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716.謎のパーツ?

 アレットとエルザ達が、東の方でまさかの相手とまさかの展開を繰り広げている丁度その頃、南の方でせっせと回収作業に勤しんでいたソランジュとサイカは、気になる物体が湖のほとりに浮かんでいるのを見つけた。


「おい、これは何だ?」

「何かしら、それ……」


 それは先端に赤い塗料で色が塗られた丸い物体が付いている、小さくて短い銀色の棒の破片だった。

 何故破片なのかが分かるのかと言うと、棒の断面がギザギザに折れてしまっているからである。

 それを見たソランジュが何かの欠片と判断したのだが、これは自分達が回収する対象となっているゴミでは無いので特に気にする必要も無いだろうと考える。

 しかし、それをサイカが止めた。


「ちょっと待って。それももしかしたら、そのぼんやりと見える赤いシルエットに関係しているんじゃないかしら?」

「え?」

「だって、こんな棒って明らかにこんな湖と森の大自然の中に落ちている訳が無いでしょ。これって見るからに人工物だもん」

「まぁ、確かにそれはそうなんだが……」


 今はそれよりもゴミの回収が優先じゃないのかと言いたくなったソランジュの手から、その謎の棒を奪い取ったサイカは、ゴミを回収する為の袋の中に一緒に突っ込んでおく。


「どうせ本当にゴミだって分かったら纏めて処分すれば良いんだし、そもそもそう言うスタンスでこのゴミ拾いを始めたんだからね」


 分かったらさっさと回収の続き! と自分を率いるサイカを見て、ソランジュは「何時もと立場が逆じゃないか?」と思わず呟いていた。

 その後も南の方でせっせとゴミを集めるソランジュとサイカ達だが、また気になる物体を見つけてしまったのである。


「あら、何かしらこれ?」

「どうした?」

「ほら……この船のここに浮いているこれよ」


 湖で釣りをする客の為に、無料で利用出来る様に何隻もの木製のボートが太いロープによって繋がれている場所。

 そこの近くでゴミ拾いをしていたサイカが、船の一隻に近づいた時にボートのそばの水面でキラリと光る何かを見つけたのだった。

 それは先程ソランジュが発見した、謎の金属の棒と同じく明らかに何かのパーツらしき……。


「何だろう、これ……」


 奇妙な形の物体。

 例えて言うのであれば、ハンドバッグの持ち手をそのまま金属製にして固くした様な、楕円形のパーツである。

 かなり不思議な形をしている上に、パーツの両端がそれぞれ何処かに刺さっていた様な左右対称の出っ張りがついているので、何かを動かす為のレバーかな? とサイカは推測する。


「これもかなり怪しいと思わないかしら? ソランジュ」

「そうだな。こんな物が水面に浮いている事自体が奇妙だ。見た所……周りにこんな物を取り付ける様な場所や物は存在しないし、この舟だって地面に打ち付けられた木の杭にロープで留まっているだけだしな」

「だとするとこの湖の何処かから流れて来たか、誰かが意図的に何処かから投げ込んだかしか考えられないって話か……」



 ◇



 謎のパーツがまた見つかった事に対してソランジュとエルザが首を傾げている頃、ようやく魔物達を倒し終えたヒルトン姉妹が魔物達の群れのそばから目的のゴミを回収していた。


「はー、はー、はー! ようやく終わったけど……姉様は怪我とか無いかしら?」

「私は平気よ。でも、ゴミまで魔物が飲み込んでいたみたいね」


 森の中に落ちていたゴミとは別に、魔物達が餌と間違って飲み込んでしまったのであろう同じゴミが魔物の死骸の中から出ていた。

 それを気持ち悪さと闘いながら回収して行くヒルトン姉妹だったが、ドリスがここで本音を漏らす。


「でもさぁ、ちょっと疑問に思ったんだけど」

「何?」

「この湖ってかなり広いじゃない。で、その湖の四方八方にこんなにゴミがまんべんなく落ちているなんて、これって何だか不自然だと思わないかしら?」

「まあ、それは確かに私も変だとは思うわ」


 都のバルナルドの何倍も広いこの湖の周囲から、何個も同じ様なゴミが見つかっている。

 この現状にティーナとドリスは違和感を覚えたのだ。


「私達はこっちを担当する為に、その辺りで作業している騎士団の人達とか科学者の人達にワイバーンに乗せて来て貰った訳だけど、そうでもしないと着けない様な距離でこうやってゴミが大量に見つかるなんて何かがあったとしか思えないのよ」

「うーん、考えられるのは誰かが意図的にこうやって森の中や湖の周囲にゴミを撒いたって可能性だけど……でも、確か木材業者の方の話だといきなりこのゴミが発見される様になったって話なのよね?」

「ええ。って事は、()()()()()()()()()()()()()()()()んじゃあ……?」


 考えられなくは無い話なのだが、それは現実味が無さ過ぎるだろうとティーナが否定する。

 とにかく今はこの謎のゴミを集め終わる事が先決なのだと心に刻み込んだヒルトン姉妹は、さっさとこの作業を終わらせるべく再び集中し始める。

 しかしヒルトン姉妹がこうしてゴミを集めたり、ソランジュとサイカが謎のパーツを立て続けに見つけて首を傾げているその一方で、アイクアル王国で因縁が出来てしまったブローディ盗賊団と戦いを繰り広げていたアレットとエルザは思わぬ情報を手に入れていた。

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