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593.砦の出入り口

(一人一人の強さはそれ程でも無いけど、やっぱり盗賊団の拠点と言うだけあって数はそれなりに多いわ!!)


 ドリスは盗賊団の拠点になっている砦の出入り口に辿り着いた。

 そしてそこに飛び込もうとしたのだが、突然何者かにグイッと襟の後ろを引っ張られて勢いを殺されてしまう。


「ちょっ、いきなり何を……!」

「待って。このまま入ったら貴女は死ぬわよ」

「はあ!?」


 自分の襟を引っ張って進軍を止めた上に、突拍子も無い事を言い出したアニータのセリフに反発気味に返事をするドリス。

 しかし、アニータの方はそんなドリスの態度なんかよりも、砦の出入り口に仕掛けられているトラップに気が付いていた事実を話し始める。


「あそこ、見て」

「えっ……何処?」

「砦の出入り口のドアよ。小さな魔晶石が不自然な位置に取り付けられているわ。あれと同じ様な物を以前別の戦場で見た事があるわ」

「……あー、確かに変な場所にピンク色の魔晶石がくっ付いているわね」


 アニータ曰く、あれは侵入者撃退用のトラップらしい。

 そしてもし、あれに気付かないままドアを開けていたらどうなったかを今から見せると言う事で、アニータはその魔晶石を狙って矢を放った。

 周りの敵は全員倒したのでジックリと狙いを定め、そして矢が突き刺さった次の瞬間。


「うわっ!?」

「……ね?」


 アニータが出入り口の扉を指し示してそう呟くのを見たドリスが、無言でブンブンと首を縦に振った。

 それもその筈で、矢が命中した瞬間にその魔晶石が轟音を立てて出入り口を吹っ飛ばす程の大爆発を引き起こしたのだから。


「あ、あれがトラップ……?」

「そうよ。やっぱり爆弾だったわね。私が前に、冒険者ギルドから別のタチの悪い盗賊団を討伐する仕事の依頼を受けて、その仕事の中で初めてその存在を知ったの。私と一緒にパーティーを組んでいた内の二人がそのトラップに気付かないままドアを開けて、そして爆死したわ。身体がバラバラになってね」

「うえ〜っ、悲惨……」


 他人事とは言え、その余りの事実に思わず気の毒になってしまうドリス。

 しかしその苦い経験があったからこそ、自分はこうしてアニータに命を救われたと言っても良いだろう。

 そう考えるドリスだったが、砦の中からは不気味な程に何も音がしない事に気が付いて首を傾げる。


「……やけに静かになったわね?」

「そうね。あの爆弾のトラップはドアの開閉に反応するタイプだから、それで私達が吹っ飛んでバラバラになったと思われているか……もしくはあの爆弾のトラップを見切ったのがバレて、安心して中に入って来た所で奇襲を掛けるつもりなのか……」

「どっちにしても正面から入るのは危ないかも知れないわね。だったら裏に回ってみましょうよ」


 ドリスがそう提案するのを見てアニータも頷くが、その前に彼女は再び弓をキリキリと引き絞った。


「だけどその前に……」

「えっ?」

「ぐおああああっ!!」


 引き絞られた弓が唸りを上げて矢が発射される。

 その矢が飛んで行った先には、何と木の陰に隠れていた人間の男の敵の姿があったのだ!!


「これで良し。さぁ、行きましょう」

「う、うん。でもあんな遠くの木の陰に隠れていた敵に良く気が付いたわね?」

「まあ、こう言うのは慣れているから」


 そう呟きながら歩き出すアニータの後ろ姿を見て、そう言えばさっきも確か同じ様な事があった筈だわとドリスは思い返した。


「ねえねえ、それだったらさっきも何であのトラップに気が付いたの?」

「え?」

「だってほら、私があのドアの爆弾のトラップに気付かなかったのに、貴女はそれに気が付いて助けてくれたじゃない。今の木陰に隠れていた敵もそうだったけど、良くあの距離で見えたなーって感心しているのよ」


 素直に尊敬の眼差しを見せるドリスだが、アニータは別にこれが普通だと言わんばかりの返事をするだけだった。


「単純に、注意力と視力の問題なんじゃないの?」

「注意力と視力……」

「そう。私達弓使いは遠くにある目標物を狙って矢を放たなければならないから、ある程度の視力の良さは必要なの。そこは個人の問題だから仕方が無い部分はあるわ」


 でも、とアニータは相変わらず抑揚の無い声で話し続ける。


「注意力は割と養えるものよ。散漫になりがちな人は注意力が足りない。そもそもの性格もあったりするけど、注意をして周囲を見ていればさっきの様に木陰から奇襲をしようとしている敵を発見する事も出来るわ」

「って事は、つまり……」

「そう、貴女は注意力不足なのよ」

「……」

「分かったらさっさと歩きなさい」


 こいつ、やっぱり面倒臭いタイプの女だ。

 同じ女だからこそ、女の面倒臭さを分かっているドリスはどうもこのアニータが好きにはなれなかった。


(命を助けて貰ったのは素直に感謝なんだけど、あれよね……やっぱり面倒臭い性格に変わりは無いわね)


 何時か目にもの見せてやると心の中で決意しながら、ドリスはアニータの後について砦の裏側へと回り込んでみる。

 するとそこには、正面の出入り口と比べて半分の横の大きさしか無い、裏口用の金属製のドアが設置されていた。

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