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726.解けた輝く水面の謎

 翌日。

 朝食を摂ってから再開された引き上げ作業が全て終わったのは、丁度昼前の事であった。


「あー……しんどかったぜ……」

「全くよね。重いしワイバーンもかなりの数を使ったし……」

「しかし、どうやらその甲斐もあってかなり大きなパーツが何個も引き上げられたじゃないか」


 エルザの言う通り、引き上げられたパーツは脚らしき物が一つ。それから胴体らしき物が一つに、腕らしき物が一つの合わせて三つだった。

 それから湖の周りを探しに探し回った結果、回収出来たゴミの数は全部で百個になる。

 そして何より気になるのは、胴体らしき部位の隅に正方形に形取られている小さな穴だった。

 その中からも、ゴミが放っているのと同じ青白い光が漏れ出していたのだ……。


「もしかしてなんだが、ここにその集めたあのゴミを入れろって事なのか?」

「ふーむ、私もお主と一緒の考えだ。ここはまず一つだけそのゴミを入れてみないか?」

「ってな訳で……ラニサヴ団長、そのゴミを入れてみようと思うんだがどうだ?」

「まあ……やるだけやってみたら良いんじゃないのか?」


 ラニサヴは「どっちでも良い」と言う雰囲気でレウス達に許可を出すが、万が一に備えて騎士団員達と科学研究員達を配備しておくのは忘れない。

 レウス達はその準備が完了したのを見て、衆人環視の下でまずは試しにゴミの一つをその四角い穴の中に投げ込んでみた。

 すると僅かに……本当にほんの僅かにではあるが、ゴミを投げ入れた穴の中の青白い光が強くなったのがレウスには分かった。

 しかしそれと同時に、投げ入れたパーツの周囲もほんの僅かに光り輝いたのが他のメンバー達に分かったのだ。


「な……何なのかしら、この光は?」

「分からないけど、でもそのゴミが関係しているのは確かな様ね」


 疑問を覚えるドリスやサイカの様子を見て、だったら全てのゴミを順番にこの胴体の中に投げ込んでみれば良いんじゃないのか、とラニサヴが提案する。

 何かしらの変化があったからこそ、それが良い結果であれ悪い結果であれ結末を見届けるのが一番後腐れが無いからと言う判断である。

 なので、ラニサヴからの水晶もあってレウス達は青白く輝いているゴミをメンバー達の手渡しのリレー形式でどんどん投げ込んで行く。

 すると、ここでラニサヴが湖の異変に気が付いた。


「おい、そのゴミを入れて行くと湖がドンドン輝いているんだが」

「へっ?」

「うわ……確かに何だか青白く光っているわね……」


 水面がキラキラ輝いている最初の話を、更にグレードアップさせた様な輝き方をする水面。

 それと、今こうして投入したゴミが決して無関係とは思えないレウス達は、ここで全てのゴミを一気に投入する事に決めて全て投げ入れてみる。

 すると次の瞬間、水面が光り輝く事よりももっと驚くべき事態が起こった。

 それは水面に浮かび上がって来た、金属製の大きな土台……と、明らかにこの引き上げたパーツの残りだったのだ。

 片脚、片腕、そして頭部と思われる丸いパーツ。その全てがピタリと一致するのは、手間を掛けてようやく引き上げ終わった金属パーツ達に他ならなかった。

 しかもその突然浮かび上がって来たパーツも、同じ様に青白く光り輝いているのだ。


「な、何なのよあれは……」

「と、とにかく回収するぞっ!!」


 突然水面に浮かび上がって来たパーツも全て回収し、それから土台も調べてみる一行。

 科学研究員の話では、どうやらこの土台が湖の水によって腐食してボロボロになり、金属片として水中に漂い始めた。

 それを水中を泳いでいた魚達が誤って飲み込んでしまい、売り物にならなくなった魚が次々に出て来たらしい。


「だから、その金属片がキラキラと輝いていたのか……」

「でも、太陽や月の光に関係無く光り輝いているって報告だったじゃない。それはどうなるの?」


 感心した様子のラニサヴにそう聞いてみるアニータだが、それにもきちんとした理由があった。


「それなんだが、科学研究員の分析ではどうやらこの土台には魔力が注入されている明かり用の素材が埋め込まれているらしくてな。防水加工もされているその素材が腐食で剥がれ落ちて、水面に浮いたり水中を漂って、それで天気や時間に関わらず光り輝いていたらしい」

「そうなの。ちょっと難し過ぎて私には分からないけど、それよりも気になるのは誰が何の目的でこれを造ったのかって事よね」


 そこで不意に、レウスはとある人物のシルエットを脳裏に思い浮かべる。

 それはソランジュと話をしていた、あの旧い方のウェイスの町とも関係が深い自分のアークトゥルス時代の仲間であった。


「もしかして……まだ仮の話なんだが、これってトリストラムが関係しているんじゃないのかな」

「えっ、トリストラムって確か……イーディクト帝国を建国したレウスの五百年前の仲間よね?」

「ああ。あいつは魔術師だからな。旧ウェイスの町で戦ったあの四足歩行の金属の塊だって、頑張れば造り出す事も出来たんじゃないかって思ってさ」


 いずれにせよ、まだこの金属パーツの数々を良く調べてもいないので確証は持てない。

 しかし、レウスにはどうしてもあのソランジュと一緒に戦った()()とこの金属の塊が無関係とは思えなかったのである。

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