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694.回してみると……

 レメクにあの地下迷宮の奥の部屋まで連れて行って貰って、鍵を差し回す。果たして無断でそんな事をやって良いものだろうか? と未だに戸惑うレウス。

 しかし、レメクは自分の立場を口に出してレウスの心を揺さぶった。


「でも、本当にあの村長に無断で出て行って良いのか……?」

『何を弱気な事を言っているのよ? それでも五百年前にエヴィル・ワンを討伐したアークトゥルスの生まれ変わりなのかしら?』

「いや、そりゃそうだがそれとこれとは話が別じゃあ……」

『だったら考えてみて。私とあのボルド村長のどっちが偉いのかを』

「え……?」


 思いもよらなかった質問に対し、レウスの目が丸くなる。そんな彼に対して、もう一度同じ質問を繰り返すレメク。


『だから、私とあのボルド村長のどっちが立場的に上なのかを考えてみてくれって言っているのよ』

「立場的に……って、そりゃあこの村の村長は確かにあのボルドって人だけど、レメクの立場は……神様?」


 待ち望んでいた答えに対して、レメクは満足そうに頷く。


『そうよ。私はこのエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界の神の片割れ。かたやあのボルドって人はこのルルトゼルの村の村長。確かにここは獣人の村であり、国と言って差し支えない程の領土の広さがある。例えそれがアイクアル王国の領土の中にある村でなのに、独自のルールで動いている様な村であってもね』

「だけど、そんな村の村長であっても神である自分の方が偉いと?」

『ええ、当たり前じゃない。もっと言えばこのルルトゼルの村はアイクアル王国の領土内にある村なんだから、村としてじゃなくて国として見るんだったら当然このアイクアルの女王であるオルエッタ女王陛下の命令に従わなければならない筈よ』


 今は自分達のルールに沿って生活をしているし、いざと言う非常事態になった場合でもその外部からの干渉をことごとく拒んで来たルルトゼルの村の獣人達。

 しかし、神である自分の方がこのルルトゼルの村の村長であるあのボルドよりも偉いと言う事は、絶対にあり得ないのだとレメクは力説する。


『だからレメクとしてでは無くて、アンフェレイアとして……この世界の神の片割れとして私が許可をします。適当にメモを残して今から出発しましょう』

「い……今から!?」

「暗闇でも飛べるの?」


 ティーナとアレットがそれぞれ別の疑問を口に出すのだが、レメクは当たり前だと言わんばかりの口調で素直に答えた。


『それはそうよ。カシュラーゼの連中だって、この村の東地区で仲間達が拷問をされているって言う話を何時までも知らない筈が無いと思うわ。特に、あなた達の話の中で出て来たディルクって魔術師は何を仕出かすか分からないんだし、騎士学院のエドガーって人もカシュラーゼ側に回って何処で何をしているか分からないんだから』

「まあ、それはそうだけど……」

『それに、エメラルドグリーンの私の身体を見られない為には真夜中の今が一番都合が良いのよ。それに私は夜目だって利くわ。暗闇だろうが雷雨の中だろうが、ハッキリ言って何も問題じゃないのよね』


 それでまだ何か文句でも? と一気にまくし立てて来たレメクに対して、反論出来る者はこの家の中に誰も居なかった。

 なのでテーブルの上にメモを残したレウス達は、レメクの姿から本来のアンフェレイアの姿に戻った彼女の背中に乗り込み、お湯と一緒に暗闇の中に向かって迷い無く飛び立った。


『さて、その地下迷宮の場所や出入り口は分かるかしら?』

「あ、うん……私が一度ソランジュと行ったから分かるわよ。だから今から案内するわ」


 アレットの案内によって、夜闇の中を一気に突き抜けて飛んで行ったアンフェレイアはその砂漠へと辿り着いた。

 照り付ける太陽の光が無い分、全然暑くない……と言うよりも寒いレベルだ。


「うう……寒いですわ!」

『砂漠って言うのは太陽の熱を吸って暑くなる日中と、夜になって地表から熱が逃げる夜間で寒暖差が凄いから、それは仕方が無いわよ。それよりもこの地下通路を案内してよね』

「ああ、それじゃあこっちよ」


 あの岩の仕掛けを解いたのも記憶に新しいまま、レウス達や再び人間の姿になったレメクを引き連れてアレットはその地下の部屋へと舞い戻って来たのだ。


「これがそうなの?」

「ええ……ほら、これがその問題の鍵穴よ」

「分かった。それじゃあさっそく差し込んでみよう。……と言っても今までの飛行と砂漠の寒さでお湯が冷えているから、アレットの火属性の魔術で再び沸かしてくれ」

「分かったわ」


 物珍しそうな表情でしげしげと機械を眺めているアニータの横で、再び沸騰したお湯の中にチェーンを入れて変形させるレウス達。

 そして問題の鍵穴には……。


「あっ、ピッタリ!!」

「推測は間違っていなかった様だな。それじゃあどっちかに回してみろ」

「うん!」


 レウスに言われて、アレットは右に向かってクイッと鍵を捻った。

 するとそれと同時に、バッと明後日の方向に向かって勢い良く顔を動かしたレメクが奇妙な事を言い出したのである。


『あ……魔力が無くなったわ……』

「えっ、どう言う事?」

『そのままの意味よ。南の方から感じていた強い魔力が消え去っちゃったの』

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