表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

728/875

725.回収作業

 ブローディ盗賊団との戦いも終わった数時間後。

 日が暮れ始めている中で、ようやくあの赤い塗装がされている金属パーツの回収が始められる。

 思わぬ邪魔者が入り、そして思わぬ新開発を使用した妨害で回収が出来なくなっていた所か、北に居た大多数の人員が命の危険に晒される出来事。

 しかしその元凶であった、邪魔者のフランコもようやく逮捕されてエレデラム公国の都であるバルナルドへと移送される事になり、ブローディ盗賊団との因縁もこれで終わりになりそうだ。

 そしてレウスを始めとする、回復魔術が使える者達の尽力によってすっかり元気になった一行は、この襲撃によって生じてしまった遅れを取り戻すべくパーツの回収を開始する。

 既に日没になりそうなのを考えると、魔物が活性化するのを考慮してこれ以上のゴミ拾いは危険だとラニサヴが判断し、何とか出来る所までパーツの回収を進める手筈である。


「ええと、鎖の準備は出来ているか?」

「はい!」

「それだったら良いな。よーし、引き上げるぞ!!」


 科学力が発達しているとは言えども、まだまだこうして大掛かりな作業に使える様な機械の開発は進んでいないエレデラム公国。

 将来的には大掛かりな作業も機械で出来る様になれるかも知れないと考えつつ、今回使うのは人々の力とワイバーン達による引き上げ作業だ。

 事前に湖に潜って貰い、パーツの全体像を把握してからその水中にも鎖を通して縛り上げ、ゆっくりと水中から引き上げる作業である。

 しかし、そのパーツが引き上げられてからまた騒動が起こる事を、この時には誰も予想していなかった。


「よーし、良し、そのままゆっくりと引き上げろ……」


 ラニサヴの指示によって引き上げられるそのパーツだが、地上で見守っているレウスを始めとするパーティーメンバー全員が驚く程大きな物だった。


「ええっ、こんなに大きな物がこの湖に浮かんでいたんですの?」


 遅れて駆けつけて来た他のメンバーの内、最初にティーナが驚きの声を上げる。

 それもその筈で、自分達の何倍もありそうな長いパーツがまず引き上げられたからである。

 そしてそのパーツを見たアニータが、何かに似ている……と思って腕を組んで考える。


「これ……脚っぽいわね」

「脚?」

「ええ。でも、それにしては大き過ぎる。こんな金属の塊がこの湖に浮かんでいるなんて変よね」


 前に誰かが予想した様に、何処かからこのパーツを誰かが投げ入れたか、そもそもこの湖の中にあったのではと思わない限り不自然なのだ。

 しかし、それとは別の不自然さにサイカが気が付いた。


「あら? ここに不自然な隙間があるわよ?」

「隙間?」

「そうそう、ほら……これ。隙間って言うか穴って言うか。これって変な形をしているけど、何なのかしら?」


 サイカが見つけたものは、引き上げられた金属パーツの一方の端に出来ている不自然な形の隙間だった。

 その形は明らかに人工的なものであり、サイカの言う通りまるで何かをはめ込む穴の様な感じである。

 それを見ていたソランジュが、もしかして……と自分の推測を述べ始めた。


「ねえ、ひょっとすると……他にも同じ様なパーツがあるんじゃないかしら?」

「え?」

「だってほら、私とサイカが見つけたあの二つの小さなパーツも金属製だったし、何かの機械みたいな物だった。だったらこの大きなパーツのその穴に、何かをはめ込む構造になっていたりするんじゃないかしら?」


 湖の中に見えた大きなシルエット。

 それがこのパーツを色々と他にも組み合わせて出来ている、何かの集合体だったとしたら……とソランジュがそこまで考えた時、ふいにレウスがある事を思い出した。


「……あ、もしかして……」

「どうした?」

「俺とソランジュで、イーディクト帝国の旧い方のウェイスの町で戦ったあの機械の兵器の事を覚えているか?」

「機械の兵器?」

「ほら……あの機械だよ。四足歩行で、俺達がエレベーターの所に追い詰められていたあれだよ」

「ん~……ああ、確かにお主と一緒に向かった先で、そんなのに遭遇した事があったな」


 侵入者対策の警備用に造られた、大きな金属の塊。

 その事を不意に思い出したレウスから話を振られたソランジュも、確かにその金属の塊と戦った記憶があった。

 そしてその話をレウスが何故振ったのか、と考えてみて彼の言いたい事がようやくソランジュも理解出来た。


「もしかすると、お主はあの時の金属の塊とこのパーツで構成されている何かが同じ類のものである……とでも言いたいのか?」

「そうそう、そうだよソランジュ。あの時の金属の塊だってかなり大きかったし、今考えてみれば明らかに魔術の類じゃなくて科学の類で動いていた物だったと思うからさ」


 果たしてこの推測が正しいかどうかはまだ分からないが、もしそれが本当だとしたらまたあの時みたいに金属の塊が大暴れしてもおかしく無いだろう。

 そう考えているレウス達の目の前で日没ギリギリまで作業が続けられる一方で、レウス達も今まで集めたゴミの整理や野営地の設営の手伝いをする。

 もう少しできっと冤罪が晴れる筈だと、そう信じて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ