表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

737/875

734.くそーっ! どけーっ!!

 勝ち誇った様にそう言うゴーシュだが、それをラニサヴも聞いているのでこれでレウスの冤罪は解けた事になる。

 しかし、別の意味で今度は大ピンチだ。


「それじゃあ、理由も話したし私達はこれで失礼するよ」

「そうだな。後はメイベルの三百人軍団に任せておきゃあ何とかなるさ」

「十分に時間は稼げたしね」

「くそっ、待て!!」


 レウスは咄嗟にエネルギーボールを生み出し、三人に向かって投げ付ける。

 しかし、それは三人の元にレウス達を誘導して来たメイベルのロングバトルアックスによって弾かれてしまった。


「追わせないよ。あんた達の相手はこの私だからね!!」

「ふざけんなよ! おい、こいつ等を全員やっちまおうぜ!!」

「そうよね! ここであの三人を逃がしちゃったらどうなるか分からないし!」


 メイベルのロングバトルアックス、そして彼女の部下でありエレデラム公国騎士団の格好をしている人物達に行く手を阻まれてしまったレウス達は、そのまま成す術無しにゴーシュとファラリアとエドガーの裏切り者トリオを逃がしてしまう。

 結局この連中を倒さなければならなくなったのだが、ここでメイベルの部下達にもレウスと一緒に戦うラニサヴとその部下達にも大問題が発生する。


(まずい、これじゃ敵か味方か見分けが付かない!!)


 戦い始めたのは良いが、レウス達と自分を除くエレデラム公国騎士団員達とメイベルが率いている部下達が同じ格好をしているので、誰が敵で誰が味方なのかが見分けが付かないのだ。

 当然、ラニサヴも味方を攻撃しない様に慎重になるのだが、レウス達やメイベルを見分ける事は出来てもこの理由からなかなか目についた人間や獣人を攻撃する事が出来ないのである。

 あの逃げて行った三人が勝ち誇った様に宣言していた通り、敵と味方の区別が付かない状態で戦わなければならないのはラニサヴのみならず、レウス達もまた同じだった。


(くそっ、これじゃ迂闊に手出しが出来ないな!!)


 ギリッと歯軋りをするレウスは、とにかく今の状況で分かる範囲で敵を倒すしか無い。

 自分や仲間のメンバーに対して武器を振りかざしたり魔術を発動して来る者については敵だと分かるのだが、他で戦っている騎士団員同士の戦いについては間違って味方を攻撃してはいけないので、加勢するのを躊躇してしまう。

 しかも三百人の軍勢を相手にするのであれば、敵味方が入り混じる可能性がかなり高くなってしまうので、槍を振り回したりアークトゥルス時代の必殺技で一気に攻撃する事も躊躇(ためら)うレウス。

 頭は使う為にあるのだとゴーシュが言っていた通り、これなら確かに敵を混乱させて一気に叩き潰すにうってつけである。

 とりあえず一か所に固まらずに、この広い平原を利用して離れて戦って戦力を分散させ、自分に向かって来る敵を倒すべきだとアナウンスするレウス。

 しかし、そこでレウスは二つの事に疑問を持った。


(でも……あれ? ちょっと待てよ。分かる範囲で敵の動きを見ると、自分と同じ格好をしている筈のこっちの騎士団員に向かって躊躇う事も無しに攻撃が可能なんだ?)


 実際の所、躊躇も無しに攻撃しているのはレウス自身にもどっちがどっちだか良く分かっていない。

 しかし、そこは敵の方が妙に気合いと自信に満ち溢れているので何となく感覚でぼんやりと判別している。

 そしてそれを見ていたレウスに向かって斬り掛かって来た敵の騎士団員の一人を、槍で串刺しにして絶命させる。

 その絶命した敵の一人を見下ろし、ここでようやくある事に気が付いた。


(……これは! そうか、分かったぞ!!)


 敵と味方の騎士団員の区別をつけるポイントに気が付いたレウスは、戦っているメンバー達に対して大声で指示を出す。


「おい、敵の騎士団員は甲冑の頭部に同じく金属製の大きなとさかが付いているんだ!! その兜を被っている奴を狙え!!」


 その一言に反応した最初の騎士団員から、徐々にその情報が伝言で伝わって行く。

 敵の見分け方が分かってしまえばもう躊躇う事なんて何も無いので、騎士団員達は今までの遠慮を一切取り払って戦い始めた。

 当然、レウスのパーティーメンバー達も同じく敵の騎士団員達に攻撃を仕掛け始めたのだが、それを良く思わないのはやっぱりメイベルだった。


「ちぃっ、見破られちまったんじゃ仕方が無いねえ!! こうなったらまずはあんたからぶっ殺してやるよ!!」

「ああ良いぜ、掛かって来い!!」


 メイベルはレウスに向かって来るものの、レウスだってこうやって反撃のチャンスを作り出したからには負ける訳には行かなかった。

 ドラゴン変態とのバトルの時に使った、相手の攻撃を吸収して何倍ものダメージにして跳ね返す「ナイト・プロヴィデンス」を再び発動する暇こそ無かったが、ここでこの女との縁も終わりにしてやると意気込んで立ち向かうレウス。

 まだ自分が気になっている事は他にもう一つあるからだ。


(俺の母親が言っていた「時間稼ぎ」の意味を知る前に、こんな所でこんな奴を相手にして俺が倒されてたまるかってんだ!!)


 ファラリアが去り際に発した「十分に時間は稼げたしね」の意味深な一言。

 この意味を何としても知りたいレウスは、メイベルとの最後のバトルに挑む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ