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736.やっぱり無理だった

 ドミンゴが、自分の考えた計画についてそれを話してみる。

 その計画の内容をうんうんと聞いていたディルクだったが、その表情は渋いものであった。


「え-っ!? そんなに上手く行くかな、それ?」

「やってみなければ分かりませんよ、ディルク様。それにその条件を持ち掛ければ、こちらの条件を飲まざるを得なくなるかと」

「確かにそれはそうだけどさ……。でも、あのアークトゥルスの生まれ変わりが相手だったらもっと慎重にやらなきゃならないと思うけどねえ」


 何しろ、相手は五百年前の勇者アークトゥルス。

 そして彼の仲間達も、幾多もの戦いを乗り越えている歴戦の猛者へと成長しているからこそ油断ならない相手なのは間違い無い。

 とりあえずこの作戦をベースにして、その神とやらを名乗っているエメラルドグリーンのドラゴンの話をもう少しリサーチしてからあの連中の動きを引き続き調べる事にするディルク。

 だが、彼はまだ次の一手も考えている。


「それはそうとして、この城の話って話したっけ?」

「話ですか? 何のですか?」

「えーっとほら、最先端の防衛システムだよ。これを作動させれば幾らあのアークトゥルスの生まれ変わりが乗り込んで来たって、しっかり撃退出来る筈だからさ」


 この科学力にも自信を持っている国では、監視カメラやハンドガン、エレベーターなどの新しい時代の科学テクノロジーを駆使した設備や道具や武器を生み出して来た。

 しかし、それ以上のかなり大掛かりなシステムを城全体に配置していると言う話をディルクがドミンゴに話し出した。


「それは初耳なのですが……一体どの様な?」

「ふふ、それはね……この城全体を巻き込んだ壮大なセキュリティシステムなんだよ。実はもう設計図もちゃんと描いてあるっていうか、そもそも後少しで完成なんだよ!!」

「え、ええっ!?」


 ちょっと待ってくれ、自分達魔術師には何の連絡もされていないんだが……と戸惑いの色を浮かべるドミンゴに対して、ディルクは謝罪をしながら続ける。


「ふふふ、そこはごめんね。騎士団の団員達にはちゃんと伝えてあるんだけど、魔術師達は僕の研究に付き合って貰ってるからなかなか言い出すチャンスが無くてね」

「そこは私達にもきちんと伝えて下さい!!」

「分かったよ。次に進展があったら今度はちゃんと君達の事も伝えるよ。それで、この設計図に書かれている事なんだけど……」



 ◇



 城の新しいセキュリティシステムについてディルクの話が本格的に始まった頃、ダウランド盗賊団の連中と戦い始めたレウス達は混戦状態になっていた。

 敵と味方の区別がつく様になったのは良いが、向こうもかなり必死な様子で襲い掛かって来るので妙に強い敵ばかりで苦戦していた。

 レウスはその一方で、何とか五百年前の自分が使っていた魔術を詠唱しようとしたいのだが、そうさせてはくれないのが彼に襲い掛かって来ているメイベルだった。

 そして、メイベルは戦いながらレウスへの不満をぶつけていた。


「クロヴィスもエドワルドも、一生懸命あの村を襲う計画を立てていたのに……あんたに邪魔をされて全てが台無しになったんだよっ!!」

「そう言われてもな……俺達だってあの村に多大な被害をもたらされているんだし、そもそもカシュラーゼに砲撃だってされているんだ。だからそんな危なっかしい連中を全力で排除しようとするのは当たり前だろ?」


 四地区全てを砲撃された切っ掛けは、このメイベルの部下であるエドワルドが人型爆弾になった獣人達を連れて来た事が切っ掛けだった。

 それを手始めに村の内部に潜入した部隊を退けたまでは良かったものの、その後に報復が手助けか分からないがああして砲撃を受けたのだ。

 あんな事をされておいて、レウス達だって当然黙っていられる筈も無い。


「確かにあそこは俺達人間に対して凄く嫌悪感を持っているよ。だけどな、そんな嫌悪感を持っている連中に対して砲撃をしても良い理由にはならないだろう!!」

「そんな事は関係無い。私達はカシュラーゼに金で雇われたんだから、少なくともその報酬分の仕事はしっかりさせて貰ったつもりだよ!!」

「どうやらまともに話が通じる相手じゃ無さそうだな。だったらここで終わらせてやるよ!!」


 そう決意したレウスは、向かって来るメイベルに対して防戦からの反撃で応戦する。

 振り回されるロングバトルアックスを回避し、槍で反撃しようとするものの、復讐心に駆られている彼女の猛攻はかなりのスピードである。

 そしてついに、後ろにあった大きな木の幹まで追い詰められたレウスは、一瞬の隙を突かれてロングバトルアックスの柄を喉に両手で押し付けられてしまった。


「ぐ……う!?」

「このまま死ね……さっさとここで死んじまえっ!!」


 押し付けられたままの状態が続けば窒息死してしまう。

 それだけは避けたいレウスは、メイベルの顔面にプッと唾を吹き掛けた。


「ぶっ!?」

「おらっ!!」

「がはっ!?」


 メイベルが怯んだ所に左の肘を思いっ切り振り、彼女の側頭部に全力で肘打ちを入れる。

 首に押し付けられていたロングバトルアックスが緩んだ所で、レウスは更に彼女を突き飛ばして距離を話し、飛び後ろ回し蹴りを繰り出して彼女の側頭部にもう一度ダメージを与えて気絶させるまでに持ち込んだ。


「げはっ、う……」

「はーっ、はーっ、はーっ……とんだイカれ女だぜ……」

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