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562.騎士団の食堂にて

 エドガーがディルクに読み聞かせを行なっている昼過ぎ、レウス達一行は王都シロッコにあるボーセン城へと帰還して坑道での話を報告していた。


「……大体の事情は分かった。しかし、こちらとしてもそちらに割く人員の余裕が無いんだ」

「それは確かにそうですね。分かりましたわ。それでは私達だけでそのシンベリ盗賊団を追い掛ければ良いのですね」

「ああ、そうしてくれよ。俺達だってこっちの状況だけで手一杯で無理なんだから」


 しかし相変わらずこの状況なので騎士団の協力は得られそうにも無く、復興作業に大忙しでろくな目撃情報も手に入れられず、自分達の事で一杯一杯の騎士団に代わってあのウルリーカ達を追い掛ける事が決定した。

 そんなレウス達に対して、クラリッサがこんな提案を持ち掛ける。


「あ……そうだ。もし良かったら食堂でご飯でも食べて行かない?」

「え、飯?」

「そうそう。ランチタイムからはちょっと過ぎちゃったけど、まだ昼食食べてないんでしょ?」

「まあ……それは確かに食べてないですけど、本当に良いんですか?」


 こんな状況なのに、部外者である自分達に食事を振舞う余裕なんてあるのだろうかとティーナは首を傾げる。

 そんな彼女の心情を察したのか、クラリッサはやや強引に全員を騎士団長の執務室の外に出る様に促した。


「大丈夫大丈夫、遠慮しないで! それ位の余裕はあるわよ!」

「あ、ちょちょちょ、ちょっと!?」

「そ……それじゃ後は俺達に任せておけ!!」

「ああ、そちらも気をつけてな」


 レウスが慌ててそう言うと、レメディオスに冷静に返答されてそれで別れの挨拶となった。

 その流れでそのままクラリッサに食堂に案内された一行は、テーブルに座って料理を振舞って貰う事に。


「本当に良いのか?」

「ええ。でもメニューは選べないからね」

「それはそっちに任せる。俺達が食べられる物ならありがたくご馳走になろう」


 と言う訳で、食事を担当するコックと配膳係のクラリッサと他に一人の女がレウス達一行に料理を振舞ってくれる事になった。

 他のコック達や配膳係は、城下町に炊き出しに行っているらしいのでこんなに広い食堂がガランとしているのもそのせいである。そもそも騎士団員達を始めとするボーセン城の関係者達は、出られる者は全員城下町の復興に向かっているのだから当たり前だ。

 そしてここまでレウス達を案内してくれたクラリッサもまた、城下町の復興に戻らなければならないのでここでお別れと言う事になる。


「じゃあ、色々世話になったな」

「ううん、こっちこそお世話になったわよ。貴方達が居なかったら誰が何の目的でこのシロッコを砲撃したのか……いや、砲撃したって事自体が分からないままだったと思うわ」

「こっちもあのレメディオス……いや、レメディオスだけじゃなくて他の騎士団員達の手によって黒いドラゴンを葬り去る事が出来たんだ。だから今度は俺達が、その黒いドラゴンを送り込んだとされるカシュラーゼの連中を葬り去りに行ってやるさ」

「任せたわよ。話に出て来た、黒い髪の毛の女が率いている盗賊団の連中も纏めてやっちゃって!」

「ああ、任せておけ」


 クラリッサはそう言うと、一人一人とガッチリ握手を交わしてから去って行った。

 こうして豪勢な食事も用意して貰ったんだし……と再び食事をするレウス達だったが、その様子を見ていたコックの狼獣人の男がふと口を開いた。


「なあ、黒い髪の女が率いている盗賊団って聞いて思ったんだけど、それってもしかしてシンベリ盗賊団の連中じゃねえのか?」

「え?」

「あれ、ご存じなんですの?」


 全く関係無いとばかり思っていたコックの口から、まさかシンベリ盗賊団の名前が出て来るなんて思いもよらなかったソランジュやティーナ達は、一斉にコックの狼獣人の方を向いた。

 そんな大勢の視線を感じているコックは、傍らに控えている緑色の髪の毛を持つ配膳係の女に目を向ける。


「ああ、話を聞いていてそうかなーって思ったんだよ。それも俺だけじゃなくて、このミネットも知っている筈だぜ?」

「そうね。ドラゴンを動かせるだけの力があるなんて思いもしていなかったけど、でもあの盗賊団が騒ぎを起こした原因の一つだって考えれば納得か」

「あ、あの~、どうして二人はシンベリ盗賊団の事を知っているのかしら? 妙に詳しいみたいだけど……」


 戸惑いがちにドリスがそう尋ねると、まずはミネットと呼ばれた緑髪の女が理由を説明し始める。


「私は良く旅行をするのよ。国内、国外問わずにね。で……確か四か月位前だったかと思うけど、アイクアル王国方面でそのシンベリ盗賊団の手配書が出回っていたのよ。アイクアル国内の色々な町や村を荒らし回って、まるで風の様に去って行く盗賊団って事で国内のあちこちで手配書が貼られていたの。で、そこに似顔絵で描いてあったのよね。黒い髪の毛の女の顔」

「……もしかしてそれ、吊り目の女じゃなかったかしら?」

「そうそう、そうだったわよ。でも逃げ足が速いみたいで、未だに捕まったって話は出ていないの。そんな盗賊団がまさか、こっちのシルヴェンにまで入り込んで来ているなんて物騒よね」

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