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702.どうして一緒に行けないの?

 しかし、ここに来てアンフェレイアはレメクの姿になっても一緒に行けないと言い出したのだ。

 しかもその理由が至極当然と言えるものだったので、それにはレウス達も納得するしか無かった。


「えーっ!? どうして一緒に行けないの?」

『私はこの世界の神だからね。このルルトゼルの村の全域が、今回の被害にあった。こうして砲撃を受けて壊滅状態寸前にまで追い込まれているの。だからそれを見過ごす訳にはいかないわよ』

「まぁ、それはそうか……」


 今回は確かにこのルルトゼルの村がこうして砲撃を受けた。

 しかし、だからと言ってこの村にばかり目を向けているべきでは無いんだとソランジュがアンフェレイアに説明する。


「しかしだな、お主の言う事も分かるが……それだったらこの村に限った事では無いんだぞ。前に話を聞いていると思うが、この村の他にも砲撃を受けた場所がある」

『ええ、知っているわよ。シルヴェン王国の王都のシロッコでしょ?』

「そうだ。お主の言い分だとそっちも助けると言う話になると思うが?」


 まさかこの村だけを助けて後はさようなら、なんて訳ではあるまい? とソランジュが詰め寄れば、アンフェレイアはそのクリっとした大きな瞳をパチパチと瞬きさせてから頷いた。


『勿論よ。だけどアンフェレイアのこの姿じゃあ、人前に出られないと言う話もした筈よ。だからそのシルヴェン王国に行くのであれば、私はレメクの姿となって向かうわ』

「だったら、お主はシルヴェン王国も助けると言う事に同意するんだな?」

『ええ。この村の救援が一通り終わり次第、すぐにそっちの方に向かって裏から少しずつ手を回して救援するわよ。それまではまず、この村を助けて復興する事が先決だからね』


 事実だけで言えば、どちらの被害もかなり大きい。

 なのでこの世界の神の片割れとしては、そのどちらの被害も見過ごす事が出来ない以上レウス達のこれからの旅について行く事は出来ないのであると言うのだ。

 しかもこの問題、彼女だけでは無くてリーフォセリアからやって来たギルベルトも一緒について行けないと言う。


「エドガーの奴が裏切っただけじゃなくてよ、最近はあのレウスの両親がまた何かを企んでいるらしくて、リーフォセリア王国内で何かをしようとしているらしいんだ」

「え……あの二人が?」

「そうだ。だってあの二人はもうカシュラーゼ側に寝返ったんだからな。俺達だって警戒するのは当然だろう。今はリーフォセリア国内で表向きは変わらずにアーヴィン商会として活動しているけど、実際なカシュラーゼに対して色々リーフォセリア国内の物資を横流ししたりとか、カシュラーゼ国内にあるエスヴァリークの軍事基地に対して何かを仕掛けようとしているとかって噂もあるからな」

「まぁ、やろうと思えば確かにやれるとは思うけど……」


 これまで遭遇して来たカシュラーゼ側の敵の勢力の中に、自分の両親が全然居なかった事もあって、すっかりその事実を先程自分でここでみんなに説明するまで忘れていたレウス。

 だが、こうしてギルベルトからその名前を出されるとやはりこれは現実なのだと認めるしか無い。


「俺は俺でもう少しだけこのルルトゼルの村の復興作業を手伝うと同時に、リーフォセリアに戻る前にドゥドゥカス陛下にこの事を報告する。その上でアーヴィン商会とマウデル騎士学院に騎士団を常駐させ、動きを見張ると同時に学院長と商会の権限を全て停止する」

「分かった。それじゃあ大至急それを頼むよ。あいつ等が逃げてしまった以上、何を仕出かすか分からないからな」

「勿論やってやっから安心しておけ。それから東の砂漠な。あそこはあいつ等が逃げて行ったソルイール帝国との国境になっているから、そっち方面からあいつ等がリーフォセリアに入る可能性だってある。だからそっちにも騎士団の部隊を派遣しておくぞ」


 リーフォセリアからは今の所、何もカシュラーゼに関しての被害の話は聞こえて来ない。

 しかしそれは、カシュラーゼ側に寝返ったレウスの両親や学院長のエドガーが居るからこそ手出しが出来ない状況なのかも知れない。

 ソランジュを始めとするパーティーメンバー達は、今のやり取りを聞いていてそう思っていた。


「で、君達は南西のエレデラム公国に向かうんだったな?」

「ああ、そうだよ。だけど良く場所を知っているな」

「場所だったら世界地図があるから分かるよ。そこがどんな国なのかとか、どんな文化があるのかって言うのは、私達は長年外の世界との関わりを断って来ているから人伝いに少ししか知らないけど」

「だろうな……」


 そりゃあ、あれだけ拒絶していればそうなるだろうなとレウスは呆れ顔ながら納得する。

 しかし、この後にボルドが言った事はレウス達にとって……いや、村の住人全てにとって意外だった。


「だから、私達もこれからは少しずつだけど外の世界との交流を持てれば良いと思う」

「……はい?」

「ちょちょちょ、いきなり何を言い出すのよ?」


 言葉を失うレウスに続いて、普段は感情の起伏を余り見せないアニータも驚きを隠せない。

 あれだけ嫌っていた外の世界と交流を持ちたい? それは何故だろうか。

 天地がひっくり返ってもあり得ないレベルの話が持ち上がった事について、村長のボルドは自分の正直な思いを口に出し始めた。

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