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599.傭兵を雇った理由

「アーシア……それからコルネールだったかしら。どうやら貴女達はその二人とも接点があるみたいね?」

「ええ、そうよ。その二人はヴァーンイレスと関わりが深いみたいだったし、傭兵だけど最近仕事にありつけていないって言っていたらしいから、リーダーがそれを聞いて雇ったらしいのよ」

「らしい、が多いわね?」

「リーダーからの報告でそれを知っただけだし、私は顔合わせの時に自己紹介をして貰っただけだから、話した事は無いわ」


 そう言うミリスだが、となればこのブローディ盗賊団はまさかルルトゼルの他にヴァーンイレスにまで攻撃を仕掛けようとしているのだろうか?

 そこが気になって更に深く突っ込むドリスに対し、ミリスが首を横に振って否定する。


「ねえちょっと、ヴァーンイレスまで襲撃するつもりじゃないでしょうね?」

「それは無いわ。それは私達の担当じゃないもの」

「担当?」

「そう。縄張りって分かるかしら。盗賊団にはそれぞれ縄張りがあってね。ブローディ盗賊団の縄張りはこのアイクアル王国全土がそうなんだけど、ヴァーンイレスの方は確か……ええと誰だっけ、あの黒い髪の毛の若い女が仕切っているあの……」

「もしかして、それってシンベリ盗賊団の事?」


 アニータがその名前を出すと、縛り付けられながら考え込んでいたミリスはハッと顔を上げて頷いた。


「そう、それよ。そのシンベリ盗賊団の縄張り。でも……何でシンベリ盗賊団の名前を知っているの?」

「かなり有名だから分かる」

「うん、それはそうなんだけど……どうして黒髪の女が仕切っているって分かるのよ? 私達はリーダーからシンベリ盗賊団のリーダーの話を聞かされた事があるから知っているけど、そのいで立ちからして貴女は普通の傭兵か何かでしょ?」


 だが、アニータは上手く話をはぐらかした。


「まぁ、傭兵をやっていれば色々と情報が入って来るから知っているのよ。しかしそんな事よりも驚いたのは、貴女達も傭兵を雇ったり、他の盗賊団と繋がりがあったりするんだって事ね」

「ええ。お互いに情報交換をして利益を得る。それからお互いの縄張りは侵さない。もし縄張りを侵したメンバーについては、双方の責任者の合意の下で追放処分にするか、その侵した者の死を持って償うかになるわ」


 こう聞いてみると、以前自分がティーナとドリスのヒルトン姉妹からブローディ盗賊団について聞いた話と一致しているなぁ、とアニータは振り返る。


『その盗賊団はアイクアル王国全土を根城にしている盗賊団でして、あのシンベリ盗賊団と繋がりがあってもおかしくないと思います。それこそ情報料と言う名目でお金を得る事もあるでしょうね』

『そうじゃなくて、もっと詳しい実情を教えてくれよ。例えばリーダーがどんな奴だとか、今までの目撃情報とか』

『えっとね……それはブローディ盗賊団って言って、このアイクアル王国内では名の知れた盗賊団なのよ。多くの部下を従えており、王国の色々な場所で裏社会のクライアントから請け負っている品を盗み出す活動をしているらしいわ。事実、それでワイバーンの納入先だった貴族の一つが無くなったし』

『貴族達にも顔が利くのか』

『顔が利くって言うか、その貴族が腐っていただけなんだけどね。それで噂によると、そのブローディ盗賊団のリーダーは前の二つの盗賊団と違って、男が務めているらしいわ』


 この振り返った会話に付け加える形で、盗賊団連中には連中なりの色々と掟があるらしい。


「貴女達のリーダーは男だって聞いたけど、それは本当なのかしら?」

「ええ。私達の頼れるリーダーよ」

「ふーん、ああそう。それでそのリーダーが率いている貴女達は、主に王国の色々な場所で裏社会のクライアントから請け負っている品を盗み出す活動をしているらしいけど、そのクライアントってのはどんな人達なのかしら?」

「それは知らないわ。本当よ。クライアントとのやり取りはリーダーが直接やっていて、私達にはそれが連絡事項として回って来るだけだから分からないわ」


 ミリスの話によれば、クライアントの中には自分達の存在を公にしたくない者も多い。

 なので、基本的にそのクライアントとのやり取りはリーダーが行なって、それに基づいて立てられた行動計画に従って、クライアントから指示された盗み出す予定の品に一番近い場所の拠点に居るメンバーが仕事に向かう……と言う業務形態を構築しているらしい。


「そうなの。じゃあこれで貴女達が他の盗賊団と関わりを持っているのは分かったけど、何で傭兵を雇ったのよ? 貴女達も傭兵みたいなものだし、さっき仕事に困っているから雇ったって聞いたけど、それ以上の理由が本当はあるんじゃないのかしら?」


 しかし、ミリスはまた首を横に振って否定する。


「だからそれについては本当に分からないわよ! もっと詳しい話を聞きたかったら私達のリーダーに直接聞くのね!」

「そう。じゃあ最後に聞くけど、貴女達のアジトは何処にあるの? ここじゃなくて本部よ。リーダーが居るかも知れない本部の場所を教えてよ」

「それは……私にも分からないわ。拠点はこの他に二か所あるのは知っているけど、リーダーはその三か所の拠点を回って業務の報告を受けるのが日課になっていて、本人は何処に住んでいるのかも知らないのよ」

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