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701.大勢の前で

 大雨が降った夜から一夜が明けて、レウスはオルエッタの意識が回復するのをずっと待っている内に眠ってしまったらしい。


「レウス、ねえちょっとレウス!!」

「……はっ!?」

「あー、やっと起きたわね。全く……急に姿を消したと思ったら結界を解いて戻って来たって話だし、オルエッタ陛下と一緒に石碑の所で雨を降らせたって聞いてびっくりだし……」


 目を覚ました自分の目の前でそうペラペラと話すのは、心配そうな目つきでレウスの顔を覗き込んでいるアレットだった。

 その横では彼の様子を同じ様に心配しているサイカやティーナ等のメンバーがおり、ベッド脇の椅子に座ったままの状態であるのは変わらないらしい。


「えーっと、あれ……あっ、オルエッタ陛下は!?」

「陛下でしたらすっかり回復されまして、今はフェイハン騎士団長やリーフォセリアのギルベルト騎士団長と一緒に、各地区の重傷者を中心に救護活動に向かわれましたわ」

「そうか……だったら俺もすぐにそこに合流して……」


 手伝いに行こう、と思ったレウスのその考えは村長のボルドによって止められた。


「いや、君にはまだここに居て貰わなければならない」

「何でだよ?」

「君やあのアンフェレイアと呼ばれているドラゴンには、まだまだ聞かなければならない事が出来たからね。例えばそこに置いてある箱の中身の話とか、勝手にここから持ち出したチェーンの謎とかを全て含めてね」

「そうだな。私達を置き去りにして行っただけじゃなくて、貴様は何か重大な事を仕出かして戻って来たみたいだからな……」


 置き去りにされた側のエルザがそう言いながら、レウスに対して目が笑っていない笑みを浮かべて詰め寄る。

 その迫力に対して、レウスは反論する事も出来ないまま「……はい」と頷くしか選択肢が無かった。



 ◇



「お待たせ、アークトゥルスの生まれ変わりの方」

「それじゃあ早速、私達に対して色々と話をして貰うわよ」


 取り残されたレウスがエルザとドリスに見張られていた一方で、他のメンバーが救護活動に当たっていたのがひと段落してようやく集まった。

 ただし集まったのはレウスが眠りから目覚めた北区画の村長の家では無くて、ライオネルの石碑の前だった。

 それは色々と説明をするのに都合が良いと言う、レウスのリクエストによるものだったのだ。


「……しかも、説明をする場所にどうしてこんなに集まっているんだ?」

「こんなにじゃないよ。これだけだよ」

「いや、ますます頭が混乱しそうなんだがな。確かに中央区画はこのライオネルの石碑しか無い野原な訳だが、それにしても多すぎじゃないのか?」


 レウスとアンフェレイアの目の前には、この現代にあり得ない存在として君臨している一人と一匹の話を聞きたいと言う村人達が大集合していた。

 その数、およそ二百人。

 そもそもこんな場所で話を聞いているよりも、さっさと救護活動の続きをしに行けと言いたいレウスだったのだが、そこはそう言う前に村長のボルドが理由を説明し始めた。


「確かに君の言う通りだ。でも、君達はこうして部外者としてこの村に入って来た訳だし、その君達の活躍によってこの村の火災が食い止められたって事もあるから、各地区からその話を聞いておきたいって住民達がこうして集まったのさ」

「救護活動の方は大丈夫なのか?」

「ああ。ひと段落ついたしまだまだ住民は沢山居るから、その住民の中の一部にしか過ぎない。その残っている住民達に救護活動や後片付けを任せてあるから、君達は何も心配せずに自分達の素性やこの箱の事を話してくれれば良いんだよ」

「良いのかよ……」


 村長にそう言われてしまうと、この状況で逃げられる筈も無いので話すしか道は無い。

 ドラゴンの姿になっているアンフェレイアと顔を見合わせ、レウスは今までの事を事細かに話し始めた。


「あー……長くなった。これで一応は信じて貰えたか?」

「ああ。途中で帰ったのもいるみたいだが、それもほんの少しで大半が熱心に君の……いや、君達の説明を聞いていたよ」

「そうなると、クルト湖のあの結界を作ったのはかつての五勇者の内のエレインとライオネルって事になるのかしらね」


 しかし、オルエッタのそのセリフにレウスは首を傾げる。


「そうだと思いますけど……でもあいつ等にあんなに強力な結界を張れるだけの魔力や魔術の才能は無かった様な気がします」

「そうなの?」

「ええ……あの二人よりももっと可能性があると言えば、それこそイーディクトの建国に関係しているトリストラムの方ですよ。あいつは魔術師でしたからね」


 もしかしたらこの結界の話にトリストラムが関係しているのか?

 あの時、エヴィル・ワンと一緒に殺されてしまったレウスには何も分からないので、一番事情を知っていそうなアンフェレイアに目を向ける。

 しかし、彼女もこの世界の神としてこの世界の全てに気を配らなければならない以上、細かい所までの監視は出来ないらしいのだ。


『……だから、私もその結界を誰が作ったのかまでは分からないのよね」

「じゃあ結局の所、今の時点で手掛かりとなりそうなのはエレデラム公国に向かったって書いてあるこのエレインのメモだけか……」


 そうなれば、必然的に自分達が次に向かう場所が決定した。

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