表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/875

63.情報収集

 タニーの港町で情報収集を始めた三人だったが、事態はかなり深刻な様だ。

 一旦離れ離れになる前に決めた、レウスは赤毛の二人組の情報を追い掛け、エルザは騎士団の動きを調べに行く。

 そしてアレットはセバクターの情報を集めていたのだが、それなりに目立つ髪の色をしていて世界中で傭兵として活動している彼がここにある酒場に立ち寄った、と言う情報をそこのマスターから手に入れたのだ。


「ピンクの髪の……あー、そんな格好の奴だったらこの店に来たよ」

「本当ですか!?」

「ああ。三日前だったかなあ、見慣れない奴だったからここに来たのは良く覚えてるよ」


 しかし酒場のマスターは毎日何人もの客を相手にしている上に、この国に久々に戻って来たとセバクターが自分で言っていた事もあって、彼自身の素性については知らない様子である。

 アレットにとってはそれは逆に都合が良いので、セバクターがマウデル騎士学院の爆破事件の容疑者として追われている事は伏せた上で彼がどちらに向かったかを聞いてみる。


「そうなんですね。私、その人と会う約束をしていたんですけどどちらに向かったか覚えてます?」

「いや、そこまでは分からないなあ……あ、そうそう思い出した。その男だったらベルフォルテって町への船が何処から出るのかってのを俺に聞いてたなあ」

「ベルフォルテ? それってリーフォセリアの何処の町ですか?」


 この国の中にそんな町なんてあったかな? と首を傾げるアレットだが、マスターの初老の男は彼女が首を傾げるのも仕方が無い答えを伝える。


「いや、違うよ。ベルフォルテってのはリーフォセリアにある町の名前じゃなくて、隣のソルイール帝国の下の方にある港町の事さ。そこにはここから定期的に船が往復便で出ているんだよ」

「あら、そうなんですか? 一日に一回出ているんですか?」

「そうだよ。バランカ砂漠にはサンドワームが出没するって情報があるのは知っているか?」

「ええ、それは聞いた事があります。冒険者達が恐れる魔物で、そこを通るのは危険だからって話ですよね?

「そうそう。だからそこを通るよりも船で海を通って、迂回する形でソルイール帝国に向かう人が多いんだよ。足元を見ているのか船の代金はちょっと高めだけど、安全にソルイール帝国に向かうんだったらそっちが良いだろうね」


 何と、エドガーのアドバイス通りにバランカ砂漠へと逃げなくてもソルイール帝国に向かう事が出来るらしい。


「じゃ、じゃあ私もその船に乗って彼を追い掛けます! 何時出発するんですか?」

「君も行きたいのか。でも少々遅かったな。今日の定期便はもう終わってしまったから、明日の朝にまた港で待っていれば良い。緑色に塗られているマストが使われている船だから、一目で分かると思うよ」

「分かりました、ありがとうございます!」



 ◇



 アレットがその情報のお礼代わりにオレンジジュースを一杯注文している頃、エルザは騎士団の詰め所に向かって道を尋ねるのを兼ねて色々と話し込んでいた。


「……で、こっちに行けばバランカ砂漠だ。でも本当に行くのかい? ここからはソルイール帝国に定期便が出ているからそれを使って向かえば良いと思うけど」

「気持ちだけ受け取っておきます。私は船酔いしちゃうので、船はなるべく避けたいんですよ」

「そうか……それなら仕方が無いね。最近は王都の騎士学院にドラゴンが現れたとか、爆破されたとかって話もこっちまで届いているから物騒だよね。ところでソルイール帝国まで何しに行くの?」

「観光です。纏まった休みが取れたので、余り行った事の無いソルイール帝国に行こうかと。それじゃ友達と待ち合わせしてるんで、ありがとう!」

「ああ、気を付けてね」


 詰め所の騎士団員に根掘り葉掘り聞かれる前にさっさとその場を離れたエルザは、今の会話の中で情報がどの程度こっちまで回って来ているかを推測出来た。


(ふむ、あの様子だとそれなりに情報が回るのが早いな。通話魔術もある事だし、さっき私達があの通話魔術のスポットで色々話していたのを周りの人間がどれだけ聞いているか分からないし、早めにこのタニーの町からおさらばしないとな。私達が容疑者として指名手配されているとの情報がこっちまで回って来ない内に、この町を出て行こう)



 ◇



 船酔いと言うのは嘘であり、あくまでも怪しまれない為の理由付けをしたエルザがそう決意している頃、レウスは赤毛の二人がどちらに向かったのかを町の傭兵に聞いていた。


「赤毛の二人だったらバランカ砂漠方面に向かって行ったよ」

「そうなんですか?」

「ああ。目立つ二人だったから覚えているさ。特に男の方は結構有名な傭兵だった筈だから、まさかこの町に来るなんて……って思ったけどね」

「それは何日前とかっての、覚えてます?」

「ああ、確か二日前だったかな? だからとっくにもうバランカ砂漠は越えてると思うけど、サンドワームに阻まれていたらまだ抜けられてないかも知れないし、やられちゃってる可能性もあるかもね」

「そうか……どうも!」


 三者三様の情報を手に入れて合流し、話をする上で自分達がどう行動するかが見えて来た。

 三人が出した結論は……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ