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573.大砲の話

「どうやら、この国の騎士団って言うのはシルヴェン王国の騎士団を更に酷くした様な感じらしいな」

「ええ。魔物相手には強いけど、人間や獣人相手にはヘマばかり……。シルヴェン王国の方は国境のセキュリティなんて全然気にしていない感じだったけど、この国のセキュリティは魔物以外の事に関しては無頓着も良い所らしいわね」


 全員がこのロンダールの各地で集めた情報を基にして、現状の整理をするとどうやら色々な問題が見えて来た。

 まず、前からチラホラと噂には聞いていたブローディ盗賊団の連中が王国の各地で犯罪行為をしているらしいと言う話。

 それから騎士団の、対人戦や集団戦における弱さ。

 この二つが相まって、そのブローディ盗賊団といずれ激突する事は避けられないかも知れないとパーティーメンバー達は薄々思っている。

 しかもそれだけで話は終わりなのかと思いきや、更に情報収集をしてみると当事者の騎士団の団員達から恐ろしい話を聞き出す事に成功した。


「最近、ブローディ盗賊団の連中がコソコソとレイベルク山脈の中で何かをやっているらしくてさあ」

「ああ、目撃証言が多数あるらしいな。それで何か分かったのか?」

「分かったって訳じゃないんだけど、色々と幾つもの大きな荷物を抱えて山脈の登山道を進んでいる光景を見た観光客が居るらしいんだよ」

「大きな荷物を抱えて登山道を進む? それって何かをしようとしているとしか思えないんだけど、勿論調査はしているのよね?」


 レウスとアニータによってそう聞かれた騎士団の団員だったが、彼の口からはとんでもない答えが返って来た。


「調査しようと思っているんだけど、最近は魔物が多いからまだ出来ていないんだよ」

「はぁ?」

「はぁって言われてもね。君達が何処から来たか分からないけど、地元の人間じゃないでしょ? このアイクアル王国は地図を見て貰うと分かる通り広くてね。至る所で魔物の討伐に駆り出されるんだよ」

「いや、それは分かるんですけど……盗賊団の調査とか壊滅も立派な騎士団の職務じゃないの?」

「そうなんだけどねえ。上からの命令が無い限り、僕等下っ端はなかなか思う様に動けないのよね」


 駄目だ、この国の騎士団は。

 確かに魔物を討伐するのは立派な職務だし、そのおかげで観光客や商人達が安心して動けるのは分からないでも無い。

 しかし、だからと言って盗賊団を放置して良い理由にはならない。それも大きな荷物を抱えて登山道を進んで行くと言う目撃証言もあるのに、それでも動かないのは職務怠慢と言っても良いかも知れない、とレウスは思ってしまった。

 しかもティーナとドリスはこの国の人間でワイバーンの納入業者なのに、彼女達の事を知らないのも何だかなーと思ってしまうが、その騎士団員はふとある事を思い出した。


「あーそうそう、その目撃者の話をちょっと思い出したよ」

「何か言っていたのか?」

「うん。レイベルク山脈の登山道を降りて来る時に、危うくそのブローディ盗賊団と鉢合わせしそうになって隠れたらしいんだ。その時に盗賊団の会話を聞いたらしいんだけど、確か大砲がどうのこうのって……何の事だろうね?」

「た……大砲だって!?」

「それは本当か、おいっ!?」


 レウスとエルザの目の色が真っ先に変わる。

 それを見て若干引き気味になりながらも、騎士団員は頷いて答えた。


「ああ。その目撃者の観光客はそう言っていたよ。本当は頂上まで登る予定だったんだけど、かなりきつい山だった上に道に迷いそうになって、しかも雨まで降って来たからこれ以上は危険だと言う事で途中で引き返して下山する事にしたんだってさ」

「でも、その盗賊団は頂上に向かって大きな荷物を何個も抱えて進んでいたんでしょ?」

「そうらしいよ。布にくるまれた物ばかりだったから中身が何なのか分からないけど、とりあえず大量の何かを運んでいたのは確かだったってさ」

「ちなみにその目撃証言って何時聞いたんですか?」

「えーと、確か一週間前だったかなあ?」


 その話を聞いて、再度ロンダールの出入り口に集合した一行の意見は纏まっていた。


「恐らく、そのブローディ盗賊団の運んでいたのは大砲の材料でしょうね」

「アレットに私も同意するわ。そうじゃなかったら、大砲がどうのこうのなんて会話が聞こえて来る筈が無いだろうしね」

「そうそう。でも大砲と言えば、シルヴェン王国の大砲は何でお主達で破壊しなかったんだ?」

「あの時はお前達に魔術通信をしようと思ったが、繋がらなかったからそこまで気が回っていなかった。だから王都のシロッコから出て来る時に騎士団に破壊を頼んだんだが、現場検証するからまだそのまま残しておくってシルヴェンの騎士団の連中が言っていたんだ」

「それって……またあの赤毛の二人が戻って来たら砲撃される可能性があるでしょうに!」


 ドリスが悔しそうな表情になるが、レウスはそれよりも先にやるべき事があると促す。


「だからその時はそいつ等に強く言っておいた。機会が出来たらちゃんと破壊をしたか連絡を取ってみよう。それはそうと、こっちの大砲を作っていると思わしきレイベルク山脈に向かうのが先だ。一週間も前となると、既に大砲が完成していてもおかしくないからな!!」

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