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723.決死の激突

「こんのおおおおっ!!」


 アレットは自分のワイバーンの横に並んで来た敵のワイバーンに向かって渾身のサイドアタックをかます。

 その一方でエルザは高所恐怖症を忘れたかの様に華麗な動きで襲来するワイバーンのサイドアタックや、ワイバーンの騎手の攻撃を回避する。

 そのまま何とか回避を続け、途中で雨雲を抜けて雨も上がったので限界までスピードを上げる二人の視界に、奇妙な光景が見えて来た。


「エルザ、あれっ!!」

「紫の煙……あそこだな、間違い無い!!」


 遠くから見てもうっすらと分かる程、紫色の煙が立ち上っている光景がそこにはあった。

 そしてその上空を、不自然に旋回しているワイバーンの姿。

 レウス達からの連絡によれば、ブローディ盗賊団のリーダーであるフランコが乗っているワイバーンから奇妙な物体が落とされ、その物体から紫色の煙が突然現われたのだと言う。

 そのワイバーンと言うのは間違い無くあれだろうとエルザが結論付け、こっそりと近づいて隙を窺って攻撃しようと思ったのだが、その前にアレットが思いもよらない行動をとってしまった。


「よっし、行くわよっ!!」

「……え?」


 そう言いながら、レウスから教わった魔力を注入する方法で一気にワイバーンを加速させるアレットの行動に対して反応が遅れたエルザ。

 そんな彼女を尻目に、アレットは加速させたワイバーンの狙いを定めてその旋回しているワイバーン目掛けて、躊躇無く突っ込んで行ったのだ!!


「うおりゃああああああああっ!!」

「はっ?」


 変な叫び声が聞こえて来たと思って振り向いたフランコの視線の先には、既に避けられない距離にまでアレットとワイバーンが迫っていた。

 下の状況にばかり意識が集中していたのがアダとなり、フランコは避ける所か何が起こっているのかも分からないまま空中に放り出されてしまった。


「う……うおあああああああああっ!?」

「きゃあああああっ!?」

(あ……あの女、やってしまった!!)


 猪突猛進な所があるのが欠点なアレットのその行動に、エルザは焦りを覚えながらも状況を把握する。

 アレットはフランコの乗っているワイバーンに激突した側だったので、必死のコントロールで何とか体勢を立て直して空中で踏ん張る事に成功。

 しかしフランコのワイバーンは大きくバランスを崩し、フランコ自身もそのまま地面へと向かって落ちて行ってしまう。

 本来であればあんな盗賊団の男は死んでも良いのだが、彼からはまだまだ色々な話を聞き出さなければならないので、ここは真っ先にエルザがフランコの元へと向かった。


(くっ、ギリギリか!?)


 ギリギリで空中でキャッチ出来るかとイメージしていたのだが、イメージと現実は違った様だ。

 エルザは降下しながらフランコの落下地点へと急行して、確かにギリギリで間に合ったには間に合ったのだが、空中でキャッチするまでには至らなかった。

 何故なら、落下するフランコがワイバーンの背中に落ちて来たまでは良かったものの、落下のスピードによってそのまま背中でバウンドしてしまったからである。


「なっ……」

「お、お、お、おおおおおおっ!?」


 間一髪で助かったかと思ったフランコは、バウンドして再び空中に投げ出される。

 彼は咄嗟に動いているそのエルザのワイバーンの翼を掴んで、今度こそ間一髪でギリギリ踏ん張ったのだが、そんな事をすれば当然人間一人分の重さによってエルザのワイバーンもバランスを崩してしまう。


「お、おい貴様! 何をしているんだ!?」

「このまま……落ちてたまるかあああああっ!!」


 両手で翼を掴んだフランコの重さに引っ張られる形で、ぐわっとワイバーンが斜めに傾く。

 必死になってエルザは体勢を立て直そうとするが、その努力も空しくワイバーンは左に傾いたまま地面に向かってスピードを落としながら近づいて行く。


(くそっ、このままでは奴もろとも私も地面に落ちてしまう!!)


 だったらいっそ、少しでもショックを和らげる方法としてこの自然を利用させて貰う。

 ワイバーンの落下地点は大体あの辺りだと見当をつけ、左に向かって傾いている状態のワイバーンが左に左にと動くのを見越したエルザは、下に湖の水面が来た時にタイミングを見計らって一思いに飛び込んだ。


「うっ……くうううううっ!!」


 バッシャーンと言う水しぶきとともに、エルザの赤いコートを纏っている身体が湖の水面に着水する。

 すぐに身体の力を抜いて水面に出たエルザは、そのままバシャバシャと泳いで煙の無い場所まで移動するものの、そこに辿り着くまでに少し煙を吸い込んでしまった。

 その瞬間、妙な息苦しさとめまいを覚えた彼女はレウスからの連絡内容が事実だったと認識する。


(こっ、これは……少し煙を吸っただけでこの息苦しさとめまい! そうなると大量に煙を吸い込んだ人間や獣人は、それこそ動けなくなっても当然か!!)


 改めて、カシュラーゼのディルクが開発した兵器の恐ろしさを身をもって実感すると同時に、一緒に落ちて行った筈のフランコ、それからアレットの姿を探してキョロキョロと周囲を見渡すエルザ。

 すると、その二人の内の一人が自分に向かって近づいているのが視界に飛び込んで来た。

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