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61.通話魔術システム

 結果は大体予想がついているのだが、一応エルザにも自分が使える魔術を使って貰った。

 しかし、その結果はやはりアレットとレウスと同じである。


「うーん、魔術全般は一切ダメらしいな。もっと色々な所を探して、俺達が魔術を使えなくなってしまった原因を探ってみないか?」

「そうね、それが良いかも知れないわ。この部屋の中も全部探し切れていないし」

「そうなのか。じゃあ私は二階を探す。レウスは一階でアレットがこの三階だ。手分けしてやればすぐに終わるだろう」

「……まあ、その前に良い物が見つかったけどな」

「え?」


 テキパキと指示を出したエルザに対して、レウスは部屋の隅に立て掛けられていたある物に今更ながら気が付いた。

 それを見たアレットは気まずそうな顔になる。


「あ……ごめん、渡すのを忘れていたわ……」

「ああ。ここに俺の槍とか二人のそれぞれの武器があるってさっきエルザから聞いてたから、とりあえずはこれで一安心か。残るは俺達の魔術が使えなくなった理由だ。さっそく探してみよう」


 レウスは槍を持って、他の二人と手分けしてこの建物の色々な場所を探してみる。

 それなりの広さがあるものの、廃墟と化している場所だけあって探せる場所は限られているのが救いであった。

 ありとあらゆる部屋のドアを開け、デスクや棚の引き出しを漁り、怪しそうな木箱があれば開けて中身を見てみる。

 何だか盗賊になった気分なのだが、これはあくまでも魔術が使えない原因を探しているだけなんだ……と自分に言い聞かせながら、約二時間掛けて敵の死体と血の臭いが漂う建物中を探し回った。



 ◇



「……で、その怪しい薬が私達が魔術を使えなくなった原因だって言うのか?」

「そうらしいわね。だってほら……この取り引き内容の紙を見る限りカシュラーゼから仕入れて来た物らしいから、何らかの形でカシュラーゼが絡んでいると見て間違い無さそうよ」


 エルザが二階で発見した薬のビンと、アレットが三階で発見した取り引き内容を記載した紙を照らし合わせた結果、このビンが魔力を過剰に増やさない様に抑制する薬だと言うのが分かった。

 確かに魔術王国カシュラーゼと名前がついているだけあって、このエンヴィルーク・アンフェレイアの何処の国よりも魔術が発展していればこうした薬を生み出すのもお手の物だろう。

 この薬の説明書によれば、体内に入ったその日から実に三日は魔術が使えなくなってしまう効果があるらしい。


「全く、厄介な物を私達の身体に入れてくれた様だな」

「本当にそう思うわ。特に私みたいな魔術師にとっては死活問題だもん」

「でも、魔術が使えなくなった理由が分かっただけでも良しとしよう。この薬の効用を無くす薬とかの方法はあるのかな?」

「うーん、町の医者が知っているのかしらねえ? こんな薬は一般的に出回っているのを私は見た事が無いから、それこそカシュラーゼに行かないとダメかもね」

「いや、それよりもこの説明書通りに三日待って自然に効果が切れるのを待つしか無いと思うが……今の所はそれが最も手っ取り早いだろうし」


 エルザが言った通りの方法が確かに一番早いだろうと考えたレウスとアレットは、三日間このタニーの町で待機しつつ色々と情報を集めてみる事にした。

 ここに自分達を連れて来たあのウォレスは死んでしまったが、それ以外にも調べなければならない事はまだまだ沢山あるのだから。


 と言う訳で、三人は建物から出てタニーの町へと繰り出す。

 港町と言うだけあってカモメが至る所で鳴いており、さっき感じた潮の匂いが町中を漂っているのが特徴だ。

 とりあえず個人で通話魔術が使えない以上、このタニーの町にある公衆の通話魔術スポットで学院に連絡を取ってから情報収集を始める事にする。

 王都カルヴィスは勿論、レウスの生まれ育った田舎町やこのタニーの町と言ったある程度の大きさがある町や村には、一定の料金を支払って決められた時間で遠くに居る相手と連絡を取る事が出来る通話魔術のスポットが存在するのだ。


「まあ、向こうで出てくれる人が居れば良いんだけどね」

「大丈夫よ。エドガー叔父さんだったら大抵学院に居るんだし、それ以外にも誰かしら居るだろうからな」


 通話魔術を展開する向こうに誰かが居る事を願いつつ、ここはアレットが代表して学院に通話を開始した。

 学院に繋がる術式を組んで、それを係員に見せれば後はその係員が繋いでくれるシステムである。

 通話魔術の術式が組まれた青白い魔法陣が自分の胸辺りの高さに浮かび上がり、何回かのコール音がポーン、ポーンと鳴り響いた後、ガチャリと通話に応答する音が聞こえた。


『はい、マウデル騎士学院です』

「学院長ですか!? 私です、アレットです!」

『えっ……お、あ、アレット!? お前、今何処に居るんだよ!?』

「タニーの港町です! どうやら私達、誘拐されてしまったみたいでして……」

『誘拐だぁ!?』

「ええ。それも私だけじゃなくて、エルザ先輩とレウスも一緒なんです」

『うっそだろ、何でこんな時にそんな事になってんだよ……!?』


 通話に応答したエドガーが驚きの声を上げるのも当然だろうと、一緒に通話を聞いているレウスとエルザは納得する。

 しかしこの後、今度はこの三人が驚きの声を上げる展開になるのだった。

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