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3.決闘

 だが、レウスはそのエルザと名乗った女の答えに引っ掛かった。

 先輩と言うのであれば確かに偉そうな態度でも無理は無いが、それにしても態度がデカ過ぎる気がしてならない。

 彼がそう思っている間にも、このエルザという女は勝手に自慢話をしている。


「……それで三年前には三十匹の魔物を一人で……って、聞いてるのか!?」

「あー……すまん、聞いてなかった」

「聞いてなかっただと!?」


 自分のご大層な自慢話をされた所で、この女と面識の無いレウスにとっては心底どうでもいい。

 しかし、彼の態度はエルザをますますヒートアップさせてしまった様で、着込んでいるコートと同じくエルザの顔がみるみる内に赤く染まっていく。


「おのれ……私をここまでコケにするとは良い度胸だ。良いだろう、そこまでの自信があるなら私と決闘だ!!」

「だからどうしてそうなるんだよ!?」


 理解不能な言い分に戸惑うレウス目掛け、その言い分を口に出した張本人は両手に握り締めた小振りのバトルアックスを振りかざして来た。

 いきなりの攻撃にレウスは驚きつつも、前世からの記憶で覚えている回避行動でスッとそのバトルアックスを避ける。


「逃げ回るだけとは貴様臆したか!! 少しは堂々と戦ってみろ!!」

「だから、俺は戦う気なんて無えんだよ!!」


 そして今の状況へと繋がる訳だが、今こうして自分で口に出した通りレウスには戦う気なんて毛頭無い訳である。

 そもそも、騎士学院の生徒が一般人相手にむやみに武器を振り回したとなればそれこそ大問題の筈なのに、何故こんなに後先考えない行動が出来るのかと他人事ながら心配になってしまう。

 それでも、今の状況を何とか終わらせるべくレウスはエルザに向かって説得を試みるが、口を開くタイミングすら与えられない位に彼女の攻撃は素早い。

 だとしたら、少々荒っぽいが力尽くででも止めるしか無い様だと考えたレウスは振り向いて実力行使に出る。


 自分に向かって来るエルザの右のバトルアックスを左手で腕ごとブロックし、右手の拳を握って彼女の鳩尾に重めのパンチを入れる。

 勿論普通の女相手ならこんなに強いパンチを入れたりしないが、コートの膨らみからしてその下に鎧を着込んでいるのが明らかだったからだ。

 それにパンチに威力を乗せるべく、拳に溜めた魔力をパンチが当たった瞬間に一気に解放する。

 すると鈍い感触がレウスの拳に伝わって来て、コートの内側に着込んでいる鎧を突き抜けて衝撃がエルザの腹部に伝わる。


「ぐふっ……」


 低い呻き声と共に、エルザはバトルアックスを両手から同時に取り落としつつ地面に膝から崩れ落ちた。

 しかし、それでもエルザは諦めようとしない。

 地面に落としたバトルアックスを拾い上げて再びレウスに向かって来ようとするが、レウスはその前に右足でバトルアックスを素早く引き寄せて間一髪で彼女の攻撃手段を奪い取った。

 勿論、もう一本のバトルアックスも同じ様に自分の方に引き寄せる。


「諦めろ。あんたの負けだ」

「ぐ……ううううっ!!」


 心の底から悔しさが滲み出たかの様な、低い唸り声を上げてレウスを睨み付けるエルザだが、その時レウス達の耳に悲痛な叫び声が聞こえて来た。


「れっ、レウス……早く逃げろ!!」

「えっ?」

 声の聞こえて来た方を見ると、そこにはレウス達の方に向かって息を切らしながら小太りの身体を揺らして走って来る、顔馴染みの雑貨屋の店主である中年の男の姿があった。


「おっちゃん、どうした?」

「どうしたもこうしたもねえよ、奴だ……奴が現れたんだよ!!」

「奴って?」

 只ならぬ様子の雑貨屋の店主を見たレウスは、直感で何かヤバい事が起こっているのだと察したが、それはどうやら当たりだったらしい。


「ギローヴァスだよギローヴァス!!」

「えっ、ギローヴァスですって!?」


 雑貨屋の店主のセリフに、レウスよりも先に反応したのがアレットだった。

 そのギローヴァスと言う魔物は、レウスとアレットが出会ったあの森に生息する「ヌシ」の事なので確かに驚く内容だ。

 もしそいつが暴れた状態で町に来たら被害は避けられないので、レウスは雑貨屋の店主に現状を確認する。


「そいつは今何処でどうなってる?」

「いっ、今この町に向かって来てるんだ。自警団にも連絡してあるけど、この町にあいつが突っ込んで来たら被害は避けられない。何せあいつはBクラスの魔物だからな!」


 この世界に生息する人間や獣人達を見境無く襲うのが「魔物」と呼ばれている。

 その魔物は五つのクラス分けがされており、一番下からEクラス、Dクラス、Cクラス、Bクラス、そして最も強いのがAクラスだ。

 その魔獣の強さでクラス分けがされるのだが、目安になるのはその魔獣を以前捕まえた時に測定した体力値、魔力値、素早さ、それから単独行動か群れて行動するか等の違いや、凶暴性とかも総合して決めている。

 Bクラスのギローヴァスは相当ランクが高いのだが、本来であればギローヴァスは大人しい性格なので「ヌシ」と言ってもそこまで驚く魔物では無い。

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― 新着の感想 ―
犯罪者じゃんこの女 罰くらいくらわんと読むのきつい
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