表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

727/875

724.壊滅! ブローディ盗賊団

「死ねやあああああっ、ごらあああああああっ!!」

「っ!?」


 全速力で駆け寄って来たのは、雄叫びを上げながらバトルアックスを振りかざすフランコの姿だった。

 エルザは咄嗟にその振り下ろされるバトルアックスを転がって回避し、素早く立ち上がって自分も腰のバトルアックスを抜いた。

 だが、彼女はフランコと戦い始めてすぐに違和感を覚える。


(くっ……身体が重い!!)


 先程、ワイバーンから飛び降りた際に煙を吸ったからなのか。

 いや……それもあるのだろうが、それ以外の要因としては自分の着込んでいるこの赤いロングコートが原因だった。

 コートが湖の水をたっぷりと吸い込んでしまい、ぐっしょりと濡れた状態で身体に纏わりついている。

 それによって動きが制限されるだけにとどまらず、重さによって何時ものバトルアックスを振るうスピードが出ないのだ。

 しかも、対するフランコの方はワイバーンが地面に着陸するタイミングを上手く見計らって地面に無傷で着地して、受け身を取ってからすぐにこちらにやって来たので服も濡れていなければ煙を吸い込んでもいない。


(なるべくギリギリまで息を止めていて正解だったぜ。それにこの布で完全に煙をブロックだ!!)


 それによって、動きの鈍ったエルザ相手に余裕のバトルを繰り広げる事が出来ているフランコ。

 更に言えば、バトルアックス使いとしてのテクニックでも長年の経験と実績からフランコの方が上である。

 自分の方が一本しか無いバトルアックスで、相手のエルザの方が二本のバトルアックスでも、そんな事はフランコにとってはお構い無しである。

 的確にエルザの攻撃を右手のバトルアックスで受け、左手を使って彼女の胸倉を掴んで自分の方に引き寄せる。


「ぬおっ……ぐあ!?」

「おらあ!!」


 引き寄せられたエルザはフランコの頭突きを食らい、たたらを踏んだ所に強烈な前蹴りが入って地面にうつ伏せに倒れてしまった。

 しかし、そこにとどめを刺そうとした所で思わぬ乱入者が現われる。


「そらっ!!」

「ぐおっ!?」


 突然、背中から物凄い衝撃を受けてエルザと同じ様に地面に向かって倒れ込むフランコ。

 正確に言えば、エルザに覆い被さる形で倒れてしまった彼が一体何事かと背後を振り返ってみると、そこには銀色の槍先が突き出されていた。


「これ以上、俺の仲間に勝手な事をさせる訳にはいかないんだよ」

「な……っ!?」


 馬鹿な。何故この男がこうして自分の後ろに立っているんだ?

 この男はあの時に煙を吸い込んで、他の連中と一緒に地面に倒れてしまった筈だったのに。

 そう考えてしまって反応が遅れたフランコに対し、何時の間にか背後に居たレウスが彼の顔面を蹴り飛ばした。


「ごあっ!?」

「この始末はきっちりつけて貰わないとな。お前とその仲間達によ!!」


 鼻血を吹き出しながら仰向けに倒れたフランコに素早く伸し掛かり、レウスはやって来た騎士団員達に頼んでロープを貰ってそれで縛り上げる。

 フランコが鼻血を流しながら周囲を見渡してみれば、大勢の騎士団員達や科学研究員達がワイバーンに乗ってここまでやって来ていたのだ。

 しかも五分しか持たない紫色の煙も既に消えてしまっており、普通に呼吸が可能になっている。

 自分が呼び寄せていた筈の多数の部下達は、その騎士団員や科学研究員の中の戦える者と交戦をして、少しずつ戦力を減らされていた。


「まさか……こんな展開になっちまうなんてよ……」

「悪いけどな、俺達を舐めて貰っちゃ困るんだ。俺達だって伊達に修羅場は潜って来ていないんでね!!」

「ふん……そーかいそーかい。だったら一つだけ聞かせてくれよ。お前はどうして、あの煙を吸い込んだのにこうやってピンピンしてんだ?」


 拘束されて抵抗する手立てが無くなってしまっても、それ以上にこれだけはどうしても聞きたかったのでレウスに対してフランコはその疑問をぶつける。

 その答えとして、レウスは当たり前の様な口調でこう言ったのだ。


「負けたくないって言う気持ちかな」

「え?」

「だから負けられないって言う意志だよ、意志。こんな煙如きで俺はやられてたまるかって言う気持ちで、何とか踏ん張ったのさ。勿論それは俺だけじゃない。俺と一緒にここに来ていたコルネールもアーシアも、それからラニサヴが率いている騎士団員だって科学研究員達だってそうさ。……ほら、見てみろよあの尽力ぶりをさ」


 そう言いながらレウスが指差した先では、応援に駆けつけてくれた科学研究員達や騎士団員達に助けられた、煙を吸い込んでしまった人員が立ち上がって他の人員を助けている光景があった。

 その光景を見せながら、更に自分の復活劇を語るレウス。


「あの倒れていた奴等の中には、自分自身に回復魔術を掛けて何とか復活しようとしていた。ああやって意識を失っちまった奴等は回復までにまだ時間が掛かりそうだがな。だから俺も、あの連中の姿を見てここでまだ負けられないって思って、自分に回復魔術を掛け続けながら煙の無い所まで移動して、体力を回復させたのさ」

「……仲間を思う気持ちって奴か。俺が失ったものは大きいのかも知れないな」


 そう呟くフランコを騎士団員と科学研究員達に任せて、レウスもまだ倒れているコルネールやアーシア、そしてラニサヴを回復させるべく歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ