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567.ルルトゼルの村の現状

登場人物紹介にシリル・アストレイアを追加。

https://ncode.syosetu.com/n0050fz/2/

「うーん、そうなると村の掟を破ってでも中にあるライオネルの弓を手に入れるべきだと思うがな?」

「いや……それはかなりまずいと思うわよ。そうなると獣人全員を敵に回す事にもなりかねないし」


 ソランジュとティーナからルルトゼルの村の話を聞いた他のメンバーは、ワイバーンの面倒を見る手伝いの振りをしながら作戦を考える。

 ティーナとドリスから聞いた所によれば、ルルトゼルの場所は北のソルイールとの国境付近にあるらしいのだ。

 そこは通称「世界のへそ」と呼ばれている場所であり、世界地図の中心に位置していることからその愛称で呼ばれる様になったらしい。

 集落の中には全部で三千人の獣人が住んでいるらしく、野生の魔物とも獣人だからこそコミュニケーションが取れて手懐けている住民も居るらしいので、下手をすれば獣人の結束力と自然の力を借りた戦闘スキルで瞬く間にやられてしまうだろう。


「じゃあ諦めるの?」

「諦められる訳無いだろう。ただでさえ、俺の昔の仲間だったライオネルの足取りが掴めるかも知れないって言うのに、諦めてたまるか」

「そう言うと思ったわ。とりあえずそのルルトゼルの村に行ってみましょうよ」


 レウスとアレットがそう話して、まずその村に行ってみてからどうするかを決めようと決断する。

 だが、ワイバーンに餌を与えながらそれを聞いていたドリスがそれに待ったを掛けた。


「ちょっと待って、迂闊に近づくのは危険よ」

「その村にか?」

「そうよ。その村に迂闊に私達みたいな人間が近づいたら殺されるわよ」

「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ。幾ら何でもそれは大げさじゃないの?」


 まさかそこまでのレベルで憎まれてはいないだろうと考えるアレットだが、ドリスは自分とティーナの実体験に基づく恐ろしい話を始めた。


「大げさなんてもんじゃないわ。私達、実際にそのルルトゼルの村で殺されかけたんだから」

「そ……そうなの?」

「そうよ。話せば分かるなんて思っちゃダメよ。あの村の住人は、人間や魔物には本当に容赦が無いんだから。人間の姿を見つけ次第、あの村は攻撃準備に入るのよ」

「そ、そこまでか?」

「そこまでの事をするから危険だって言っているのよ。今回、従業員の人がその情報を教えてくれたのは、私達が雇っている従業員だからって事で特別に教えてくれたんだと思うから、それだって奇跡なのよ。もしここに私達抜きの状態で来ていたなら、絶対に口を割らなかったでしょうね」

「俺がアークトゥルスの生まれ変わりだって言ってもか?」

「そんなの、国王陛下とかが公にしないと信じて貰えないレベルでしょ。初対面の人間がいきなり「アークトゥルスの生まれ変わりだって言って、信じて貰えると思ってるの?」

「……思ってません」

「そうよね。それが普通よね?」


 鼻と鼻がくっつきそうな場所まで顔を近づけて来るドリスの迫力に、アレットも五百年前の勇者であるレウスも思わずたじろぐ程である。

 その二人に対して、ドリスは姉のティーナと一緒に直面した危機について詳細を述べる。


「で、そのルルトゼルの村ってどれだけ危ないのよ?」

「まず人間を相当憎んでいるわ。五百年以上前に人間が村に土足で踏み込んで、村の資源を奪ったりしてね。それから荒らされた村の気配を嗅ぎ付けた魔物までやって来て、魔物によって絶滅させられそうになったの。それを救ったのが、エヴィル・ワンを討伐した後の貴方の昔の仲間……ライオネルだったのよ」

「あいつ、あのルルトゼルの村にも行っていたのか?」

「そうよ。と言うか貴方って、五百年前にその村に行った事は無かったの?」

「名前は聞いた事あるけど、特に用事も無かったから別に行って無かったな。でも俺がガラハッドによって殺された後に、ライオネルの奴はその村を助けたのか?」

「うん。だからその村でライオネルは英雄になった」


 しかしそれも見方を変えればライオネルだけが例外と言うだけで、人間達に自分の村を荒らされた経緯から人間達、それから魔物達を憎んで外界との接触を拒んで来たと言うのを、自分とティーナが危険な目に遭った後にその近くの町の住人である獣人から聞いたらしいのだ。


「だから人間達が近づいて来たら、容赦無く攻撃するって言うのか?」

「魔物もね。だから迂闊にワイバーンなんかで近づいたら、弓を使ったり投石機を使ったりして撃ち落されるわよ。私と姉様がそうやって撃ち落されそうになって殺されかけたんだから、あそこは人間にとって未開の地ね」

「……それにしては、あの熊獣人の女の人はその生まれ育った人間と魔物嫌いの地から外に出て来たのね」

「出て行く住民に対しては引き留める声もあるみたいだけど、外の世界を見たいからって言う理由で強引に出て来る事が殆んどみたい。でも、そう言う人はなかなか地元には帰れない空気があるんだって。自分の家族は変わり無く接してくれるらしいけど、それこそ人間と関わりを持つ様になったからって他の住民からは「早く人間の世界に戻れ」って脅されたりする事もあるらしいわ」

「どうやら、根が深い対立状態の様だな……」

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