564.これがハーレムパーティーって奴ですか?
昼食の時間で行き先も決定して出発しようと思っていた矢先、シリルからレウス達に対して率直な感想が述べられた。
「それにしても、今時の冒険者パーティーは随分と男女比率が偏ってんなぁ」
「え?」
「え、じゃねーよ。だってお前の周りって女だけじゃねえか。昔は男が優勢だったと聞いていて、俺のパーティーは男女の比率が半々位だったんだが、五年もしたらこうやって男女の比率が極端に偏っちまうんだなーって驚いてんだよ」
決して馬鹿にしている訳じゃないんだぜ? とシリルは最後に付け加えるが、レウスだって別に希望をした上でこうなったのでは無い。
成り行きで旅をして来た結果、自分以外のパーティーメンバー全てが女の戦士達だけで構成されたのが実情なのだから。
「そう言うけど、前はパーティーに俺以外の男も居たんだぞ」
「そうなのか?」
「そうさ。だけど色々と事情があってパーティーを抜けざるを得なくなったんだ。だから結果として女達が俺の周りに残ったんだよ」
「ふぅん、そうなの。でもさ……たまに男が自分一人で寂しくなる事は無いのかしら? 女社会って結構怖いからねえ」
噂だって一度回り始めるとすぐに広まるし……と言うミネットに対してレウスは苦笑いを浮かべながら答える。
「別にそう思った事は無いさ。むしろ俺の旅にここまで付き合ってくれて感謝してるよ。特にこのエルザとアレットは最初から俺のパーティーメンバーだったし、はるばるリーフォセリアからここまでカシュラーゼ側を経由して世界中を旅して来たんだからな。それにソランジュだってサイカだって、それからアイクアルが地元のティーナやドリスだって色々と危険な思いをさせて来たんだし、最近加入したばかりのアニータも全然良くやってくれてるから、俺は寂しいと思った事なんか無いね」
「そうなの。それなら貴方、良い仲間に巡り合えたわね」
それなら安心だわ、と安堵するミネットとその上司であるシリルに別れを告げ、男がレウスだけのパーティーはいよいよアイクアル王国へと向かう。
事前に王都シロッコの出入り口で預けておいたワイバーンを返して貰い、一行はまずアイクアルとシルヴェンの西側の国境へと向かった。
そこでは襲撃された跡がまだ残っているものの、少ないながらも騎士団員による調査が進められており、同時に復旧作業も行なわれていた。
そして検問自体も簡易的なものではあるが設備が復活しており、徐々に元の形を取り戻しつつある様だ。
レウス達はその検問所で、シロッコを出発する前にレメディオスの名前で渡された通行証を見せる。
これによって第三騎士団長の権限を発動して検問を通り抜け、合法的に無事にアイクアル王国内への移動が出来た。
「良し、これでここからはアイクアル王国だな。まずは王都に向かうか?」
「いいえ、先に私と姉様の実家に向かいたいわ」
「実家?」
「ええ。エスヴァリークの武術大会に出場するって言って出て来たもんだから、かなり予定より帰るのが遅れているのよ。それに残して来たワイバーンの飼育状況も気になるしね」
「そうですわ。出来れば今の私達が乗っているこのワイバーン達も、一緒に飼育してあげた方が嬉しいでしょうからね」
と言う事で、ヒルトン姉妹の要望によってレウス達は彼女達の実家に向かう話になった。
しかし、このアイクアル王国でも黒い噂が流れていたのである。それはこのティーナの話から全てが始まった。
「そうそう、あの食堂のコック長の狼の方からのお話がありましたわよね?」
「何の話?」
「ほら、盗賊団の話ですわ。繋がりがあって情報共有もしているって言う話ですよ」
「あー、あったな。それがどうかしたのか?」
「それなんですけど、このアイクアル王国でも盗賊団が暗躍している話がチラホラと入って来ているんですよ。シンベリ盗賊団の連中とも、それから前の別の女が率いている盗賊団ともまた違う、第三の盗賊団がね」
「第三の盗賊団……それはどう言う事だ?」
まだ別の盗賊団が暗躍している話になると、また厄介事が増えてしまう……とアイクアル王国内での行動開始早々にレウスは頭を抱えてしまう。
しかし、もしそんな盗賊団の噂があるのであれば情報として仕入れておく事で、この先の旅路の何処かで役に立つ場面があるかも分からない。
「その盗賊団はアイクアル王国全土を根城にしている盗賊団でして、あのシンベリ盗賊団と繋がりがあってもおかしくないと思います。それこそ情報料と言う名目でお金を得る事もあるでしょうね」
「そうじゃなくて、もっと詳しい実情を教えてくれよ。例えばリーダーがどんな奴だとか、今までの目撃情報とか」
「えっとね……それはブローディ盗賊団って言って、このアイクアル王国内では名の知れた盗賊団なのよ。多くの部下を従えており、王国の色々な場所で裏社会のクライアントから請け負っている品を盗み出す活動をしているらしいわ。事実、それでワイバーンの納入先だった貴族の一つが無くなったし」
「貴族達にも顔が利くのか」
「顔が利くって言うか、その貴族が腐っていただけなんだけどね。それで噂によると、そのブローディ盗賊団のリーダーは前の二つの盗賊団と違って、男が務めているらしいわ」




