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740.ラグリスからの情報

『とりあえず、他の場所にもって行くと目立つのでこの場所で一緒にこの身体の欠片と暮らす事にしました。自分達が討伐したドラゴンの身体の欠片と暮らすのはかなり不思議な気分でしたが、物置の片隅に置いておいたらすぐにその存在も忘れました』

「扱いが雑なんだな」

「そうね。で……続きは?」

「続きは……ええと、この地で暮らす様になってから、あのガラハッドが追い掛けて来る噂も無くなったので、この地で人生を終えると。ここまでしか書かれていないな」


 レウスがそこまで言うと、玉座に座ってそれを聞いていたラグリスが口を開いた。


「しかしだ、その後にライオネルはルルトゼルの村に戻ったらしいんだ」

「え?」

「あのライオネルだけはルルトゼルの村に入る事を許された人間だからな。彼の手記に残してあったよ。ライオネルはエレインが病気で亡くなってしまった後、物置小屋にしまっておいたそのエヴィル・ワンの身体の欠片を引っ張り出して人里離れた山の中に埋めて、それからルルトゼルの村に戻って村の発展に力を尽くしたんだって」

「手記? あいつ、手記を残してたんですか?」


 ライオネルはパーティーメンバーの中でもマメな方だったので、確かにそうやって自分の手記を残すのは分からないでも無い。

 だが、その手記をこのラグリスがどうして知っているのだろうか?

 その答えを聞いてみると、ラグリスがとある話を切り出した。


「それなのだがな、私は隣国であるルリスウェン公国の大公にそれを見せて貰ったのだよ」

「ルリスウェン公国って言えば、この国から北の方にある国で、リーフォセリアの隣国って言われている……」

「そう、そのルリスウェン公国だ。何故かルリスウェン公国の大公がそれを持っていたんだよ」

「えっ……何故かってそれは教えて貰ってないんですか?」

「ああ。私も教えて貰おうと思ったんだけど、そこはのらりくらりとかわされてしまってな。しかしその手記は間違い無くライオネルの物だと聞いているから、次にそなた達が目指すのは何処になるのかがこれで分かったんじゃないのか?」


 この話の流れなら、確かに自分達が何処に向かうのかは分かる。

 エレインの足取りはどうやらここまでらしいが、その足取りを引き継ぐ形の様なライオネルの足取りを追い掛けて、一行は早速ルリスウェン公国への出発準備を始める事にした。



 ◇



「アレット、ちょっと良いか?」

「何?」


 準備の最中、アレットを手招きして物陰へと呼び出したレウス。

 彼女についてある報告を受けていたレウスは、一言言っておかなければならない事があったからだ。


「あの……さ、あんまり無茶はしないでくれよな」

「何が?」

「俺、エルザから話を聞いたんだけど……あの湖でフランコの奴が毒の煙を発生させる新開発兵器を使った時に、あいつの元に駆け付けたアレットが突進してフランコを突き落としたって聞いたんだ」


 しかし、それは余りにも無茶な話だったのは間違い無い。

 レウス達を助けたいと言う気持ちはあったのは良く分かるが、それでも後先を考えずに突っ込んでしまったアレット。

 彼女があの時、もし無茶をし過ぎていたらそれこそ彼女まで毒の煙の餌食になっていたのかも知れないし、フランコに返り討ちに遭っていた可能性も否定出来ない。

 この報告を最初にエルザから聞いた時には、自分達を助ける為の行動とは言えども余りにも危険過ぎるとレウスは思ってしまった。


「でも、結果的に助かったんだから良いじゃない」

「確かにそれはそうだ。でも……俺と一緒にリーフォセリアから出発して、最終的にここまで着いて来てくれた仲間達には感謝しているんだ。勿論アレット、お前だってそうだ」

「……うん、それはまぁ……」

「それにこの先、フランコの時よりも大変な事が待っているかも知れない。だから突っ走りがちなお前を見ているのが、正直に言えば心配でハラハラするんだよ」

「……」

「だから俺は、最後までお前が俺の旅に着いて来てくれるつもりなら、正直に言って無茶をして欲しくないんだ」


 だが、アレットはその願いをすぐに聞き入れる事は出来そうに無かった。


「それは半分位しか約束出来ないわ」

「え?」

「無茶をしなければならない時があるのよ、私だってね。あの時は本当に無我夢中だった。自分でもこれは危ないって心の何処かで分かってはいたんだけど、あの紫の煙を出しているあいつを見ると、腹が立って仕方が無かったの」


 そして気が付いたらあの男に向かってワイバーンで突っ込んでいた。

 アレットの言い分はこうなのだが、それでもレウスは彼女の行動については心配である。


「それは感謝したい。俺を……いや、俺達を助けてくれて本当にありがとう。お前の魔術には何度助けられたか分からないんだ」

「うん、だから……」

「だからこそなんだ! 俺はだな……一緒に誘拐された時からずっと、お前を守らなきゃって思ってたんだよ。突っ走るタイプのお前のブレーキ役をしたいってずっと思っていた。それだけなんだよっ!!」

「えっ……あ、えぇ!?」


 レウスにいきなりガバッと抱きしめられ、戸惑うアレット。

 しかし同時に、彼が自分の事を仲間としてどれだけ心配しているのかを感じて何だか嬉しくなったのだった。


 十二章 完

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