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62.指名手配犯

「ちょ、ちょっとまだ詳しい事は分からないですけど色々あって、最低でも三日間はここに滞在しなければいけなくなってしまったんですよ」

『はあ?』

「ええっとですねえ、私達を誘拐した連中に変な薬を投与されて魔術が三人とも使えなくなっちゃって……それでその効果が切れるのに三日掛かるって話なので、私達はここに居るしか無いんです。魔術が使えないまま戻るのは何が起こるか分からないので危険ですから」

『…………』


 アレットの話を聞いていたエドガーが黙り込んでしまったので、かなりショックなのだろうと三人は推測する。

 だが、ショックを受けるのは三人の方だった。


『……戻って来るな』

「はい?」

『こっちに戻って来るなよ。良いか、こっちに戻って来るんじゃないぞ!!』

「え、え? いやちょっと何言ってるか分かんないんですけど!?」


 いきなり戻って来るな、と言い出すエドガーに対してそばに居るエルザがアレットに通話相手を交代して貰う。


「ちょっと叔父さん、いきなりどういうつもりなんだ!? 魔術が使えない私達は学院に要らないって話なのか!?」

『いや、そうじゃねえ! そうじゃねえけど……ちょっとこっちもこっちで大変な事になってんだよ!』

「大変な事?」

『ああ、そうだ。簡単に言えば、お前達がリーフォセリア王国で指名手配される事になっちまった』

「はい?」


 突然何を言い出すのか、とこの短い時間の中で思うのは二度目のエルザ。

 自分達が指名手配されてしまった?

 それは明らかにおかしい……と言うよりもむしろ自分達は誘拐されてここまで連れて来られたので、指名手配どころか完全に被害者の立場なのだ。

 それが何故、自分達が指名手配されなければならないのか?

 ますますパニックになるエルザを半ば押し退ける様にして、今度はレウスがエルザの代わりに通話の相手になった。


「エドガーさん、レウスです」

『ああ、そう言えばレウスも居るんだったな。だったら今の話も聞いてただろ?』

「ええ。色々大変な事になっているのは勿論ですが、何故俺達が指名手配犯になってしまってるんですか? その辺りの事情をちゃんと説明して下さい」

『えーっとだな……話して納得してくれるってんなら話しても良いけどよお……』

「納得どうこうじゃないんですよ、こっちは!! 指名手配犯になっちまってるんだったら、何でそうなったのか聞かないと納得が出来ませんもん!!」


 歯切れの悪い応対をするエドガーに対し、イライラして口調が荒くなりながらも理由をしっかり説明しろと促すレウス。

 いきなり口調が変わった彼にエドガーも流石にビビったのか、それとも開き直ったのか、声のトーンを元に戻して理由を伝える。


『じゃあ話してやるよ。お前達はリーフォセリア王国騎士団から指名手配された。それはお前達が、セバクターの手先なんじゃないかってギルベルト騎士団長が判断したからだ』

「はあ!? 何で俺達がセバクターさんの手先にならなくちゃいけないんですか!?」

『そこは俺だって納得してねえよ!! 大体、お前等があんな大規模な爆破事件なんて起こせる筈がねえって最初から思ってっから、騎士団長にはそこについての説明も求めたさ。けど、何だかんだであのトラ男ははぐらかしやがって……それでも無理に聞き出そうとした。そうしたら「エルザが内部事情に詳しいから、セバクターの事を手引きしたんじゃないか」って言い出しやがったんだ』


 その瞬間、レウスはエルザにドンっと突き飛ばされて会話相手を交代。


「ちょちょちょちょ、ちょっと待て何だそれは!? そもそもセバクターが犯人じゃないかって調べがついていた筈なのに、何時の間に私が犯人扱いにされたんだよ!?」

『だから分かんねーっつってんだよ!! ……ともかくそう言う事だから、お前達がカルヴィスに戻って来れば間違い無く騎士団に逮捕されちまう。そうなっちまったらどうなるか分からねえし、俺よりも騎士団長の方が強いから無理に助け出す事も出来ねえ。すまねえが、ほとぼりが冷めるまでこの国を出て行ってくれ。今はタニーの町だったよな。だったらまだ手配は及んでねえ筈だから、砂漠を通ってソルイール帝国に抜けろ!』


 そこでエドガーの方から通話を終了されてしまい、残された三人は茫然自失の表情になってしまった。

 特にエルザの表情はレウスとアレットよりも暗い。


「何がどうなっているんだ、今の状況は……」

「さっぱり話が見えて来ないが、ひとまず俺達が大変な状況になっているのは分かった」

「一旦ここを離れましょう。余りにも大声を出し過ぎてちょっと注目されがちだし……」


 アレットが周りの目を気にしてここから離れる三人だが、頭の中がパニックなのでどうしたら良いか分からない。

 しかし、エドガーの言っている事が真実だとしたら自分達がこのリーフォセリア王国の中に居るのは自らの破滅を招くのは間違い無い。


「とりあえずバランカ砂漠に向かう前に、まずはこのタニーの港町で少し情報収集をしよう。俺達には少しだけ余裕がある筈だから」

「それが良いわね。少なくとも、何が起こっているのかは分かると思うわ」

「なら早速、また三人に分かれて行動だ。一時間したら集まろう。集合場所はあのウォレス達が私達を運んで来た建物の前だ!」

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