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64.推測

「赤毛の奴等はバランカ砂漠に向かったとの情報があった。だけどあそこにはサンドワームが未だに居るらしいからな。だから俺はソルイール帝国の港町に向かう方を選ぶよ」

「ああ、私もそれが良いと思う。「ベルフォルテの町」って言って、古くから栄えている港町らしい。帝都の広さには及ばないけど、南から船でやって来る旅行者とか冒険者達の玄関口になっているんだってさ」

「へぇ、それじゃそこで情報収集も出来そうな気はするけどな」

「でも余計な事はしない方が良いと思うけどね」


 アレットがレウスに釘を刺しておき、東の隣国ソルイール帝国に逃げた赤毛の二人やセバクターを追い掛けてこっちもいざ出発だ。

 合流した三人はそれぞれが手に入れた情報を基に、自分達までリーフォセリア王国騎士団に完全に指名手配されてしまう前に脱出すべきだと考えた。

 このタニーの港町までは、まだ学院爆破の容疑が自分達にも掛かっているとの情報が回って来ていない。

 もし容疑が掛けられている情報が届いてしまえば、港が封鎖されて検問が設置されるだろう。

 だからこそ自分達もソルイール帝国に向かいたいのだが、アレットが酒場のマスターから手に入れた情報通りで、あいにく今日のソルイール帝国との往復便は終わってしまったのだと言う。


 なので、その日はタニーの町の外れにある宿を取って目立たない様に一夜を過ごす事にした。

 騎士見習いの身分で余り金を持っていないのもあり、船代を考えてそれなりのクオリティのボロ宿にしか泊まれない。

 それでも食事を摂れる場所と部屋があるだけマシだ、と言い聞かせて三人は一緒の部屋で眠る事にする。

 本当は男女別に部屋を分けたかったのだが、別々に部屋を取れば代金も別々に掛かってしまうのでそこまで贅沢は言えないのだ。


「あ~~~、何でこんな事になったんだろうな」

「全くよね。そもそも私達が誘拐されるのって変じゃないかしら?」


 うんざりした表情を見せながら、二つあるベッドのそれぞれに寝っ転がるエルザとアレットに対し、レウスはウォレス達が自分達を連れて来たあの建物で見つけた書類の事を思い出していた。


「……その話についてだが、あそこの書類で得た情報によるとどうやら俺を誘拐して、大人しく従わせる為に俺と関係の深い人間を連れて来るって計画だったらしいな」

「あー、確かにそんな事が書いてあったな。だけど私やアレットはそこまで貴様と関係は深くない気がするんだがな?」

「そうよねえ。最初の森で出会って学院まで一緒に来て貰って、その後の成り行きで学院に入学する様になって、同じ騎士見習いって言う立場になっただけに過ぎないのに……」


 心底不思議である。

 そもそもそれだって、自分達三人がなるべく一緒に居る所を見ていない限りそう思えないだろうとレウスは考える。

 だが、その推測が可能な人物に心当たりもある。


「やはりセバクターが容疑者と見て間違い無いな。俺達と一緒にエドガーさんの元に向かった事もあるあの男なら、ウォレス達に俺達がそれなりの関わりがあるって伝える事も出来るだろうし」

「うーん、それは確かにそうよね。それに学院長の所だけじゃなくて、ギルベルト騎士団長の所にも私とレウスと一緒に行った記憶があるから、今回の指名手配の件にしてもギルベルトさんに情報が届く様に誰かに頼む事が出来るかも知れないわ」

「えー? 出来るかな? それって考えすぎじゃないか?」


 幾ら何でもそれは話が出来過ぎてるだろうと呆れるレウスだが、一緒に話を聞いていたエルザは納得した表情を浮かべる。


「いいや、彼の実績を考えるとそれは幾らでも出来ると思うぞ」

「え?」

「だって、彼は世界中で活躍している傭兵なんだろう? 各国で名を売っている訳だし、学院で貴様とセバクターが手合わせするのを学院中のみんなに伝えた時だって、実に多くのギャラリーが詰めかけた事からも分かる通り大人気だったじゃないか。学院の中だけであれだけ彼を慕う者が居るならば、学院の外に彼を慕う者が居ても何ら不思議では無いだろう」

「そりゃまあ、確かに……」

「だったら、自分を慕う人間に対して金を積んで、嘘の情報を上手くこっちの騎士団に報告して私達を犯罪者に仕立て上げる事だって可能となる。人気がある人物は、そうやって世論を誘導する事も可能なんだろうな」


 そう言われれば納得できるが、かと言って容疑者として逃げている人間がそこまで出来るもんなのかな? とレウスは疑問に思わざるを得ない。

 彼は心の中で引っ掛かりを覚えつつも、今の時点ではエルザの言っている事が一番説得力がある。

 その二人のやり取りに対して、横からアレットが口を出して来た。


「とにかく、私達はまずソルイール帝国に向かいましょう。今ここで色々考えても埒が明かないし、私もエルザもこうは言っているけど全部推測にしか過ぎない訳だし」

「……そうだな。考えるのは何時でも出来る。まずは無事にソルイール帝国に向かう事だけを考えよう。俺は床で寝るから二人はベッドで寝ろ」

「良いのか?」

「ああ。こう言うのは前世で慣れてるよ」


 こうしてアレットとレウスで強引に会話を終わらせ、三人はこのボロ宿の一室で夜を明かすのだった。

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