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576.まず破壊

 これ以上は言い逃れ出来ないレベルの証拠をドリスに突き付けられたリーダーの男は、ガックリとうな垂れてしまった。

 しかし次の瞬間、彼の口からいやらしい笑い声が漏れ始める。


「クックック……」

「何がおかしいんですか?」

「ああ、そうだよ。確かにこれは俺達がカシュラーゼから頼まれてここに造っている奴だよ。だけどお前達がこの存在を知ってしまった以上、ここから生かして帰す訳にはいかねえんだよぉ!!」

(やはりこうなりますか……)


 こうやって追い詰めれば、もうやけっぱちになって何としてでも逃がれようとするのは良くある展開だ。

 しかも相手は盗賊団と言うアウトローな存在なので、この展開を予想していたティーナもドリスも自らの武器に手を掛ける。

 しかし、ドリスは先程自分に対してレウスが耳元で囁いた、もう一つの事を思い出してティーナに叫ぶ。


「姉様、伏せてっ!!」

「え?」


 戸惑いながらも、言われるがままに地面に向かって伏せるティーナとドリス。

 その頭上を特大のエネルギーボールが通り過ぎて行ったのは、その刹那の事だった。


「な……なん……」

「うおあああああっ!?」


 それはパーティーメンバーでさえも、今までの見た事が無い大きさのエネルギーボール。

 それもその筈で、今までは片手で打ち出せる位の大きさでエネルギーボールを生み出していたレウスだったが、今度は両手に魔力を注ぎ込んで生み出した特大のエネルギーボールを槍の先端に引っ掛ける形にして更に大きくして、丁度良いタイミングで発射したのだ。

 あの時、ドリスの肩に手を置いたレウスはこんな事を告げていた。


「それとあいつ等の注意を引き付けてくれ。俺がエネルギーボールを作って大砲をぶっ壊すから」

「え?」

「それじゃ頼んだぞ」


 それだけ言われて半信半疑状態だったドリスだが、五百年前の勇者なのだからきっとやってくれるだろうと思ってブローディ盗賊団の前に歩み出たのである。

 まさか姉のティーナまで盗賊団の前に出て来るとは思ってもみなかったが、彼女のおかげもあってブローディ盗賊団がこの大砲の建造に関わっていると証明出来た。

 そして、カシュラーゼとの繋がりがある事も分かったそのブローディ盗賊団を蹴散らしながら大砲に直撃したエネルギーボールは、その瞬間に爆散。

 直撃を受けた側の大砲は爆散し、辺り一帯に鉄片を撒き散らしながら破壊されてしまった。


「あ、危ねえっ!!」

「良し、逃げるぞ!!」


 爆散して飛んで来る鉄片に巻き込まれない様に身を屈めるブローディ盗賊団の連中を尻目に、レウスはパーティーメンバーを促してさっさとこの場から離脱を試みる。

 確かにブローディ盗賊団の連中はこのまま放っておきたくは無いが、いかんせん相手の人数が多過ぎる上に、盗賊団と戦いに来た訳では無いので無駄な戦いは避けたい。

 ただでさえ雨が強くなって来て地面もぬかるんでいるのだから、無理に盗賊団と戦って足を滑らせて山から滑落でもしたら一巻の終わりだろう。

 なのでワイバーンに乗って頂上から離脱するレウス達一行を、身を屈めて安全を確保していたブローディ盗賊団のリーダーの男が恐ろしい形相で睨みつけていた。


「くそっ……あいつ等、覚えてやがれ……!!」



 ◇



「大砲が破壊されただってぇ!?」

『すんません、しくじりました……』

「しくじったじゃねーんだよ、おい! 何の為にお前達ブローディ盗賊団が行動しやすい様に、アイクアル王国騎士団の連中を買収したと思ってんだよぉ!?」

『いえ、あの……ですねぇ……』


 魔晶石の向こうでしどろもどろになっているブローディ盗賊団のリーダーの男に対し、連絡を受けたエドガーは額に青筋を浮かび上がらせながら怒鳴りつける。

 レイベルク山脈の頂上に建造させていた大砲が何者かの手によって破壊されただけに留まらず、その破壊した人物は未だに逃走中と来れば、せっかく高い金を払って作業をさせていた盗賊団を全員ぶっ殺してやりたくなってしまうエドガー。

 しかし、そこは我慢の場面なのでまずはその壊した連中の正体を聞き出そうとする。


「あのでも何でもじゃねえ! とにかく、そのぶっ壊したってのは誰なんだよ、フランコ!?」

『あー……えーっと、女ばっかりの冒険者っぽい奴等でしたよ』

「冒険者だと?」

『へえ……あの、俺達の目の前に急にワイバーンで現われた上に、巨大なエネルギーボールを使って大砲を破壊したんですよ』

「その女達がか?」

『いえ、それがそのですね……破壊したのは女どもを率いていたっぽい男だったんです。女どもに囲まれている唯一の男でしたよ』

「お、男ぉ?」


 そりゃまた随分と男女の偏りがあるパーティーだなーと首を傾げるエドガーだったが、その後のブローディ盗賊団のリーダーのフランコから話を聞き、あー……と納得してしまった。


『そうですよ、男です』

「どんな奴だよ?」

『ええっと……雨で良く見えていなかったんですが、確か金髪を無造作に立たせて、黒いコートを着込んだ男でした。それからちょっと変わった形の槍を持っていましたねえ』

「無造作な形の金髪で、黒いコートを着込んで、変わった形の槍で、女達に囲まれているパーティーの奴……って、それってもしかしてレウスじゃねえのかぁ!?」

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