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698.逃げたぞ!!

 しかし、何が起こっているのか分からないのは村に残されていたメンバー達の方もレウス達と同じである。

 今までこの村の中に居なかったレウス達が、アンフェレイアと一緒にいきなり夜空から舞い降りて来た。

 それだけに留まらず、村の外からアイクアル王国騎士団の旗を大量に掲げている騎士団員や魔術師達がやって来ている。

 双方何がどうしてこうなっているのか分からないままだが、とりあえず今はアイクアル王国騎士団の団員や魔術師達と協力して、ルルトゼルの村の惨状がこれ以上広がる前に止めるだけである。


「……簡潔に話すとこんな感じだ」

「良し分かった。だったら村長は騎士団の隊長と一緒に行動してあげる部隊の振り分けをしてから四地区それぞれに向かって救護活動をするんだ。俺やアンフェレイアは特に重傷な住民達を優先して救出して治療する。残りのメンバーは全員四地区に分かれて救護活動をしろ!!」


 事態の情報収集をして戻って来た村長のボルドから話を聞いたレウスは、先に消火活動や救護活動に向かったメンバー達に続いて他のメンバー達もすぐに向かう様に指示を出す。

 しかしその時、東地区からやって来た豹獣人の男が血相を変えた様子でレウス達の元にやって来た。


「そっ、村長……大変ですっ!!」

「今度は何だい?」

「東地区で拷問に掛けていた、あの人型爆弾を持ち込んだカシュラーゼとダウランド盗賊団の連中が逃げましたっ!!」

「は……?」


 次から次へと問題がのしかかって来て、今にも卒倒してしまいそうなボルド。

 しかし、そのボルド村長を支えたのがレウスだった。ボルドを支えたまま先にそれぞれが村の被害を食い止めに向かえと指示を出し、自分と村長でその豹獣人の報告に耳を傾ける。


「おいしっかりしろ、村長!!」

「うう……もう私は何が何だか……」

「仕方無い、代わりに俺が話を聞こう。あの拷問を加えていた連中に逃げられたってのはどんな経緯だ!?」

「そ、それが……」


 豹獣人の報告によると、その捕らえた獣人やカシュラーゼの手先の連中を拷問に掛けていたこの村の住人達だったが、実際にはその拷問途中で突然リーダー格の黒髪の若い男が交渉を持ち掛けて来ていたらしいのだ。


「そいつが本当にそう言ったのか?」

「ああ、間違い無いよ。俺達の仲間になればこんな窮屈な村から抜け出せるんだし、今までよりも楽で豪勢な生活を保障してやるぞって……」

「でもそんな話、長い間この村の中だけで生活していたあんた達なら当然断ったんだよな?」

「いや、それがだな……」

「ん?」


 そのリアクションに一抹の不安を覚えたレウスの感情は、悪い意味で大当たりしてしまったらしい。

 豹獣人の報告によれば、表には出さないだけでこの村の閉鎖的な空気に嫌気が差していた獣人がそれなりに居たらしい。


「おいおい、それじゃ普通に考えて裏切った連中が居るって話か?」

「ああ。俺達は恨みを持った住民達であいつ等を拷問していたんだが、そいつの誘いに乗ってしまう様な単純な住民も結構居てさ……」

「それで感情が揺れ動いて、この村から抜け出たい連中がそっち側に寝返ったと……?」

「ああ、そうなんだ……」


 総勢でおよそ五十名程、村を裏切ってカシュラーゼ側についた住民達が手引きをして、あの人型爆弾を運んで来た連中を全員逃がしてしまったらしいのだ。


「拷問はしていたんだよな?」

「勿論さ。石をぶつけたり火で炙ったり、指を切り落としてみたり爪を剥いでみたりしてさ。でも殺すまでやってしまうとまずかったんだよ。色々と話を聞き出さなきゃならなかったから」


 しかし、ずっと連続で拷問を続けるのは疲れるのでローテーションでやる事にした。

 それがいけなかった。

 ローテーションした住民達が少しずつ、その拷問されていた側の連中を縛っていたロープを解いたり、寝返りを持ち掛けたラスラットに懐柔されたりしていたのだ。

 ラスラットはラスラットで拷問前に、元々強力な魔術防壁を自分の身体に掛けていたので大したダメージも受けておらず、その懐柔した住民達に手伝って貰ってこの村から逃げる算段を立てていたらしい。


「その裏切った連中は、北区画にある地下通路を通ってソルイール帝国方面に逃げて行ったらしい。あの穴を塞いでいた途中だった上に、そいつ等が隠し持っていた小型の爆弾として使える魔晶石で通路を爆破して、埋めて逃げてしまったんだってよ!」

「くっそ、そうなると奴等は上手く逃げおおせてしまったって話か。それとこの村にあるライオネルの弓に関しては、まさか奴等に取られたとかって言わないよな?」

「いや、それについては俺達は何も聞いていない。俺達が知っているのはここまでだ」


 どうやら色々とややこしい事になっているらしいのだが、とにかく今は自分も救護活動に向かうべく走り出そうとしたレウス。

 そんな彼の元に、聞き覚えのある声が掛かったのはその時だった。


「ちょっと待ってよレウス。あたし達も救護活動に参加させて貰うわよ!」

「え……あ、あれっ?」


 レウスは思わず目を見開く。

 それもその筈で、そこに居たのはアイクアル王国騎士団長のフェイハンと、女王陛下のオルエッタだったからだ。

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