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594.裏口を潰せ!!

 二人はまず、その出入り口の方にも魔晶石のトラップが無いかどうかをチェックする。


「こっち側には無いみたい」

「こっち側?」

「ドアの表側よ。つまり裏側にはあるかも知れないって言う事。だから迂闊に入って行って爆発しましたなんて事になったら、私達は一巻の終わりよ。それをこれから確かめたいんだけど……あ」


 周囲を見渡して何かを発見したアニータは、丁度良いとばかりに「それ」を両手に抱える。

 それだけの大きさがある物体は……。


「ね、ねえ……もしかしてそれをあの扉に投げ付けるつもり?」

「そうよ。その扉は開き方を見る限り押して開けるタイプの物みたいだから、これを投げ付けて扉を壊すの」

「凄い事を言い出したわね。何か私、貴女のその行動力に対して変な意味で泣いちゃいそう」


 アニータが見つけた「それ」は大きな岩。

 これをドアにぶつけて破壊すると同時に、爆発物が扉の向こうに仕掛けられていないかどうかを試すのだ。

 しかし、それを実行するのは発案者の彼女では無いらしい。


「と言う訳で、お願い」

「は?」

「は、じゃないわよ。さっさとこれを投げ付けて。そして爆発物があるかどうかを確かめるのよ」

「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待ってよ。普通はこう言うのって、言い出しっぺの人がやるべきものじゃないの?」


 まさか自分が実験台にされているのか? と首を傾げつつ拒否するドリスだが、アニータは抑揚の無い口調はそのままに残酷な現実を淡々と突きつける。


「それはこの岩を投げ付ける事が出来る力があればの話。私は見ての通り背が低いし、力も無い。対して貴女はハルバードを振り回して戦場を駆け巡るだけの腕力と体力があるし、私より背も高い。よって、岩を投げ付けるに当たって最適な人物よ」

「で、でもだからってそれは無責任じゃ……」

「だったらここに爆弾が仕掛けられているかも知れない不安を抱えて、このまま突入するつもりなの?」

「そ……そう言う話じゃないわよ!! 単純に貴女がやれば良いってだけの話でしょ!?」


 ヒートアップするドリスだが、そんな彼女を見てもアニータは冷静である。


「だから私は体力と腕力が無いから無理。それに何時までもここで騒いでいる訳にもいかないわ。まだこの拠点は潰せていないばかりか、外に居る敵を排除した状態にしか過ぎないの」

「……」

「まだ中にも敵が居るかも知れない状態で、これ以上不毛な言い争いを続ける位なら、さっさとこの岩を扉にぶつけて話を進めた方が良いんじゃないかしら?」

「分かったわよ……やれば良いんでしょ、やれば!!」


 ドリスはアニータからひったくる様にしてその岩を受け取り、出入り口のドアの前に仁王立ちになる。

 そして意を決して一歩踏み出しながら、大きく振り被ってその岩を扉に向かって投げ付けた。


「ふんっ!!」


 投げ付けられた岩は上手い具合に扉に命中し、木製のそれを破壊しながら裏口の中へと吸い込まれる。

 それと同時にドリスとアニータは地を蹴って扉から素早く離れ、万が一の衝撃に備えて身構える。

 一秒、三秒……十秒。


「……何も起こらないわね」

「と言う事は爆弾の類は無い結果になった。さぁ、先へ進むわよ」


 こうして裏口の安全を確保出来た所で、口元に薄く笑みを浮かべてアニータがスタスタと砦の裏口に向かって弓を構えながら歩き出す。

 しかし、前衛として先に向かう筈のドリスが着いて来ない事に不信感を抱いた彼女が振り返る。


「ちょっと、何をやっているのよドリス? さっさと前を歩いて乗り込むわよ」

「そうね」


 でも、さっきから自分を実験台にしたり今もその事に対して礼も言わないこの女に対して、ドリスはもう我慢の限界であった。

 そもそもこの女は何だか話し難い上に、コミュニケーションも余り取れそうに無いのだ。

 こうなったら……とドリスはアニータの前を歩くべく、彼女の横を通り過ぎる。


「ぐえっ!?」


 その瞬間、ドリスの容赦の無い顔面へのグーパンチがアニータに襲い掛かっていた。

 右手で繰り出されたその全くの不意打ちを食らってしまったアニータは、受け身を取る事も出来ずに背中から地面に倒れ込んで鼻を抑える。


「……え? え?」

「あー、スッキリした!! さぁ行きましょう。ほら、さっさと起きないと敵がやって来るわよ?」


 スカッとした表情で、ちょっとだけ浮き足立っている様な歩調で砦の中へと姿を消して行くドリスの背中を見ながら、アニータは鼻血を流しながら何が起こったのかを今もまだ理解出来ていなかった。


(何なのよ、もう……)


 その彼女を置いてきぼりにしたまま、ドリスは砦の裏口から侵入する事に成功した。

 しかし、先程の外での戦いを切っ掛けにして砦の中も騒がしくなっているのですぐに上の方から下りて来た盗賊団の連中と鉢合わせしてしまった。


「あっ、お前……何処から入って来た!?」

「何処だって良いじゃない。それよりもそっちのリーダーは何処に居るのよ?」

「リーダー? リーダーはここには居ないぞ」

「嘘をつくんじゃないわよ!! そっちがここで色々と悪巧みをしているのは知っているんだからね!!」

「だったらどうするつもりだ、女?」

「全員纏めて倒してあげるから覚悟しなさいよね!!」

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