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68.完全なとばっちり

 レウスが先程港で絡まれた時と同じく、こっちが一人で相手は五人。だが今回は色々と事情が違う。

 先程の相手は酒によって足元もおぼつかない様な酔っ払いの男達だった為、五人相手だったとしても素手で何とかなった。

 しかし今回の相手は全員女。しかもそれぞれ手にはロングソードだの槍だのエルザと同じバトルアックスだのと言った武器を持っており、酔っぱらってもいない状態である。

 そして何より、相手はあの黒髪の女の出まかせによって殺気立っているのでさっきの酔っぱらい達より何倍もタチの悪い相手なのだ。


(一番タチが悪いのはあの黒髪の女だが、まずはこの五人をどうにかしなきゃな!!)


 五人相手に誤認を解かなければならなくなったレウスは、大きな舌打ちをして踵を返す。

 武器を持った相手にここで囲まれたら分が悪い。

 ただでさえ大人数が相手なら囲まれて袋叩きにされるのが目に見えているし、地の利だって向こうにある。

 なので囲まれない様に動き、素早く仕留める戦法で迎え撃つ。

 そして最終的に自分をこんな状況に追い込んだ、変な一人称を使うあの黒髪の女をとっちめてやる。


(さっきの酔っぱらい共は素手だったから俺も素手で応戦したが、今回はこの女どもが全員武器を持っていやがる。だったらこっちも遠慮無く武器を使わせて貰う!!)


 本来であればあの訓練場で使った広範囲の魔術で簡単に一掃出来るのだが、あいにくあの薬の効果がまだ続いていて魔術が使えなくなっている状態なのが頭に来る。

 しかしそれを今嘆いても仕方が無いので、まずは囲まれない様に適度に距離を取りつつ振り返って槍を突き出し、先頭を走って来た女のショートソードを手から吹っ飛ばした。


「うっ!?」

「うらっ!」


 続いてその後ろの女が構えている弓の向きを把握したレウスは、横っ飛びで転がりながら飛んで来た矢を回避しつつ狭い路地へと逃げ込んだ。

 こうした狭い場所では槍を自由に振り回せないのだが、槍を突き出して攻撃するなら話は別。

 自分を追い掛けて路地に入って来た槍使いの女の足をレウスは自分の槍で突き、負傷させた上で顔面を足の裏で蹴ってノックアウトさせる。

 その後に力任せに突っ込んで来たバトルアックス使いの女に対しては槍を構えるのが間に合わないと判断し、しゃがみ込みつつ一気に女の懐に潜り込み、その身体を持ち上げて別の女にタックル。

 流石に仲間の身体目掛けて相手に武器を振るう事は出来ないのか、その後ろに居たさっきのショートソード使いの女が躊躇したのはレウスにとって大きなチャンス。


「うらああああっ!!」

「ぐへっ!?」

「がはっ!!」


 バトルアックス使いの女の身体と壁との間にショートソード使いの女の身体を挟み込んでやり、衝撃で二人が呻いた所にハイキックで側頭部を蹴って倒す。

 その後に自分を追い掛けて来た弓使いの女が、路地の中に居る自分に向かって弓を構えたのを見て、レウスは咄嗟に槍をその弓使いの女に向かってぶん投げた。


「っ!?」

「このやろおおおおお!!」


 槍を投げて間髪入れずに自分も走り出す。

 幾ら弓から射られる矢が脅威だとしても、槍をぶん投げられれば流石にびびる。

 その心理作戦を駆使して、槍の回避の為に反射的に弓を下ろしてしまって再び構えるまでのタイムロスをしてしまった女に向かって、レウスは強烈なラリアットをお見舞いする。


「ぐがっ……!」


 奇妙な声を上げながら、首を中心にして一回転しながら地面に叩きつけられた弓使いの女もこれで倒して、後は路地を出たすぐの所に残っているロングソード使いの女だけだ。

 しかし、彼女はレウスの強さに腰が抜けてしまってその場にへたり込み、動けなくなってしまっている。


「い、いや……来ないで……!!」

「来ないで? 先に向かって来たのはそっちだろうが。一体何がどうなってるんだよ? さっきの黒髪の女は一体お前等と何の関係があるんだ? 俺、あの女なんて知らないんだけど」

「え……そうなの?」

「そうだよ。人の事をレオンだとかって呼んでたけど、俺の名前はレオンじゃない……三文字なのは合ってるけどさ。何がどうなってるのか説明してくれ。このままじゃ俺、完全にとばっちりだよ」


 真面目なトーンでそう言うレウスに対し、ロングソード使いの女は彼にこれ以上の敵意が無いと判断して立ち上がる。


「あ……あの女は私達が使用人をやっている貴族の屋敷で一緒に働いていた人なんだけど、ご主人様に襲われそうになったと嘘をついて屋敷を解雇されてな。その後にその屋敷に盗賊が忍び込んで何かを盗み出されたらしいんだが、ご主人様の見立てではその盗賊とあの女が繋がっているんじゃないかって話になってね。だから私達があの女を捜していたのさ」

「嘘……ねえ」


 確かにさっき、自分もとんでもない嘘をあの女に並べ立てられた結果がこの有り様なのだ。

 しかもそれが原因で襲われる破目になった自分を放っておいて、あの女はさっさと何処かに姿を消してしまったのだからどうしようも無い。

 それを考えると、レウスの心の中に沸々とさっきの黒髪の女に対して怒りと憎しみの感情が湧いて来た。

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