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591.平原の拠点

 なるべく見つからない様にとは言っても、この平原の拠点の立地条件を考えると交戦状態になってしまうのは避けられない。

 事実、ドリスとアニータは平原から砦の近くに進むにつれてその見張りの兵士が居るのに気が付いた。


「やっぱり見張りは置いているみたいね」

「そりゃあブローディ盗賊団のアジトだから、見張りは置いていると思うわ。でもまさかこうやって私達だけで奇襲を掛ける事になるとは思ってもみなかったわよ」


 そもそもこんな少人数で来る事自体が間違っているんじゃないのかと、あの時のレウスの決定に対して今更ながら不信感を抱くドリス。

 しかし、アニータはそれを完全に否定している訳では無いらしい。


「でも、大人数で来なかったのはあながち間違いとは言えないかもね」

「何で?」

「だってここって見晴らしが良いでしょ。そんな場所に大人数でワイバーンで飛んで来ていたら、それだけで敵にすぐに見つかっていて矢で狙い撃ちされていたに決まっているわ」


 それに、とアニータは砦の見張りの様子に目を配りながら続ける。


「砦の見張りは矢を持っているから、こうやって徒歩だったとしても迂闊に砦に近づいて狙い撃ちされる危険性がある。それが大人数であればなおさらよ。だから少しずつ見張りをやり過ごしながら進むには、こうした少人数の行動の方が丁度良いと思うのよね」

「まぁ、言われてみれば確かにそうね」


 アニータにそう言われてみれば、こうした隠密行動をするのならこうした少人数の行動が適している。だが今回の目的はブローディ盗賊団の討伐であり、人数差で考えれば圧倒的にこっちの方が不利だろうと思ってしまうドリス。


「でも……こっちはたった二人なのよ。これってどうすれば良いの?」

「どうすれば良いのって……答えは簡単。まあ見ていなさい」

「え……?」


 一体何をどうするつもりなのかと首を傾げるドリスを手招きで誘い、足音をなるべく殺して気配も一緒に殺しながら、アニータは近くの木の陰から砦の方の様子を窺う。

 そしてブローディ盗賊団の見張りの男が居る事を確認し、彼が完全に気を抜いている所を狙って弓を引き絞るアニータ。


「……うっ!?」

(命中……)


 矢が彼の首に狙い通りに突き刺さり、そのままどうっと仰向けに倒れて動かなくなってしまった。

 それを見ていたドリスは、いきなりのアニータの行動に声も出ない。

 そして当のアニータはと言えば、これが当たり前だと言わんばかりの態度で顔を軽く振ってドリスを促した。


「ほら、こうすれば良いのよ」

「え……えっ?」

「えって言われても困るわよ。そもそも今回の目的はブローディ盗賊団の討伐なのよ。討伐の意味を知らないとか言うんじゃないでしょうね?」

「いや、知っているわよ! 知っているけど突然だからびっくりしただけよ……」


 盗賊団の連中に気が付かれない様に、なるべく小声で喋って自分の思いをアニータに伝えるドリス。

 しかしまさか、初っ端から一発で敵を仕留めてしまうなんて思ってもみなかったので、覚悟は余り出来ていなかったのだ。

 ドリスの人生の中で、相手に攻撃される前に自分から攻撃する様な展開が今まで滅多に無かったのだから、それも仕方無い事なのかも知れないが。

 それと同時に、幾ら相手が気を抜いていたとは言え木陰からしっかりと一撃で見張りを仕留める事が出来るアニータの弓の技術に驚きを隠せないドリス。


(私も弓を使う事はあるにはあるけど、やっぱり弓を日常的に使っている人は違うのね)


 この一撃を切っ掛けに、もう後戻りは出来ないと確信したドリスはハルバードを握って歩み出す。

 見張りは基本的に一人、もしくは二人で行動しているので、やり過ごせるのであればやり過ごして進みたい。余り多くの敵と戦うとアニータの矢が無くなってしまうかも知れないし、戦いが多くなればなるだけ疲労も武器の壊れ具合もどんどん蓄積されるからだ。

 しかし、なかなかそうもいかないシチュエーションも存在する。


「そっちから二人来るわよ」

「うん……このままだと見つかるわね」


 二人が隠れている岩の向こうから、二人の見張りが並んで歩いて来る。この場所は平原だから隠れられる場所も限られるので、このまま二人が来ると見つかってしまう。

 下手に交戦して増援を呼ばれたら囲まれる可能性が高くなる為、ここは素早く仕留める為にまずはアニータが岩の陰から飛び出して片方の見張りの胸を矢で貫く。


「ぐふっ……」

「なっ、何だ貴様ぐおっ!?」


 突然矢が突き刺さって地面に倒れた見張りの相棒と、その相棒を射殺したアニータの存在に気が付いたもう一人の見張りが大声を上げようとするが、そこに今度はドリスのハルバードの鋭い槍先が襲い掛かった。

 首を横から突き刺されたもう一人の見張りも絶命し、何とか他の見張りに気付かれる前に倒せた。


「ふう……ギリギリセーフね」

「だがこの二人をこのままここに放置しておく訳にはいかないから、こっちの陰に隠しておこう」


 見張りの死体をそのまま放置して他の見張りに見つかったら、それでこちらの正体が露見する事になる。

 それをなるべく避ける為に近くの茂みの陰に見張りの死体を二つとも隠し、ドリスとアニータは更に砦へと近づく為に進み続けた。

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