表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

702/875

699.嵐の杖

 どうして彼女達がここに居るのだろうか?

 さっき誰かが言っていた様に、ここに騎士団が来るまでの時間がかなり速過ぎる様な気がする。

 これは絶対に何かがあると確信したレウスだったが、オルエッタから直々に出て来た答えは予想もしないものだった。


「まさかこの世にテレパシーと言うものがあるとは驚いたけれど、ここにこうやって来てみてその内容が事実だと知ってもっと驚いているわ」

「え……テレパシーって?」

「頭の中に直接声が響いて来たんだ。カシュラーゼの女王レアナだと名乗る声からな」

「ああ……」


 それを聞いてレウスは納得する。

 彼女だったら確かにテレパシーが使えるし、実際に連絡を受けた事も何回もあるのだから。

 しかし何故、レアナ女王が自分達では無くてオルエッタやフェイハンにテレパシーを送って来たのかがレウス達には不思議だったのだが、それはフェイハンが部下達に村の中の救援を始める様に指示を出してから話し始めてくれた。


「今、こうやってあたし達がここまでやって来たのもそのテレパシーの情報なのよ。カシュラーゼの女王であるレアナ様が言うには、自分は今カシュラーゼの中に閉じ込められていて、そこでこのルルトゼルの村が砲撃されると言う計画を聞いてしまった。しかしそこは人間が近寄る事すら禁止されている村なので、どうやって伝えるかを悩んでいたらしいんですって」


 レアナがあのエドガーの会話を聞いた後、塔の中に戻ってまた新しい情報が手に入るまでじっと待っていた。

 すると、何とそのエドガーが直々に塔までやって来たのだ。


「ご機嫌いかがですかな、レアナ女王陛下?」

「……」

「ふふ、ご機嫌はよろしくない様ですね。俺はこれからちょっくら出かけて来ますので……」


 それを聞いたレアナは、窓の外を見つめたままエドガーに対して問い掛けてみた。


「もしかして、まだあのアークトゥルス様の生まれ変わりを追い掛けるおつもりですか?」

「そうだな。それ以外に俺の行動原理はねえからな」

「薄っぺらい……」

「ふん、何とでも言うが良いですよ。どうせこの世界は五百年前と同じく、またあのドラゴンの業火に包まれるのですからねえ」


 そのエドガーのセリフに対し、ようやく振り向いて会話をする気になったレアナが詰め寄る。


「まさか……あの魔術師ディルク様よりもエヴィル・ワンに執着しているのは貴方なんじゃ!?」

「それは貴方が知らなくても良いんですよ、レアナ女王陛下。それでは俺は急ぎますのでこれで」

「くっ……!!」


 はっはっは、と高笑いをしながら出て行ってしまったエドガーの背中を見つめ、レアナはグッとこらえてチャンスを待った。

 するとその後、見張り達が大砲でルルトゼルの村を砲撃すると言う噂がどうのこうのと話していた。そしてそこにライオネルの弓があるのだと言う話も。

 もしそれが本当だとしたら、きっとアークトゥルスの生まれ変わりのあの男が率いているパーティーも向かう可能性が高い。


「でも問題は、貴方がアークトゥルスの生まれ変わりだって言う話よりも砲撃が行なわれるって事だったの。だからそれについてあたし達にしっかりと後で説明して貰わなければならないんだけど、それよりも前にオルエッタ女王陛下がやらなければならない事があるのよ」

「やらなければならない事?」

「そう。この村の中心に案内して貰えるかしら? そこでこの村全体で起こっていると思わしき、砲撃による火災を一気に消すのよ!」

「えっ……?」


 思いっ切り唐突な話である。

 アイクアルの女王陛下であるオルエッタが直々にここまでやって来たのが、レウス達にとってかなりの手助けになるのだとフェイハンは言う。


「レアナ女王陛下からこのルルトゼルの村に危機が迫っているって聞いたから、私もこうやって久しぶりにこの杖に触ったの」

「え……その杖って?」

「これがあの時、私が雨を降らせる為に神殿に突き立てた杖。ここで同様の効果が得られるかどうかは分からないけど、やってみる価値はあると思うのよね」

「あ……はい。分かりました。それだったら俺が案内しますよ」


 と言う訳で、この非常事態の中でレウスはフェイハンを現場の指揮に当たらせ、オルエッタと二人きりであのライオネルの石碑の前に再びやって来た。


「これがあの有名なライオネルの石碑なのかしら?」

「そうですよ。ここにそのライオネルの弓があります。それはそれとして陛下、まさか……」

「はい。ここであの奇跡を再現してみる価値はあると思うんです」


 かつて大干ばつが起こった時に、オルエッタが直々に神殿の祭壇に杖を突き立てた事で暴風雨が巻き起こり、それに伴って大雨が降った事で干ばつから救われた。

 それによって彼女が「嵐の杖」の異名を持つ様になったのだが、今度はその暴風雨によって大雨を降らせるらしい。


「暴風雨ってなると、風で火災が拡大したりしませんか?」

「そこは上手くコントロールしてみますわ。それでは私は集中するので、少し話し掛けないでね」


 オルエッタ女王がそう言い、手に持っている虹色に輝く宝玉を取り付けてある杖を地面に突き立てる。

 雨を降らしてこのルルトゼルの村中の火災を消火すると言い出した、この結末はいかに!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ