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718.ぼんやりと見える赤いシルエットの情報

「く……くそっ! 北の方にあるパーツを回収しようと思ったのに、これじゃどうにもならないじゃないか!!」

「北にあるパーツ?」

「あ……」


 エルザに負けてしまって騎士団に拘束されるヴィストールとその部下達だったが、ここでヴィストールがポロッと口を滑らせてしまった。

 それについて更に追及しようとするエルザだが、今こうして口を滑らせてしまった事によってヴィストールはこの先は黙秘を一貫する事に決めた。


「北のパーツとはどう言う事だ?」

「……」

「何かが北の方で見つかったと言う事なのか?」

「……」

「おい、答えろっ!!」

「……」

「ふん、言いたくなければ構わない。だったら私達の目で確かめるだけだからな!!」


 目を逸らしてエルザの追及に対して黙秘を続けるヴィストールを見て、これ以上追及してもきっと黙ったままの状態が続くだろうと判断したエルザは、追及を諦めて自分達の目で現地確認をする事に決めた。

 しかし、そこで重要な事を思い出したのがアレットである。


「でもちょっと待ってエルザ」

「何だ?」

「確か北の方にはレウスとラニサヴ団長とコルネールとアーシアが行っている筈よ。だから今から私達も向かうより、向こうに魔晶石で連絡を入れておけば良いんじゃないかしら?」

「あ、なるほどな」


 今のヴィストールの話からすると、ヴィストールの上司であり盗賊団リーダーのフランコもその北の方に向かっている可能性が高い。

 ならば先に北の方に向かったレウス達にこの事を話し、先に待ち伏せをして貰ってあのフランコを捕まえて貰えば良い。

 そう考えていたアレットとエルザだが、レウス達の方では更に衝撃的な物が発見されていたのである。



 ◇



「こ、これは……?」

「これ……明らかに科学技術の結晶って感じの物よね」

「ああ。しかもかなり大きなパーツだよ、金属パーツ」

「こんな物がこんな場所に浮いていて、しかも赤い物体って事はもしかしたら……これが噂のぼんやりと見える赤いシルエットの正体なのか?」


 レウス、コルネール、アーシア、そしてラニサヴの四人の目の前に鎮座しているその物体。

 それこそ、まさにあの漁師からの目撃情報にあった「ぼんやりと見える赤いシルエット」の正体らしいのだが、違和感を覚えない訳でも無かった。

 何故ならそのシルエットの正体だったとするには、何となく大きさが足りない様な気がするからである。


「なぁ、この湖の深さってどの程度なんだ?」

「そうだな……前に調べた所によると、大体一般成人の人間の男の身長で、二十人分位かな……」

「それなりの深さがあるんだな。でもそうなると、俺の考えている事も割と間違っていない気がする」

「考えている事?」


 一体レウスは何を考えているのだろう、とアーシアを始めとする他の三人が彼の言動に注目する。

 その注目されている側のレウスは、自分なりのその考えを口に出し始める。


「この物体の大きさなんだけど、何だか人の腕みたいな形に見えないか?」

「人の腕……?」

「ああ。ほら、ここが関節でこっちが上腕でこっちが二の腕でさ」

「あー……まぁ、そう言われれば俺もそう見える様な気がして来たぜ。でもそれが何だってんだよ?」


 コルネールからの次なる疑問に、レウスは湖のほとりに漂着して人力でようやく引き上げられたもう一つの金属パーツに目を向ける。


「じゃあ次にこっちの方のパーツだけど、これは足に見えないか?」

「足?」

「そうそう。ここからここまでが太ももで、ここからここまでが膝で、そしてこの関節から先が足になっている。現にほら……これってこうやって動く訳だし」


 大型の巨人の魔物の様に、見上げられる位の人型だと言いたいんだとレウスは口に出しながら、その関節部分を両手で押してみて動くのを確認する。

 ギギギ……と錆び付いた音を出しながら確かに動くのを見た他の三人も、確かにそうかも知れないと思い始めていた。


「そう考えると確かにつじつまは合うけど……でもそんなのがこの湖の中に沈んでいるって話なの?」

「そうなるだろうな。まだ仮定の段階でしか無いけど、これがこうやって沈んでいたらその赤いシルエットがぼんやり見えたっておかしくない。この膝の部分とか、二の腕の部分の塗料が一部剥げているけど現に赤いしな」


 仮に人型の「何か」だったとして、それが立ったままの状態で沈んでいた、もしくは横倒しになって沈んでいたとなれば「ぼんやりと見える赤いシルエット」の正体としては説得力がある。

 そのレウスの話を聞き、ラニサヴはこの湖の中を徹底的に調査する事に決めた。


「じゃあ、ひとまずまずはこの湖の中をちゃんと調査しよう。湖の中に泳ぎが得意な者を潜らせて、謎の物体がまだまだこれと同じ様にこうやって沈んでいたら、それを順次回収する」

「ああ、それが良いかも知れないわね。でも今日はゴミ拾いが優先なんでしょ?」

「そうだ。今、俺の部下達や科学研究員達がゴミ拾いをしているから手伝いに行くぞ」

「分かった。この部下達と研究員達がかなり広範囲に散らばって行ったのを見ると、どうやらそれだけの範囲に広がっているみたいだしな」

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