動する事を考えているのだが、この国が幸運の国と言っても絶対と言うのはありえないからな……」


 幸運の国の大公なのに、ソランジュの発言に対して何だかネガティブな発言をするラグリス。

 その話を聞いていたドリスが、ふとある事を思い出した。


「あ……それだったら一つ良い場所がありますよ」

「本当か?」

「ええ、ルルトゼルの村です。ここに来た時に色々と事情聴取をされて、その過程で少し話したと思うんですけど……」


 ドリスが提案したのはルルトゼルの村。

 かつて人間としてあの村に自由に出入りする事が許されたライオネルと同様に、自分達もまたルルトゼルの村に入る事が許されている。

 これは今までのルルトゼルの村での掟や歴史を考えるとまさに前代未聞の出来事であるのだが、そのルルトゼルの村に連絡を取るのは何も口から出任せと言うものでは無かった。


「私達には信頼出来る預け先があるんです。ですからそこに連絡を取ってみましょう」

「本当に信頼して良いのか?」

「勿論です。もしそこに預けたこのエヴィル・ワンの身体の欠片が誰かに取られてしまったとしたら、その時は私達を殺してくれたって構いません」

「お、おい……」


 物騒な条件を提示するドリスに対して、流石にソランジュも止めに掛かる。

 しかし、ドリスはそれでもこの条件で通すつもりだった。


「だって考えてもみてよソランジュ。あのルルトゼルの村は元々人間を寄せ付けない様にする為に、やり過ぎって思える位のセキュリティがあったのよ?」

「まあ、それはそうだが……」

「それにあそこもここも襲撃されているけど、それを考えたらあそこだって復興しなきゃならないし、その過程で保管場所だって造れると思う。襲撃を受けた範囲があそこの方が広いし、それを省みてセキュリティだって更に進化させると思うしさ」

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