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710.無罪になる条件

 そのせいでこうして大公のラグリスの目の前にまで引きずり出された訳なのだが、勿論そんな犯罪に関しては事実無根である。


「お待ち下さい大公。私達は本当に何もしていないんです」

「そうは言われてもな。だったらそなた達の身の潔白を自らで証明してみせろ。そうでなければこの国から出す訳にはいかないのでな」


 ティーナの訴えにも冷酷にそう返答するラグリス。

 やはり脱獄した身とあって信用度はゼロに近いのだが、そうしてしまったのは自分達である。

 そんな自分達を捕まえられたのも幸運だからと言うラグリスだが、今の所レウス達にとっては不幸の連続でしか無いので、ここから何としても自分達に幸運を呼び込むしか無いらしい。


「とりあえず今日はここで過ごして貰って、明日からこの国の中に限定してそなた達がカシュラーゼと繋がりが無いのを証明して貰う」

「それはちょっと厳しい様な……そもそもこの国の中にはカシュラーゼ関係の噂とか、そうした情報はあったりしないのですか?」


 それが無かったらこちらとしては動き様が無いので、少しでも聞き出せる情報は聞き出しておきたい。

 そう考えたレウスが切り出してみると、ラグリスからの返答は気になるものが一つあったのだ。


「カシュラーゼ関係か……おい、ラニサヴの方で最近調査をしているって話があったものを伝えたらどうだ?」

「ああ……あの森の中の話ですか?」

「そうだ。森の中から最近妙な光が見えるって言う話だっただろう。その光の調査がまだされていないのであれば、そこの調査をこの者達と一緒にやって来るんだ。もしかするとカシュラーゼに繋がる話があるかも分からないからな」

「かしこまりました」


 森の中の謎の光。

 それについての調査を頼まれたレウス達だったが、ここで意外な話がラグリスからもたらされる。


「……そうだ、今回の件についてもしそなた達が無実だと分かった場合の話になるんだがな」

「何ですか?」

「そなた達は確か、五百年前に失踪してしまった伝説の五勇者の一人である、エレインの消息を追っているんだと話を聞いている」

「えっ、どなたからですか?」

「リーフォセリア王国のドゥドゥカス陛下からだ」

「ドゥドゥカス陛下ですか?」


 意外な名前が出て来た事にレウスが驚く。

 リーフォセリアを離れてから一切出会っていないドゥドゥカスだが、レウスの両親でありカシュラーゼ側の一員になってしまったゴーシュとファラリアからレウス達の企みに関する書類を受け取った後、その真偽を確かめる為にラグリスがドゥドゥカスに連絡を入れたらしいのだ。


「ドゥドゥカス陛下はそなた達の事を信じていた。そなた達がカシュラーゼ側に寝返る筈が無いのだと」

「そ、そうですか……」


 ラグリスからのその報告に対して、レウスはホッと胸を撫で下ろす。

 これでもしドゥドゥカスからも疑われていたら、それこそリーフォセリア王国には戻れない状態になっていただろう。

 だが、自分の両親がカシュラーゼ側に寝返ったからこそそんな嘘の情報が記載された書類を世界各国に配ったんだ、と言っても信用し切れていないラグリス。


「なら聞くが、どうしてそなたの両親がカシュラーゼ側に寝返ったんだ?」

「それは分かりません。俺だって両親に会ってこの事について聞きたい位ですから」

「だからこそ、今はそなたの言い分もそなたの両親の言い分もどちらも信用し切れていない状態だ。そなた達がこの国の中で何かを見つけて無罪だと証明出来たら、それは私達に落ち度があったと言う事になる。だからその時には、ドゥドゥカス陛下から聞いた話にあったエレインと……ああそうそう、ライオネルの情報も持っているからそれを全て教えよう」

「えっ、本当ですか!?」


 まさかその話までドゥドゥカスから伝わっているとは思ってもいなかったレウス達だが、これは確かに自分達にとってはかなり良い話である。

 と言うのも、今までにエレインやライオネルの情報を探して旅を続けて来た記憶では、エレインのメッセージにあった行き先や国名を頼りにしてここまでやって来た。

 そのせいで色々なトラブルを巻き起こしたり巻き込まれたりしている上に、レウス達の前にドラゴンが立ちはだかった。

 しかし、今回の件に関しては話が違う。

 レウス達が無実を証明しさえすれば簡単にライオネルとエレインの消息が掴めるらしいので、これ程までに楽な方法は無かった。


「ああ、本当だとも。私達だって人を疑っておいてそのままって訳にはいかないからな。ただし、無実を証明するのであればそれなりの証拠が必要になるから、それはしっかりと覚えておけ」

「わ、分かりました……」


 とにもかくにも、自分達がこの国から無事に脱出する為にはこの冤罪を晴らさなければならない。

 特にレウスはと言えば、自分の息子を裏切ってまでカシュラーゼ側についてしまった自分の両親を恨むとともに、こんな風に自分達をはめるなんて絶対に許せないと思っていた。


(もうあんた達を両親だとは思わない。これからは敵同士だ。レウスとしてでは無くて、五百年前のアークトゥルスとして戦ってやるからな!!)

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