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707.鳴り響いた警笛

 レウス達は一直線にワイバーンで王都のバルナルドを目指した。

 そこまでは確かに順調だったものの、問題はそのバルナルドに辿り着いてからだったのだ。

 何故なら、城門をくぐって王都の中に入ろうとした時に突如、自分達に向かって警笛が鳴り響いたからであった。


「うわっ、何だ!?」

「何よ、一体……」


 何の前触れも無くいきなりピーッと鳴り響いたその警笛にレウス達が戸惑っている所へ、ダダダ……とおよそ二十人程の武装した集団がやって来た。

 このエレデラム公国のトレードカラーである、緑を基調とした鎧を身に付けているその集団がレウス達を逃げられない様に取り囲んだのだが、一人だけ明らかに違う格好をしている男がレウス達の目の前に歩み出る。


「レウス・アーヴィン……いや、五百年前の勇者アークトゥルスの生まれ変わりとその仲間達だな?」

「なっ……」


 完全に初対面なのに、何故自分がアークトゥルスの生まれ変わりだと知られているのだろうか。

 そもそも、このエレデラム公国に来たのだって初めてなのに。

 驚愕するレウスを鋭い目つきで睨みつけるのは、黒い革手袋をはめた左手で細長い銀色の警笛を弄びながら、灰色っぽい茶色の上下の服装に赤いサーベルを二振り腰に提げている、かなり若い赤毛の男だった。

 どうやらこの男が警笛を吹き鳴らしたのだろうと一発で察したレウス達は、いきなりの取り囲みに対して良い気分はしなかった。


「そうだけど。何だよ、あんたは……」

「俺はエレデラム公国騎士団の団長、ラニサヴだ。俺達と一緒にオーレミー城まで来て貰うぞ」


 有無を言わせないその口調に対して、当然レウス達は反発する。

 前にも何だかこんな展開があったなーと思いつつも、何の目的でオーレミー城まで行かなければならないのかと問う。


「俺達が城に行かなければならない理由は何なのよ?」

「大公がお呼びだ。お前達がこのエレデラムに来ると言う話を聞いて、何か揉め事を起こされる前に会っておきたいと」

「はぁ?」

「ちょっと、私達をそんな疫病みたいに言わないでよ」


 ラニサヴのその言い分に唖然とした表情になるソランジュと、ムッとした表情になってそう言うアニータ。

 しかしながら、それでもラニサヴも譲ろうとしない。


「そう言われてもな。お前達の話は既にこちらでも把握済みだ」

「それって誰からの情報なのよ?」


 そもそも初対面でこうしてレウスの正体を知られていたり、今の言い分からすると自分達が他の国で色々と騒ぎを起こして来たり巻き込まれたりしているのがバレているのが完全に謎である。

 勿論初対面で今会ったばかりの自分達から話す様な事はしていないので、自分達以外の誰かがこのエレデラム公国の関係者にペラペラと話したに違いない。

 それが誰か分からない以上は、教えてくれるまで絶対について行かないとレウス達が主張するのを聞き、ラニサヴがサッと左手を上げた。

 するとその瞬間、レウス達を取り囲んでいたラニサヴの部下達が一斉に強硬手段に出る。


「ちょ、ちょっと何するんだ!?」

「きゃああっ、変な所を触らないでよっ!!」


 取り囲んでいた騎士団員達が強引にレウス達全員を縄で縛り上げ、そして担ぎ上げて連れて行かれる。

 その様子を見ながら、ラニサヴは心底面倒臭そうな口調でレウスに向かってこう言い放ったのだ。


「お前達が素直に応じないからこうなるんだ。俺達だって仕事でやってるんだし、大公の命令なんだから手間を掛けさせるなよ、全く……」


 結局、誰が自分達の情報を流したのかが分からないままレウス達はオーレミー城の中へと運ばれた。

 しかもこの国の国民達には「各国で問題を起こしている集団」と認識されている様で、有無を言わさずに連れて来られただけに留まらず地下牢に閉じ込められるのも有無を言わせない展開だった。


「はぁ……どうしてこんな展開になるのかしら」

「知らないわよ。だってそもそもこの国で問題を起こしている訳でも無ければカシュラーゼ軍だってこの国には来ていないみたいだし、別に問題を起こさなければ普通の観光客と同じ扱いで過ごせる筈なのにねー……」


 溜め息を吐くドリスに対して、アレットが自分の考えを冷たい牢屋の中に響かせる。

 このエレデラム公国に来たのはエレインの消息を追い掛ける為だし、国境だってしっかりとオルエッタの通行証で通って来た。

 もしかすると自分達の容姿がバレていて、その国境からの連絡で自分達が来るのが既に分かっていたのかも知れない、とレウスは考える。

 だが、それについてアニータから突っ込みが入った。


「その線が確かに濃厚だと思うんだけど、でもそれだったら何故あの隊長みたいな人が貴方の正体を知っていたのよ?」

「いや、それは俺にだって分かんねーよ」

「そうよね。だとしたら貴方の正体を知っている誰かが密告したとしか思えないのよ。ルルトゼルの大勢の人々には口外しない様に頼んであるし、その他の地域の誰かって事になるわよね?」

「だよなぁ……」


 このエレデラム公国は他国の問題に対して中立的な立場を取っており、それ故に変に他国に対して首を突っ込む事はしない筈だ。

 しかし、他国でドラゴンを倒したとか色々と騒ぎを起こしていればエレデラム公国にまで話が届いてもおかしくは無い。

 そう考えていたレウス達が全員纏めて投獄されている広い牢屋に向かって、コツコツと歩いて来る何者かの足音が聞こえて来た。

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